コロナ禍以降3番目に良い10月の「暮らし向き」DI
(内閣府「消費者マインドアンケート調査」)
三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2021年11月16日号
内閣府が実施している「消費者マインドアンケート調査」は速報性のある調査で、当月分(前月21日~当月20日)の集計結果が毎月22日ごろには発表される。また、同調査は、質問数が「暮らし向き(半年後)」と「物価見通し(1年後)」の2問と少なく、判断は5段階の中から1つ選ぶだけで、スマートフォンなどで簡単に回答できる。通常の調査では調査対象に選ばれないと回答できないが、同調査は、誰もが自発的に参加できる点が画期的である。
同調査の結果は内閣府のWebサイトで「消費動向調査」の項目に掲載される。試行的な調査ということもあってか、残念なことに新聞には掲載されたことがない(10月28日現在、日経テレコンでの検索結果0件)ので、知名度は低いとみられる。
今年10月の結果は10月22日に公表された。回答数136人で、「暮らし向き」に関し、「良くなる」3.7%、「やや良くなる」11.8%、「変わらない」44.9%、「やや悪くなる」23.5%、「悪くなる」16.2%だった。この結果について、景気ウォッチャー調査と同様の手法(注)でDIを作成すると40.9となり、8月の36.8、9月の37.3から改善した。コロナ禍(2020年1月以降)では3番目に良い数字である(図表)。
調査期間の9月21日から10月20日までの全国の新型コロナウイルス新規感染者数を見ると、「最多」が9月23日の3,599人、「最少」が10月18日の230人と比較的落ち着いていた。ワクチン接種の完了割合は、9月21日時点ではG7の7カ国中最低だったが、10月17日までに米国など4カ国を抜き、カナダ、イタリアに次ぐ3位になった。また、10月1日にはすべての都道府県で緊急事態宣言が解除された。こうした状況下で回答された「暮らし向き」判断の改善により、コロナ禍からの回復を多くの人が感じてきていることが分かる。
なお、10月の「物価見通し」では、「やや低下する」という回答が1人(回答数全体の0.7%)で、「低下する」はなかった。過去に「低下」方向の回答が最も少なかったのは19年3月(回答数122人)であり、「低下する」が1人で0.8%、「やや低下する」という回答はなかった。回答数の差から、今年10月は低下方向の回答比率が0.7%となったため、わずかに同統計史上最低を更新したことになる。デフレ懸念がほぼなくなったことを示唆する数字といえよう。
(提供:きんざいOnline)