投資の第一歩としてつみたてNISAを始める人が多くなった昨今。商品選びで特に人気なのは全世界株式、もしくは米国株式の投資信託だが、どちらを選ぶべきか悩む方も多いはず。新刊『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』の著者で、元銀行員、資産運用YouTuberの小林亮平氏が全世界株式と米国株式を選ぶ上でのポイントを解説します。

財産投資積立
(taikichi / PIXTA(ピクスタ))

王道の全世界株式とは?

さっそくですが、以下のデータをご覧下さい。

これはMSCI ACWI Indexという、全世界株式の代表的な指数の過去のグラフです。先進国23カ国、新興国27カ国の株式市場の時価総額の大きさで平均したものですが、約30年前から遡って見ても、右肩上がりが続いています。

MSCI ACWI Index
MSCI「End of day index data search」、日本取引所グループ(JPX)「TOPIX(東証株価指数)」より筆者作成。MSCI ACWI(All Country World Index)、TOPIXともに1987年=100とした値。対象期間は1987~2020年。

つまり、世界中の会社に分散投資して、あとはその株をずっと持ち続けておくだけで資産が増えたことになります。国内株式の代表的な指数であるTOPIX(東証株価指数)と比べても、その差は一目瞭然です。

このグラフの始まりである1987年は、ちょうど日本はバブルの頃だったこともありますが、現在に至るまでTOPIXはほとんど成長していません。

一方、全世界株式に投資しておけば、約30年間で7倍近くにまで増えています。もちろん短期間ではマイナスになる時期もあるものの、長い目で見て投資を続けていれば、利益はじゅうぶん期待できるしょう。

全世界株式が今後も期待できる主な要因としては、全世界株式の指数と世界全体の名目GDP(国内総生産)はおおむね連動していて、世界全体のGDPは今後も上昇していくと予想されている点があります。

GDPは経済の規模を表すモノサシとも言われますが、全世界株式に連動する指数と世界の名目GDPの推移を見てみると、共に上昇してきたことが一目で分かります。

MSCI ACWI(All Country World Index)、世界の名目GDPともに1987年=100とした折れ線グラフ
IMF「WORLD ECONOMIC OUTLOOK(October 2020)」、MSCI「End of day index data search」より筆者作成。MSCI ACWI(All Country World Index)、世界の名目GDPともに1987年=100とした値。対象期間は1987~2020年で、2021年以降のGDP推移はIMFにおける予測。

GDPが成長し続ける要因としては、人口増加や新たなテクノロジーの誕生などがあると言われています。特に人口については、世界全体で見ると2100年までは増え続ける予測があるので、今後も世界経済が成長する後押しになりますし、私たちは全世界株式を買うだけでその恩恵を受けることができます。この全世界株式こそ、限りなく全体に分散投資するという意味で、資産運用における王道とも言われます。

ただ全世界株式は資産運用の王道と言いつつも、約30年間の平均としては年6%程度のプラスでした。年6%というと、1万円投資したら、来年には600円くらいの利益が出ているイメージです。しかも近年の株式市場は比較的好調だったため、今後は年4~5%程度の平均利回りを見ておくのがいいので、ゆっくりとお金が増えるものだと認識しておく必要があります。それでも長く運用を続けることで、将来的には複利効果も効いて大きな利益も期待できるので、時間を味方につけてじっくりと増やしていきましょう。

ちなみに、全世界株式の投資信託で一番人気があるeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、今回紹介したMSCI ACWI Indexに連動しています。MSCI ACWI Indexにおける各国の構成比率を見ると、現状は米国が57.8%とかなり高くなっています。

MSCI ACWI Indexの構成比率は各国の株式市場の時価総額の増減によって変わりますが、今はそれだけ世界的に見ても、米国の株式市場の規模が大きいと言えるでしょう。

信託報酬やMSCI ACWI Indexにおける各国の構成比率
各投資信託の目論見書より筆者作成。信託報酬やMSCI ACWI Indexにおける各国の構成比率などは2021年3月末時点の数値。表示桁未満の数値がある場合、四捨五入。

今や大人気の米国株式

ここ数年で米国株への投資は日本でもかなり広まっていますが、GoogleやApple、Facebook、Amazon.comなど、今を時めく米国IT企業の牽引により、近年の米国株式の伸びが凄まじいことが背景としてあります。

