このコラムでは、これまでもいくつかの高級腕時計の世界をご紹介してきました。今回の「ゼニス」は他の高級腕時計とは一線を画した、一味違う至高の銘品のように言われることが多く、特別な存在感を放っています。この荘厳ともいうべき雰囲気はいったいどこからくるものなのでしょうか。

この記事では、ゼニスが世界中のビジネスマンから支持される理由を解き明かし、その魅力に迫っていきます。

目次

  1. ゼニスのブランドヒストリー
    1. 元祖「マニュファクチュール」
    2. 「エル・プリメロ」の開発
    3. クオーツショックからの復活
  2. ゼニスの特徴と魅力
  3. ゼニス数々のラインナップから人気のシリーズ3選
  4. 「あらゆる困難に立ち向かい自分の夢をかなえるために」

ゼニスのブランドヒストリー

世界のビジネスパーソンから選ばれ続ける高級時計ゼニス
(画像=N_Design/stock.adobe.com)

元祖「マニュファクチュール」

時計職人のジョルジュ・ファーブル=ジャコが1865年にスイスのル・ロックルで創業したのがゼニスの始まりです。ル・ロックルは、ラ・ショー・ド・フォンと並び称されるスイス時計産業の聖地です。「時計製造業の都市計画」として2009年、世界遺産に登録されています。

ジョルジュ・ファーブル=ジャコは高品質の時計を大量に生産できる仕組みを考え出します。それは、職人を集めて作業を分業体制にし、製造工程を「ライン」にすることでした。彼は自らが夢見た「完璧な時計」を実現するために自社一貫生産の哲学を持っていたのです。

これがいわゆる「マニュファクチュール」の始まりとなりました。これ以降、ゼニスは飛躍的な発展を遂げ、創業わずか10年の間に従業員1,000人の大企業となります。

「エル・プリメロ」の開発

その後、1900年のパリ万博に懐中時計用ムーブメント「ゼニス」を出品したところこれが金賞を受賞し、社名を「ゼニス」に変更しました。

ゼニスとは「天頂」を意味する言葉です。ジョルジュ・ファーブル=ジャコが空を見上げていてひらめいたというその名のとおり、その後のゼニスは頂点を目指し続けます。

時は流れて20世紀、時計産業はコストパフォーマンスを争う時代に入りました。スイスにおいても多くの時計メーカーがムーブメントをETA社など他社製のものに切り替えていくなか、ゼニスはそれを良しとせず、自社一貫生産にこだわり続けます。

そして、1969年、クロノグラフムーブメントの最高傑作「エル・プリメロ」を発表しました。エル・プリメロとは、「最初」と「最高」という意味です。

このムーブメントは1分間に3万6,000回振動して、0.1秒まで計測できる自動巻きクロノグラフです。普通の機械式時計の振動数は2万8,800振動が基準になっており、1秒間に8回振動するというものでした。それを大きく上回る3万6,000振動(1秒間に10振動)は当時の時計界ではまさに衝撃的。エル・プリメロは一世を風靡してゼニスの名声を世界にとどろかせました。

クオーツショックからの復活

ゼニスがエル・プリメロを発表した1969年、もう1つそれ以上に衝撃的な時計が発表されました。日本の時計ブランドであるセイコーから世界初のクオーツ腕時計「アストロン」が発売されたのです。

電池と水晶発振器を用いたクオーツ腕時計は、複雑な機構を用いたゼンマイ動力の機械式時計をはるかにしのぐ正確さを見せました。大量に作れば機械式時計よりも大幅に安く作ることができます。

またクオーツ時計は時計職人が持つような特殊な技術を必要としないため、時計メーカー以外の製造業も作るようになってきて、時計の低価格化はますます進んでいきました。

機械式時計の需要は地に落ち、伝統的なスイスの時計産業は急速に危機的状況に陥ります。ブランパンは休業、IWCは倒産寸前になるなど老舗が次々と壊滅的な打撃を受ける中、ついにゼニスも機械式時計部門を売却することになったのです。

アメリカからやってきたゼニスの新しい経営陣は、機械式時計の製造設備を捨ててクオーツ時計を生産するように命令しました。

ところが、その命令に従わない人物が1人いました。シャルル・ベルモです。最初からエル・プリメロの開発に携わっていた彼は、ひそかにエル・プリメロ ムーブメントのすべての部品を製造するために必要な技術計画書と道具を集め、ゼニス マニュファクチュールの屋根裏部屋の隠れた壁に囲まれた場所にこれらを隠しました。

