内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

すべての業種の経営者に共通する悩みとも考えられるのが、「果たして、うちの人件費は高いのか?安いのか?」である。もちろん、経営者としては、人件費に必要な金額をしっかりと費やしたうえで有能な人材を確保し、生産性を高めていく必要があるが、それと同時に会社として利益を出していかねばならない。

人件費率の適正値については、さまざまな説があり、いくらが最適なのかという判断は非常に難しい。しかし、判断ための考え方を示すことは可能だと思うので、今回は人件費についてみていきたい。

目次

  1. 人件費率はコストや待遇面の判断に欠かせないデータ
  2. 人件費率とは
  3. 人件費率の計算方法
    1. 売上高総利益を基準にする計算方法
  4. 人件費率はどれくらいが適性?業種別の平均値
  5. 人件費率は労働分配率と見比べることが重要
  6. 人件費率を適正にする2つの方法
    1. 1.売上単価を上げる
    2. 2.原価構成比を見直し、売上原価を下げる
  7. 人件費率の高い会社は従業員思いの会社?
うちの人件費は高い?低い?業種別に適正値と人件費率を適正にする2つの方法
(画像=takasu/stock.adobe.com)

人件費率はコストや待遇面の判断に欠かせないデータ

人件費率は、売上に対するコストの高さや、従業員の待遇を判断するために必要な指標である。財務の観点からは低いことが望ましいものの、経営全体としては適正値を意識しなければならない。

人件費率が高い場合は、そのぶん事業の利益率が低いことを意味する。売上高が少ない、または人件費の負担が大きい状態であるため、早めに何らかの対策を立てることが必要だ。

一方で、人件費率が低い企業は待遇面に問題を抱えている可能性がある。従業員のモチベーション低下や、場合によっては退職者の増加を引き起こすため、人件費率が低すぎる状態も理想ではない。

人件費率とは

人件費率とは、特定の指標に対する人件費の割合を表した指標だ。通常は売上高を基準し、この場合は「売上高人件費率」と呼ばれる。

人件費の内訳については、従業員への給与に加えて以下のものも含まれる。

<人件費に含まれるもの>
・給与や各種手当
・賞与(ボーナス)
・役員報酬(※兼務役員に支払うもののみ)
・退職金
・福利厚生費
・法定福利費(※会社負担分のみ)
・契約社員や派遣社員に支払う報酬
・現物支給による通勤定期券
・社宅などの費用 など

労働の対価として支払うものであっても、雇用形態や役職によっては人件費に含まれないものがある。例えば、専任の役員は委任契約であるため、報酬・賞与ともに人件費には含まれない。