経営者が身につけたい「人を活かす経営の新常識」
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仕事の満足度世界最下位ニッポン

少なからぬ企業の現場で、「仕事の“やらされ感”が強い」「モチベーションが上がらない」という声を聞きます。実は、日本は各種の国際比較調査で「仕事の満足度が低い国」の最下位クラスに分類される不名誉な立場にあるのです。

それは働く人たちの多くが、往々にして会社や上司から意義の感じられない、あるいは達成困難な目標を一方的に示され、細かな管理によって不本意な仕事を強要されていると感じているからです。その結果、自己効力感を失い、やらされ感と無力感に蝕まれ、仕事の満足度が著しく低下するのです。

これが常態化すると無責任な不正や隠蔽に至る危険性を孕んでいます。仕事の目的は本来組織の外にある顧客満足や社会貢献であるはずですが、それを見失い、内向きな業績目標(ノルマ)だけを追求する組織体質に陥ってしまうからです。

もし、職場にその兆しや懸念が感じられるなら、早期に組織の一人ひとりの力を合わせて健全な働き方と組織体質に改めていくことが必要です。それには、前講でふれた働き方改革の功罪の「罪」の部分、すなわち「働きやすさ」への改革ばかりを先行した結果、置き去りになりがちな仕事の満足度-「働きがい」の回復をめざす改革が不可欠なのです。

働きやすさの改善の先にあるもの

【図】は、アメリカの心理学者F.ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」をもとに、私が加筆して「働きがい」と「働きやすさ」の関係を表したものです。

経営者が身につけたい「人を活かす経営の新常識」

ハーズバーグは、職場の労働環境、条件、人間関係、給料等を「衛生要因」としました。いわば「働きやすさ」を整えるものですが、これらをいくら充実させても、働く個々人の不満足は減るものの満足を増やすことは難しいと主張しました。また、一度得た権益に人はすぐに慣れてしまい、これが低下すれば不満を感じるのです。

これに対し、仕事内容そのもの、責任、顧客や同僚・上司からの承認、達成感などを「動機づけ要因」とし、これらが増せば仕事の満足度は高まるとしました。つまり「働きがい」が向上するのです。

長時間労働是正や在宅勤務などの働く環境改善や休暇・給料増額など、現在政府が主導する働き方改革は「衛生要因」の改善が主です。しかし、真の改革のためには「動機づけ要因」に着目することが大事です。

「働く」とは、文字どおり「人のために動く」ことです。そして「働きがい」とは「人のために動く喜び」です。顧客満足や社会への貢献をめざす仕事に使命感と責任感を持って主体的に打ち込むことが、価値のある仕事を創り出し、「働きがい」を得ることに結びつくのです。

本当に大切なのは一人ひとりの「働きがい」

したがって、経営者・管理者は、従業員一人ひとりの「働きがい」-「動機づけ要因」の向上に努めなければなりません。また、従業員側も、「やらされ感がいっぱいだ」と不満を言うばかりではなく、自ら日々の仕事に「働きがい」を見出せるように仕事を創意工夫し、経営者や上司に対して必要な相談や改善提案を積極的に行うなど、自責思考でできるところから行動を起こす姿勢が求められるのです。

日本は、敗戦の焼け野原から立ち上がり、高度経済成長を成し遂げたものの、今や成熟社会に入り高齢化と人口減少のなかで、ややもすると悲観モードになりがちです。しかし、社会の中枢を中高年者が占める社会では、金銭的な対価や経済的な豊かさよりも心の豊かさ、心の幸せがより重視されると考えらます。

そこでは、人のために動くことで人から感謝され、自分自身が喜びを感じるという、一人ひとりの「働きがい」がより大切な意味を持ってくると言えるでしょう。その先には「生きがい」も育まれていくはずです。

※本稿は前川孝雄著『人を活かす経営の新常識』(株式会社FeelWorks刊)より一部抜粋・編集したものです。

職場のハラスメントを予防する「本物の上司力」
前川 孝雄
株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師/情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。(株)リクルートを経て、2008年に人材育成の専門家集団㈱FeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ、バワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」等で、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、(一社)企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員等も兼職。連載や講演活動も多数。著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)等30冊以上。最新刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月発行)

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