結果の概要:前年比で伸び率鈍化

ロシアGDP
(画像=PIXTA)

12月15日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】】
・・2021年4-6月期の前年同期比伸び率は4.3%、予想1(同4.4%)を下回り、前期(同10.5%)から上昇幅が縮小した(図表1・2)

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

結果の詳細:コロナ禍の影響が再び大きくなり、インフレや地政学的なリスクも高まる

今回の結果は、11月17日に公表されていた予備推計値(4.3%)と同じだった。ロシアでは20年7-9月期の成長率がコロナ禍の影響で▲3.5%と落ち込んでいたため、7-9月期の伸びはベース効果により押し上げられている面がある。コロナ禍の影響がなかった2年前と比較すると7-9月期は2年前比0.6%(4-6月期は同1.8%)と減速している。

産業別の伸び率を2年前比で見ると(図表3)、大分類では第一次産業(▲3.9%)・第二次産業(▲0.4%)がマイナスで、第三次産業(金融・不動産が6.9%、その他が1.8%)がプラスだった。第二次産業ではシェアの大きい製造業が3.3%と4-6月期(2.4%)から成長を加速させているが、次いでシェアの大きい鉱業が▲7.7%と大幅なマイナスとなった。一方、第三次産業では金融が18.7%と伸び率が高い。ただし、飲食・居住が▲7.1%、芸術・娯楽が▲6.8%、自家利用1が▲27.6%とマイナス幅が大きい。7-9月期はロシアでは新型コロナ感染者数が高めの水準で推移しており、対面サービス産業を中心に回復が鈍化したと見られる(ロシアではその後、感染の急増に対応するため10月30日から11月7日まで国内企業・学校を休みにする非労働日を導入した)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

季節調整系列を見ると7-9月期は前期比▲0.8%(4-6月期3.2%)とマイナス成長に転じた。ただし、コロナ禍前との比較では1.7%(4-6月期2.5%)とコロナ禍前の水準を上回っている。

産業別の前期比では、マイナスの産業が多いことが目立つ。金融(2.1%)や情報(1.7%)といった一部の産業はプラスだったが、第一次産業(▲3.7%)、水道(▲5.4%)、飲食・居住(▲)、芸術・娯楽(▲3.5%)、自家利用(▲9.9%)といった産業は大幅なマイナスとなった(図表4・5)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

足もとの状況を概観すると、原油や天然ガス価格が高い水準で推移していることはこれらの生産国であるロシアの追い風となっている。一方、非労働日を経ても新型コロナ感染者数が高水準にあること、国内のインフレ率が11月には8.4%に達しており、加速が続いていることが引き続き消費の減速懸念となっている(図表6)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、ウクライナ付近での軍事増強に絡んだ西側諸国との政治的な緊張も高まっている。今後は政治的問題が経済に波及するリスクにも留意が必要だろう。

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1 自家利用の財・サービス。便宜的に第三次産業(その他)に含めた。


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高山 武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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