「ブロックチェーン」はビットコインなどの暗号資産に使われていることで知られていますが、他にもさまざまな活用法が生まれています。

その中でも、ブロックチェーン上に構築された金融アプリケーション「DeFi(Decentralized Finance/分散型金融)」は市場規模が数十倍に拡大しており、次世代金融システムとして大いに期待されています。

「DeFi」とは?「CeFi」との違い

今さら聞けない投資信託のメリット・デメリット
(画像=photon_photo/stock.adobe.com)

DeFiは、ブロックチェーン技術を活用して銀行や証券、暗号資産などさまざまな金融サービスを提供するシステムです。取引に関するすべての情報をブロックチェーンに記録し、契約プロセスを自動化することで特定の仲介者や管理主体を排除すると同時に、取引の透明性や利便性の向上、業務の効率化を目指しています。

現行のDeFi関連サービスは、イーサリアムの機能であるスマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動実行する仕組み)を基盤とするものが主流です。
暗号資産の取引では、「CeFi(Centralized Finance/中央集権型金融)」というシステムも採用されています。CeFiでは、すべての取引が金融機関や暗号資産取引所などの中央管理者を介して処理・管理されます。

DeFiの3つのメリット

「既存の金融システムを塗り替える」と期待されているDeFiには、3つのメリットがあります。

仲介者なしで取引できる

従来の金融サービスは金融機関などの仲介者が不可欠ですが、スマートコントラクトを活用するDeFiサービスは、当事者同士で直接取引できる点が特徴です。ブロックチェーンの参加者が仲介者に代わって取引を検証するため、従来のコンピューターや人間による検証よりも透明性が高い点もメリットです。

手数料が安いものもある

DeFiサービスは仲介者を必要としないため、仲介料が発生しません。そのため、従来の金融サービスよりも取引手数料が安いものが多いです。

アクセシビリティの向上

インターネットさえあれば世界中どこからでも、誰でもDeFiサービスを利用できます。「銀行口座を保有していない」といった理由で従来の金融サービスを利用できない人も利用できるため、包括的な金融の実現に役立ちます。

DeFiの2つのデメリット

一方で、以下のようなデメリットが指摘されています。

1 規制環境が整備されていない

仲介者が存在せず、スマートコントラクトで取引のすべてのプロセスが完了するDeFiには、既存の金融商品のようにレバレッジを規制したり、消費者や投資家を保護したりする仕組みがありません。法整備に向けた動きはあるものの、さらなる信用確立に向けた取り組みが必要です。

2 不具合が生じた場合に対応が難しい

システムに不具合が生じた場合、従来の金融システムでは被害の拡大を防ぐために、一時的にサービスを停止します。しかし、スマートコントラクトは外部からサービスを停止したり、取引を取り消したりすることが困難です。そのため、被害や損害が拡大する懸念があります。

よく利用されているDeFiサービス

DeFi市場の過熱とともに、サービスやカテゴリーが多様化しています。ここでは、主要サービスを見てみましょう。

分散型取引所(DEX)

暗号資産取引所では、ユーザーが暗号資産取引所というCeFiシステムを介して暗号資産を取引します。一方でDeFiを基盤とする分散型取引所(DEX)では、ユーザー同士がウォレットを利用して直接取引します。代表的なものに、UniswapやPancakeSwap、MDEXなどがあります。

レンディング(融資・貸付)プラットフォーム

スマートコントラクトを利用して、仲介者なしで暗号資産の融資・貸付を行うサービスです。ユーザーは保有している暗号資産を他のユーザーに貸し付けて金利を得たり、自分が保有していない暗号資産を購入することなく入手したりすることができます。

最も規模が大きいプラットフォームであるAave (アーべ)は、需要と供給のバランスを維持する目的で、貸し手と借り手をマッチングさせる代わりに暗号資産を貯めておく「プール」を採用しており、プールを介して暗号資産の貸し借りが行われます。例えば、米ドルに連動するように設計されたTether(テザー)ステーブルコインなどを担保に入れて、イーサリアムを借り入れる、といったことが可能です。

暗号資産を貸し出したユーザーは、貸出金額に相当する「aToken」を受け取ります。「aToken」はイーサリアムのトークン規格である「ERC-20」で発行される、Aave独自のトークンです。
DeFiはデリバティブ(派生型金融商品)取引やバスケット取引など、さまざまな金融分野に拡大しています。

急成長する市場規模  ボラティリティーに注意

DeFiチャート「Defipluse」のデータによると、DeFiのスマートコントラクトに預け入れられていた暗号資産は、2020年6月から同年12月までに18億5,000万ドル(約2,049億2,647万円)から160億ドル(約1兆7,701億円)に急増しました。さらに、米暗号資産取引所Coinbase(コインベース)がナスダック上場を果たしたことなどが追い風となり、2021年5月には過去最高の870億ドル(約9兆 6,368億 円)を記録。わずか1年足らずで47倍以上に成長しました。

ところが、6月に主要暗号資産の下落やイーサリアムの取引手数料の増加が原因で、市場規模が過去1ヵ月半で400億ドル(約4兆 4,263億円)近く縮小しました。このようなボラティリティーの高さからDeFi市場は暗号資産市場の影響を受けやすく、成長過程にあるといえます。

DeFiが将来どのように発展するかはわかりませんが、金融市場を大きく変える可能性があります。潜在的なリスクも含めて、今後の動向を注視したい分野です。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road