2016年にスタートしたジュニアNISAは、未成年者を対象とする税制優遇制度です。2023年末で終了することが決まっていますが、ここに来て人気が高まっています。

金融庁のNISA・ジュニアNISA利用状況調査によると、ジュニアNISA口座数は2021年6月末時点で約57万口座と、2020年6月末時点の約38万口座から1.5倍近くになっています。未成年者がいる家庭では、今まさにジュニアNISAの利用を検討しているところもあるのではないでしょうか。

今回は、ジュニアNISAの人気が高まっている理由や、今から口座開設をすることのメリット・デメリット、活用法や注意点について詳しく解説します。

ジュニアNISAとは

ブロックチェーンが多様化 「マルチチェーン」の時代に突入?
(画像=ELUTAS/stock.adobe.com)

まずは、制度の概要を確認しておきましょう。ジュニアNISAは、一般NISA・つみたてNISAと並ぶ少額投資非課税制度のひとつです。

通常、株式や投資信託などを運用して得た利益には、約20%の税金がかかります。例えば1年間で20万円の利益が出た場合、約4万円が税金として引かれるということです。

NISAには、毎年一定金額の非課税投資枠が設けられています。非課税投資枠内で行った投資の運用利益には、税金がかかりません。

ジュニアNISAを利用できるのは未成年者のみ

ジュニアNISAは、その名の通り子どものためのNISAです。

<ジュニアNISAの概要>

利用できる人日本に居住する0~19歳
(口座開設年の1月1日現在)
非課税枠新規投資枠:毎年最大80万円
期間:最長5年間
非課税対象配当金・分配金・譲渡益など
投資対象商品株式投資信託、国内・海外株式、国内・海外ETF(上場投資信託)、国内・海外REIT(不動産投資信託)、ETN(上場投資証券)、ワラント債(新株予約権付社債)
※ラインナップは金融機関によって異なる
口座開設可能数1人1口座

口座を開設できるのは「開設する年の1月1日時点で20歳未満の未成年者」ですが、実際の運用や管理は原則として親や祖父母などが「運用管理者」として代行します。

ジュニアNISAと一般NISA・つみたてNISAの比較

ジュニアNISAは「子ども向け」ですが、「大人向け」の一般NISAやつみたてNISAとどのような点が異なるのでしょうか。概要を比較してみましょう。

<ジュニアNISA・一般NISA・つみたてNISAの概要比較>

ジュニアNISA一般NISAつみたてNISA
利用できる年齢※未成年者成人成人
非課税投資枠上限
(年間)
80万円120万円40万円
投資方法積立・スポット積立・スポット積立のみ
投資対象商品※国内外の株式・ETF・REIT、投資信託、ETN、ワラント債など国内外の株式・ETF・REIT、投資信託、ETN、ワラント債など公募株式投資信託・ETF
非課税期間最長5年最長5年最長20年
非課税期間終了後のロールオーバー不可
資金の引き出し18歳まで不可制限なし制限なし

※成人年齢はその年の法令に準拠する
※ラインナップは口座開設金融機関によって異なる

-ジュニアNISAには払い出し制限がある

子どもの将来のための資金形成を目的とするジュニアNISAは、口座開設者が18歳になるまで資産を引き出すことができません。この制限は、「口座開設者が3月31日時点で18歳である年の前年12月までに払い出す場合は、過去の利益も含めて課税される」という厳しいものでした。

しかし、それも2023年末の制度終了に伴い撤廃されます。

2024年以降のジュニアNISAはどう変わるのか

ジュニアNISAは2023年末で終了しますが、何もかもがなくなってしまうわけではありません。2023年までと2024年以降に「できること」を見てみましょう。

<ジュニアNISAでできること 2023年までと2024年以降の比較表>

2023年12月31日まで2024年1月1日以降
新規口座開設可能
※年齢条件を満たす場合
不可
新規投資年間80万円まで不可
払い出し制限18歳まで制限あり制限なし
非課税運用非課税期間(5年)
その後は成人までロールオーバー可能
非課税期間(5年)
その後は成人までロールオーバー可能

新規口座開設と新規投資は2023年末に終了

制度終了後は、新たに口座を開設することや新規投資を行うことはできなくなります。すでに口座を開設している人は、成人するまで運用を続けられます。

これから口座を開設する場合は、2021年に開設すれば3年間、2022年に開設すると2年間新規投資が可能です。上限の80万円まで投資した場合は、3年間で240万円、2年間で160万円を投資できることになります。

