アライアンスを実施するデメリットと注意点
アライアンスには注意すべきリスクも潜んでいるため、安易に実施を決めることは危険だ。ここからはアライアンスのデメリットと注意点をまとめたので、計画を立てる前にしっかりとチェックしていこう。
1.成果が保証された契約ではない
アライアンスはあくまで協力関係を築くだけの契約なので、何かしらの成果が保証されるわけではない。共同開発などがスムーズに進まなければ、費やした時間やコストが無駄になる可能性も十分に考えられる。
また、パートナーに期待されている動きができなかった場合に、契約を解消されるリスクがある点も気をつけておきたいポイントだ。「双方のメリット」が前提になる戦略であるため、どちらか一方のメリットがなくなった時点で協力関係を築くことは難しくなる。
2.情報漏えいのリスクが高まる
企業間で顧客データやシステムを共有すると、必然的に情報漏えいのリスクが高まる。脆弱なセキュリティが原因で漏えいするケースも存在するため、パートナーに悪意がないからと言って安心はできない。
したがって、アライアンス契約を結ぶ前には、相手企業の信頼性とセキュリティ体制を細かくチェックしておく必要がある。
3.技術やノウハウが流出することも
技術やノウハウの流出リスクも、アライアンス契約を結ぶ前に注意しておきたいポイントだ。
共同開発によって他社との距離が近づくと、自社の技術などを盗用されてしまうかもしれない。パートナーのセキュリティが脆弱であれば、さらにその技術が外部に漏えいしてしまう恐れもある。
アライアンスには魅力的なメリットがある一方で、深刻なリスクもいくつか潜んでいる。中でも情報や技術の漏えいは大きなトラブルにつながりやすいため、契約に秘密保持条項を含めることは必須だ。
状況が変わればパートナーとの関係性にも変化が生じるため、仮に信用できる相手企業が見つかったとしても、秘密保持条項は契約に必ず含めるようにしよう。
事例から学ぶアライアンスを成功させるポイント
アライアンスによって自社がもつ課題を解決するには、相手企業を慎重に選ぶ必要がある。以下ではアライアンスの事例を2つまとめたので、自社のケースと照らし合わせながら成功のポイントを押さえていこう。
【事例1】業界内の課題解決を目的とした同業種でのアライアンス
建設業を営む「竹中工務店」と「鹿島」は、建設市場の縮小に備えることを目的として2020年1月に技術提携を発表した。いずれも業界内では大手にあたる企業だが、業務効率化や省人化を研究するために包括的な連携を組んでいる。
また、両社はほかの大手にも呼びかけをしており、2020年8月には「清水建設」も参画。このまま技術提携の規模が拡大し、各社がスムーズに情報共有できる環境が整えば、国内の建築業界は飛躍的にレベルアップするかもしれない。
ライバル企業との連携に抵抗をもつ経営者ももちろんいるが、同業種でのアライアンスは業界全体の課題解決につながる。また、組み合わせ次第では新たなイノベーションが生み出され、世界的な競争力を得られる可能性もあるだろう。
ただし、アライアンス契約を結んでも同業他社は競合にあたるので、協力し合う範囲は慎重に設定することが重要だ。
【事例2】専門家を通して現地の市場調査を徹底
中堅医療機器メーカーであるA社は、新規進出国における売上が低迷していた。そこでA社はコンサルタント会社を通して、現地にチャネルをもつ有力海外企業と販売提携を結んだ。
契約の締結後、A社は新たな代理店となるパートナーに販売先を委譲。低迷していた既存代理店には営業権を買い取ってもらい、販売チャネルをより強化することに成功した。
この事例が成功を収めた要因は、進出国の市場調査を徹底した点にある。有力かつ優良な代理店を見極めるために、A社はコンサルタント会社を利用しながら慎重に経営戦略を立てた。
パートナーの質はアライアンスの結果を大きく左右するので、もし相手探しに不安を感じている場合は、無理をせずに専門家を頼ることも検討しよう。