以下はS&P500と呼ばれる、米国の代表的な企業500社の時価総額を平均した指数です。先ほどの全世界株式の指数であるMSCI ACWI Indexと比較してみると、米国株がどれだけ成長しているかが分かります。

MSCI ACWI (All Country World Index)、S&P500の推移グラフ
MSCI「End of day index data search」、Yahoo!ファイナンスより筆者作成。MSCI ACWI (All Country World Index)、S&P500ともに1987年=100とした値。対象期間は1987~2020年。

全世界株式よりもはるかに伸びている米国株式は、過去30年で約15倍にもなったので、米国株に投資する人が増えているのも頷けるでしょう。

米国が人気の理由としては、先進国の中では珍しく、今後も人口の増加が予想される国である点が挙げられます。国連のデータを基にした米国と日本の人口推移予想を比較してみると、米国は2100年まで人口が増える見込みになっていますが、一方の日本は右肩下がりに人口が減っていくと予想されています。

2019 Revision of World Population Prospects の折れ線グラフ
United Nations「2019 Revision of World Population Prospects」より筆者作成。対象期間は2020~2100年。

米国の人口が増える大きな理由は移民の受け入れで、過去にも毎年約100万人程度の移民を受け入れてきました。人口が増えれば国内の経済活動は活発になり、若い労働力も確保できるため、国の成長に繋がっていきます。反対に日本は人口減少だけでなく少子高齢化問題もあるので、厳しいと言わざるを得ないでしょう。

人口が増える国といえば、中国などの新興国を思いつくかもしれませんが、法整備が不十分な新興国は、人口が増えてGDPが成長しても、株価が伸びるとは限らない傾向にある点には注意が必要です。そのため、法整備が整っている先進国の中でも貴重な、人口増加が予想される米国の魅力がお分かりいただけたかと思います。

米国株式の投資信託も紹介すると、やはりeMAXIS Slim米国株式(S&P500)が一番人気で、今回紹介した米国株式の代表的な指数S&P500に連動しています。S&P500の中身を見てみると、上位の銘柄はGoogleやApple、Facebook、Amazon.com、MicrosoftなどのGAFAMが占めています。

米国株式インデックスファンドのおすすめ図
各投資信託の目論見書より筆者作成。信託報酬などは2021年3月末時点の数値。

全世界株式と米国株式、選ぶ上でのポイントは?

では、ここまで紹介した全世界株式と米国株式、どちらを選ぶのがいいのでしょうか。

近年の成績を見ると、米国だけに投資すればいいのではと思うかもしれませんが、米国株式であっても、他の国より必ず伸びるとは限りません。確かに今は米国株が盛り上がっていますが、時期によっては、米国株より新興国株や日本株が伸びる時も過去にはありました。

そのため、あえて特定の国を選ばず、世界中に分散投資しておくのが資産運用の根本的な考え方であることは忘れないでおきましょう。

その点を踏まえて、全世界株式と米国株式を選ぶ上でのポイントは、できるだけ幅広く分散投資しておきたいなら全世界株式、米国の今後の成長に確信が持てるなら米国株式を選ぶという選択肢でよろしいかと思います。

「全世界株式の投資信託と米国株式の投資信託を両方選ぶのはアリですか?」という質問もよくいただきますが、先ほど見た通り、全世界株式の中身の半分以上は米国株なので、両方選ぶとトータルでの米国比率がだいぶ大きくなってしまいます。

ただし今後、米国以外の国が成長した時は、全世界株式の構成における米国比率は下がっていく可能性もあるので、どうしても迷うなら全世界株式と米国株式、両方の投資信託を持って比較しながら運用するという選択肢も悪くはないでしょう。

米国株式か全世界株式かは、投資の世界における永遠のテーマであり、投資家のあいだでも意見が分かれるところであります。

本記事をご参考に、ぜひ自分なりの根拠を持って選んでみて下さい。

小林亮平

小林亮平
1989年生まれ。横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。退職後、ブログやSNSで資産形成(つみたてNISAやiDeCo、楽天経済圏など)の入門知識を発信。現在はYouTube「BANK ACADEMY」を運営し、チャンネル登録者は37万人を超える。著書に『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』がある。