1978年、スイスの金融グループの支援を受けて買い戻された時、エル・プリメロの製造に必要なものはすべて残っており、再び生産できる状態にあったのです。

そして、1980年代になるとジャン・クロード・ビバーの活動などによってスイスの機械式時計は美術工芸品のようなポジションを確立し、再び注目を浴びるようになりました。ブランパン、オメガ、IWCなどとともにゼニスも高級ブランドとしての地位を確立していき、スイスの時計産業は新しく生まれ変わって再び復興したのです。現在ではLVMHグループ傘下となっています。

ゼニスの特徴と魅力

ゼニスの魅力の1つにそのデザインがあります。「オープンワーク」といって文字盤の一部をくりぬき、中の機械を見せているモデルがその1つです。「クロノマスターエル・プリメロオープン」は10時の位置の文字盤が大きく開いており、エル・プリメロの動く内部が見えるようになっています。

いまでこそ、機械式時計の内部を見せているモデルは多いですが、ゼニスはその先駆け的存在なのです。

そしてこの、エル・プリメロこそ、ゼニスの代名詞であり特徴と魅力そのものだと言えるでしょう。初めて発表されてからすでに半世紀近くたつにもかかわらず、いまだに現役で多くのニューモデルに搭載され続けています。

一般にムーブメントは記号と番号で呼ばれることが多いのですが、エル・プリメロだけが固有名詞で呼ばれています。まさに、時計の世界では別格の扱いなのです。

ゼニス数々のラインナップから人気のシリーズ3選

ここでゼニスの人気シリーズをご紹介しましょう。

・デファイ
「デファイシリーズは伝統的なスイス時計製造の未来を拓く」というふれこみで、伝統的なシリーズ名を継承しつつ、新しいデザインで展開されています。

ほとんどのモデルで、文字盤全体がなく中身の機械が見えるようになっています。機械式時計の技術革新に今なお挑戦し続ける姿勢を見せ、昔を受け継ぎつつも一線を画したケースデザインです。

ゼニスは伝統的シリーズを最も挑戦的で革新的なシリーズに位置づけ、常に頂点を目指す姿勢を見せています。

・クロノマスター
クロノマスターは、エル・プリメロを搭載したゼニスの定番と言えるクロノグラフシリーズです。ゼニスの時計は他のシリーズもクロノグラフですが、近年デファイとパイロット以外はこの「クロノマスター」に集約されました。

横並びの3つ目インダイアルをアクセントにしたさまざまなカラーバリエーションはどれをとっても上品でクールな印象を与えるものばかりです。

文字盤の10時方向に大きくあいた窓から調速機が視認できる造りは、まるで生き物の心臓の鼓動を確認しているかのようであり、時計への愛着がいや応なく高まります。これ以外にもモデルの種類が豊富なのも魅力でしょう。

・エリート
エリートは、クロノグラフの機能を前面に押し出したシリーズと一線を画した、シンプルで上品なデザインのドレスウオッチです。

エリートというのもムーブメントの名称です。かなり薄く作ってあり「クラシック」「キャプテン」「ウルトラシン」の3つのラインアップがあります。

シンプルゆえに、あらゆるシーンにマッチさせやすく、上品でさりげなく美しさを引き立たせるデザイン。自社製ムーブメントを搭載した高級腕時計なのにそこまで高価ではない点も大きな魅力となるでしょう。

「あらゆる困難に立ち向かい自分の夢をかなえるために」

ゼニスのロゴには頂点を表す星がついています。創業者であるジョルジュ・ファーブル=ジャコが常に頂点を目指していたように、この時計は「あらゆる困難に立ち向かって、自らの夢をかなえる原動力となる」ことでしょう。

ゼニスの「最も高いあなたの星をつかむために」というコピーは、ビジネスパーソンの背中を強く後押ししてくれます。人生の志まで応援してくれる時計メーカーはなかなかありません。

時計の性能やデザインのみならず、こうした企業のフィロソフィーそのものが、ゼニスを「別格」ならしめる理由なのでしょう。

文/大川内伸郎

(提供:JPRIME


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