日本企業がSDGsに取り組む3つのメリット
SDGsの取り組みは政府だけが進めるものではなく、日本のスコアを高めるには国内企業からの協力も必要になる。では、SDGsに関する取り組みを行うと、企業側にはどのようなメリットが生じるのだろうか。
1.新規市場の開拓につながる
SDGsへの注目度は確実に高まっており、最近では広告やニュース記事などにも「SDGs」というワードが多く登場するようになった。つまり、SDGsの関連市場は拡大しつつあるため、環境や社会に貢献できる製品・サービスを開発すれば、新規市場の開拓につなげられる。
特に欧米などの海外向け製品は、SDGsと絡めることでより多くのニーズを獲得しやすくなる。今後もSDGsへの関心は世界的に高まると予想されているため、大きなビジネスチャンスをつかむためにも、積極的にSDGsに関する取り組みを始めていきたい。
2.投資家から注目される
環境問題や社会問題が深刻視されるにつれて、最近では「環境・社会・ガバナンス」の観点から投資を行う投資家が増えてきた。このような手法は「ESG投資」と呼ばれており、世界のESG投資額は2020年の時点で3,900兆円にも上る。
そのため、SDGsに関する取り組みを行えば、世界中の投資家から評価されるかもしれない。日本においてもESG投資の市場は伸びてきているため、SDGsへの取り組みは新たな経営戦略や資金調達手段になる可能性を秘めている。
3.国や自治体による支援策を受けられる
SDGsに関しては、国や自治体による支援策が用意されている点も知っておきたいポイントだ。
例えば、内閣府は女性活躍に関する取り組みを行う企業に対して、「地域女性活躍推進交付金」の支給を検討している。ほかにも地方創生や未来技術、環境保全に関する交付金など、最近ではさまざまなタイプの支援策が実施されている。
また、都心から離れた自治体にも、地方創生に関する支援策を実施しているところが多い。これらの補助金などを利用すれば、低資金で新たなビジネスを始められる可能性があるので、国や各自治体の支援策はこまめに確認しておこう。
中小企業におけるSDGsの事例
SDGsへの取り組みと聞くと、多くの方は大企業をイメージするだろう。しかし、資金が限られた中小企業のなかにも、SDGsに関する取り組みを始めている企業は多く存在する。
ここからは中小企業のおけるSDGsの事例をまとめたので、興味のある経営者は参考にしながら計画を立てていこう。
【事例1】自社技術を活かした環境配慮製品の開発
モーターなどの回転電機を取り扱う『茨城製作所』は、「未来へ残そう豊かな地球」をスローガンとして、さまざまな環境配慮製品を開発している。
なかでも同社が開発した風力発電機用スリップリングは、いまや業界内で世界トップクラスのシェアを誇る環境配慮製品だ。また、発展途上国であるネパールに対しては、クラウドファンディングを通じた支援や、電力不足を補うノウハウの提供なども行っている。
技術やノウハウが漏えいするリスクはあるが、自社技術を活かした取り組みは海外市場へのアピールにつながる。将来のビジネスチャンスをつかむためにも、優れた技術やノウハウを有している企業は、積極的に海外市場への参入・提供を検討したい。
【事例2】利益とSDGsを両立できる取り組み
茨城県で農業生産を行う『ワールドファーム』は、「儲かる農業」を実現するために若い世代を積極的に採用している。
農業と言えば後継者不足が嘆かれている業界だが、同社は採用時の労働条件を向上させることで、若者が安定して入社する環境を作り上げた。その結果、東京都心から離れた地域でありながらも、40歳未満の社員率を77.5%まで引き上げている(全員正社員雇用)。
また、所有している農地を全国に分散させている点も、同社の工夫が見られる施策だ。この施策により局地的な災害リスクを抑えることができ、さらに耕作放棄の防止にも貢献している。
このように「自社の利益」と「SDGsへの貢献」を両立できる取り組みは、経営者としてぜひ見習いたいポイントだろう。
【事例3】ステークホルダーの連携によるSDGsへの貢献
環境との関連性が薄い企業でも、内部組織や経営方針を見直せばSDGsに貢献できる。例えば、神奈川県の印刷会社である『大川印刷』は、以下のような形でSDGsを経営にとり入れている。
・SDGsに関係するプロジェクトを従業員から募集
・全社員向けの人財育成にSDGsを活用
・市民団体と連携し、外国人ニーズに応える「4ヵ国版お薬手帳」を開発
なかでもお薬手帳は大きな成果に結びついており、各国の大使館から注目されている。将来的にはBtoC販売も実施し、さらに販路を拡大していく方針だ。
SDGsは簡単に実現できるものではないため、経営にとり入れる際には周りからの協力も重要になる。特に従業員などのステークホルダーは心強い存在となるため、計画を進める前にしっかりと連携できる体制を整えておきたい。