口座開設を検討している人は、「いつから始めるのか」もよく考えたほうがよいでしょう。

払い出し制限が解除される

18歳までの払い出しに対する制限は、制度終了をもって撤廃されます。2024年以降は、非課税の恩恵を受けたまま自由なタイミングで引き出せるようになるため、人気が急上昇しているのです。

ただし、払い出しの際はジュニアNISAの口座で保有している商品をすべて売却し、全額を払い出す必要があります。「一部を払い出して、残りは運用を続ける」ということはできません。

成人するまで非課税運用を続けられる

ジュニアNISAの非課税期間は5年間です。非課税期間終了時点で成人していない場合は、運用専門の「継続管理勘定口座」に資産を移して、成人するまで非課税運用を続けることができます。これをロールオーバーといいます。

2023年末で制度が終了しても、この仕組みは残ります制度終了時点で口座開設者が成人していない場合は、ロールオーバーを行うことで成人するまで非課税で運用を継続できます。

例えば2021年に0歳の子ども名義で口座を開設した場合、成人年齢に達する年まで運用を続けられます。

-成人年齢の変更に注意

2022年4月1日に、成人年齢を18歳に引き下げるための法律が施行されます。つまり、その日から「18歳以上が成人」になるのです。

ジュニアNISAでは1月1日時点での年齢を基準としているため、2022年は制度上の「成人」の年齢は20歳です。しかし、2023年1月1日からは「18歳以上」を成人として扱うことになります。

例えば、2022年1月1日時点で19歳の人は未成年者なのでジュニアNISAの口座を開設できますが、2023年1月1日時点で18歳の人は成人なのでジュニアNISAの口座は作れません。その代わり、一般NISAやつみたてNISAの口座開設が可能になります。

ロールオーバーの手続き2ステップ

ロールオーバーの手続きは、以下のように行います。

-①証券会社から案内が届く

非課税期間終了が近づくと、口座を開設している金融機関などからロールオーバーに関する案内が届きます。必ず目を通しておきましょう。

-②ロールオーバーを依頼する書類を提出する

案内にしたがって、金融機関に「未成年者口座内上場株式等移管依頼書」を提出します。

金融機関によっては、ネット上で手続きできるところもあります。

-期日を厳守することが大切

ロールオーバーは自動的には行われないため、手続きが必要です。
金融機関が定めた期日を過ぎると、資金が課税口座に払い出されます。その場合、資金を非課税口座に戻すことはできないため注意が必要です。

ジュニアNISAの活用方法

ここまでの説明で、2024年以降も子どもが成人するまでは非課税で運用を続けられること、しかも引き出し制限が解除され、使い勝手がよくなることがおわかりいただけたかと思います。

ここからは、子どものための資産形成が行われる目的について見ていきましょう。

進学資金準備

一般的に教育費用は子どもの成長とともに高額になり、大学進学でピークを迎えます。

大学4年間にかかる費用は、国立で約605万円、私立で802万円といわれています。受験費用や入学準備金なども考えると、子どもが18歳になるまで大きな資金が必要になることがわかります。

2024年以降は払い出し制限が解除されるため、中学や高校など18歳以前の進学費用に充てることもできます。子ども専用の資金形成は、子どもの未来を応援することにつながります

投資教育

ジュニアNISAは、金融や投資についての教材として活用することもできます。子どもが自分専用の投資口座を持てば、金融や投資について関心を持つようになるのではないでしょうか。

例えば、金融資産の価値はリアルタイムで変動するため、社会情勢に興味を持つかもしれません。株式に投資することで企業の運営資金が増えることを知り、社会とのつながりを考えるきっかけになることもあるでしょう。

相続対策

多くの場合、子どもの投資資金は親や祖父母が出資することになりますが、その場合は「贈与税」の対象になります。ただし、贈与税には基礎控除が設けられているため、年間110万円以内の贈与には税金がかかりません

ジュニアNISAの年間投資枠は80万円なので、贈与税を課されることなく出資でき、生前贈与などの相続対策にも活用できるのです。

ジュニアNISAの活用で効率のよい資金形成を

NISA口座は、1人1口座しか開設できません。しかし、親子がそれぞれのNISA口座を開設すれば、世帯全体の非課税投資枠を増やすことができます。例えば、両親が一般NISAで年間120万円ずつ、子どもがジュニアNISAで年間80万円の投資を行うと、年間320万円分の非課税投資が可能です。

人気が高まっているからといって、安易にジュニアNISA口座を開設するのはおすすめしません。しかし、子どもの将来のための計画的な投資方法を探しているのであれば、制度が終了する前にジュニアNISAを検討するとよいでしょう。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road