D2Cの特徴
D2Cの特徴を、さらに詳しく見て行こう。従来のB2Cとの違いも踏まえつつ、D2Cの特徴をしっかりと把握してほしい。
顧客に直接販売・コミュニケーション
自社で企画・製造した商品を顧客と直接コミュニケーションし、販売する点がD2Cの最も大きな特徴だ。販売チャネルは、自社サイトやTwitter・InstagramといったSNSなどがある。顧客と直接やり取りをする人件費などは増加するが、中間業者を挟まない分、顧客情報を蓄積しやすくよりよい商品開発につなげられるメリットは大きい。
またSNSを使用したインタラクティブなコミュニケーションにより、顧客のロイヤリティを高め、自社商品のファンになってもらいやすくなる点も見逃せないポイントだ。
顧客との関係を深めてLTV(顧客生涯価値)を高める
LTV(Life Time Value)とは、顧客生涯価値という意味で顧客が企業と関わっている間に商品を購入する金額の合計を指す。D2Cにより顧客とSNSなどを使用してコミュニケーションを進めることで、ファン化する顧客が増えLTVが高まる。ただしLTVを効果的に高めるためには、自社製品のターゲット層を正確に把握し、ターゲット層に合わせた情報発信などの工夫も必要だ。
中間コストカットによる低価格での商品提供
顧客に直接販売するD2Cでは、中間業者を通さないため、中間コストをカットできる。直販に必要なコストを差し引いても中間業者を通すより低価格かつ高品質な商品を提供できる可能性もあるだろう。顧客にとって、以前よりも低価格かつ高品質の商品を購入できることは大きなメリットだ。商品のファンになってもらえる可能性も高まる。
D2Cが注目される背景
D2Cが注目されるようになった理由についても触れておこう。
コストを抑えられる
自社サイトでの販売が主となるD2Cでは、店舗の運営費が不要で中間業者も入らない。そのためコストを抑えられるという特徴がある。近年D2Cが注目されるようになった大きな理由である。また企業運営にコストがかからないため、商品価格を下げることも可能だ。消費者側から見てもD2Cには、メリットが多いだろう。
消費者の意見を取り入れやすい
D2Cは、消費者の動向に特に敏感なファッション業界や化粧品業界雑貨類のメーカーが取り入れていることが多い。その理由には、D2Cは消費者の意見を受け取りやすい点がある。例えばファッション関係のD2Cであれば「どのようなデザインがいいか」「どのような素材の服を着たいか」などについてもアンケートで消費者に尋ねることが可能だ。
このようなアンケートの結果を今後の商品企画に活かすことが期待できる。
ネット通販に抵抗がある人が少なくなった
2000年代以降、インターネットの普及によりネット通販が広く普及した。さらに2020年の新型コロナウイルス感染拡大により巣ごもり需要が増加し店舗にショッピングに行く習慣も薄れつつある。自宅に居ながらネットで買い物をする流れにシフトしてきているのだ。総務省統計局の調査でもネットショッピング利用世帯の割合は、2020年5月時点で50%(前年同月は40%程度)を超えている。
これは、2002年に調査を始めて以降最も高い数字だ。ネットショッピングの利用は、若者世代に限ったことではない。例えば2020年4月時点で65歳以上の世帯におけるネットショッピングの利用率は27.1%、同5月が30.3%と約3割を占めている。年齢や世代を問わずネットショッピングを利用にするようになったことがD2Cの後押しになったともいえるだろう。
消費者の考え方の変化
D2Cが注目されるようになった背景には、消費者の考え方が変わってきていることも関係している。以前は「皆が持っているものが欲しい」「必要なものが買えたらよい」「なるべく安く買えるところを探している」という消費者も多かった。しかし近年は「自分の考えに近いブランドの商品が欲しい」「商品を購入する前にメーカーの想いまで知っておきたい」という人も増えている。
百貨店などの実店舗やショッピングのプラットフォームサイトではなく、わざわざD2Cのサイトを訪問しメーカーやブランドの考え方やモノづくりの姿勢を確認する消費者が多くなったこともD2Cが広がる一因といえるだろう。