【第31回】頻繁にWEBセミナーに参加している社員に対し、報告についてどう指導すべきか?

THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第31回目は「頻繁にWEBセミナーに参加している社員に対し、報告についてどう指導すべきか?」という経営者のお悩みについてお答えします。

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【今回のご質問】
テレワークになり仕事はさておき、WEBセミナー多数参加しているにも関わらずチームへのフィードバックがない部下がいます。個人の自己啓発要素もありどこまで組織へのフィードバックを求めるべきでしょうか?

【ご回答】
A: 業務の一環としてセミナー参加を行っているのであれば、報告を含めて社内規定を整備しましょう。対象者に報告の意識がないだけであれば、報告の仕方を決めることでフィードバックを得られるかもしれません。対象者にチームへの貢献意欲がないのであれば、先にそちらを改善する必要があります。

ご質問、ありがとうございます。頻繁にセミナーに参加している社員に対し報告についてどう指導すべきかという質問と思います。一般的に日給も参加費も会社負担の場合には業務の一環ですので、報告を求めて当然と思います。ただ、報告の強制は本人の就業意欲に負の影響があるかもしれません。負担感のない報告方法を考えてみたり、そもそも社員の貢献意欲を育てることをご検討ください。

杉野 洋一(すぎの よういち)
杉野 洋一(すぎの よういち)
(同)Initiatives代表。IT系企業、会計ファームにて広くクライアントを支援する傍ら、韓国・インドにて教育・指導・通訳に従事するなど多様な文化・企業環境において活躍。中小企業診断士として独立後は中小企業を中心に「真にクライアントに寄添う経営支援」を信条とし、目標制度や管理会計に取り組んでいる。▶https://initiatives.jp/

業務の一環であれば報告を求めるのは当然

参加者に日給を払い、参加費も会社負担の場合は、社会通念として業務の一環としてセミナー参加したと見なされますので、業務命令として報告を義務付けても社内の理解は得やすいと思います。会社のお金で行ったのであれば、会社に報告するのは当然です。逆に参加者の私的時間に私費で参加したセミナーの場合、業務命令として報告を求めるのは難しいと考えます。

報告を義務付ける場合には、社内文書として決め事を明示しておきましょう。一般的には「教育研修規定」「社外研修規定」と呼ばれる文書の中に記載されます。

業務命令として強制するやり方は、手続きが簡潔で即効性がありますが、社員個人の裁量権を狭めるため、労働意欲を減衰させます。勿論、会社として社員に対して命令せざるを得ないことも多々あることは承知していますが、命令だけで社員の貢献意欲は育ちません。

イソップ寓話に北風と太陽の話があります。旅人のマントを脱がすために、北風が強風でマントを吹き飛ばそうとしたがうまく行かず、太陽が温めたところ、旅人は簡単にマントを脱いだ話です。要は、強制ではなく、報告したくなる仕組みを考えよということです。何故報告がないのか、どうしたら報告したくなるのかを考えてみましょう。

やり方が分からないのでフィードバックがないのか?を考える

報告しない理由として、規定がなかったり、どういう報告が望ましいのか分からなかったりということが考えられます。あるいは、そもそも報告するものだという意識がないかもしれません。そうした場合には、一定の様式を考えてみてはどうでしょうか。前述の通り、強制になってしまうと逆効果になってしまいますので、対象者に相談という形で望ましい形式を聞いてみると良いでしょう。

例えば、朝礼でセミナーについて簡単に話してもらうのはどうでしょうか。報告の内容は、1.概要(チラシのコピペで可)、2.一番印象に残ったこと にしてもらいます。話の内容について5分以内で簡単にチームで話し合ってみても面白いかと思います。

貢献意欲があるか?を考える

社員に組織に対する貢献意欲があるのであれば、具体的な方法論を決めて運用してみることが行動変容に繋がります。しかし、そもそも貢献意欲がない場合は、方法論を決めても軋轢を生むにすぎません。質問者の方の直感として、対象者の貢献意欲はあると言えるでしょうか。若干、低そうだということであれば、この後に貢献意欲を高めるヒントを記載しますので、ご参考ください。

  1. 組織目的: 働く意義
    社会や自分達以外の誰かのためになることをやっているという意識を浸透させることで、貢献意欲を高めます。いわゆる経営理念です。人間は、自分の為ということであれば単に均衡した状態を望む傾向があります。それを超えて貢献意欲を高めるために、「誰かのため」という組織の意義をしっかり理解させましょう。

    組織目的とは違いますが、「自分達以外の誰かのために」ということでいえば、普段ユーザと接することのないソフトウェア開発者にユーザの感謝の言葉を伝える取り組みもあります。

  2. 組織としての目標達成
    質問者の方の組織では、目標達成できているでしょうか。組織として目標を達成することで組織に求心力が生まれます。行動が結果に繋がることを可視化し、更なる行動を促すことができます。逆に目標を達成できないと、諦めの気持ちが広がってしまい、貢献意欲も減退します。

  3. 組織内の感謝のやり取り
    感謝も貢献意欲を高める大きな要素となります。質問者の方は経営者でしょうか、管理職でしょうか。いずれにせよ、上役からの感謝は部下の貢献意欲を大きく増加させます。感謝を伝えるのに資金は不要で、ROI(費用対効果)が無限大ですので、私はいつもクライアントに勧めています(笑)。

    組織内の感謝を意図的に増やす方法として、「ありがとうカード」があります。ありがとうカードについては別稿に改めましたので、そちらをご参考ください。

    Q9コロナ禍になって、感情の共有がチームで減っていると思っています。

従業員意識調査がお勧め

組織内の貢献意欲に疑問があれば、匿名での従業員意識調査をお勧めします。組織内のメンバーのことは分かっているつもりでも、実際に調べると様々な気づきがあります。特に人事や人に関することは、社員の1人がそう思っているだけなのか、複数の人がそう思っているのかで大きく異なります。根拠をもって施策を打ち出していきましょう。

如何だったでしょうか。お答えになったでしょうか。人に関することは、中々状況が分からず助言が難しいと感じます。より詳しくご質問いただければ、より具体的に回答できます。引き続き質問を受け付けておりますので、ドシドシご質問ください。

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