COOと他の役職の違い
会社には、COO以外にもさまざまな役職がある。ここでは、COOと他の役職の違いを解説する。
COOと代表取締役・取締役の違い
COOと代表取締役・取締役の違いは、職務の範囲と会社法上の根拠の有無にある。
まず、取締役や代表取締役は、いずれも会社法において会社の業務執行を担う者であり、経営の意思決定を行う取締役会の一員だ。
取締役会では、取締役の職務執行の監督や会社全体の業務執行の決定を行う。これに対して、COOは営業活動の統括を行う役職であるため、代表取締役や取締役とは職務の範囲が異なる。
日本の法律でCOOについての規定はなく、COOがその会社においてどこまでの法的権限を有する人物かは判断できない。また、代表取締役兼COOや取締役兼COOを置く会社が多いが、取締役でないCOOも存在する。
たとえば、グローバルに活躍する豊田通商株式会社では、経営と執行の分離のために、取締役を兼務する執行役員を「社長」「副社長」「CSO」「CFO」の4名に絞っていると説明している。COOについては、同社の役員等の一覧によると、取締役でない執行幹部のメンバーから選任されている。
(参考)豊田通商株式会社
COOと社長・副社長の違い
社長と副社長は、会社のトップとそれに次ぐポジションであり、いずれも会社法に定めのない会社内部の職制上の地位である。
会社のトップやナンバー2であることとCOOの職務は直接関係しないが、会社の運用として、社長あるいは副社長にあたる人物がCOOを兼任しているケースもある。
COOとCEO の違い
COOと他の職との違いで最もわかりにくいのが、CEOとの違いではないだろうか。
COO(Chief Operating Officer)が最高執行責任者であることに対し、CEO(chief executive officer)は最高経営責任者である。ともに業務執行を統括するが、COOは営業活動の業務執行を統括し、CEOは会社全体の業務執行を統括する。
COOや他のCxOによる業務執行ラインが複数ある中で、そのトップがCEOであるとイメージするとよいだろう。あえて日本の伝統的な職制にあてはめれば、営業部長がCOOに近いといえる。
しかし、さまざまな企業がCEO やCOOを導入する中、両者の在り方は一様ではない。実際によく見られるCEO・COOのパターンを紹介する。統計等に基づくものではなく、筆者の知見に基づき選別したパターンである。
・会長CEO・社長COOのパターン
アメリカ型のコーポレート・ガバナンスに由来していると見られるパターンだ。
会長は取締役会の会長を指すが、社長と同様、法律上、定められた役職ではない。参考まで代表権に着目すると、会長CEO・社長COOともに代表取締役であるケースもあれば、会長CEOは代表権のない取締役で、社長COOのみが代表取締役であるケースもある。
・社長CEO・副社長COOのパターン
このパターンでは、代表取締役社長がCEO、取締役副社長がCOOという体制が多いように感じる。
・CEOとCOOを社長が兼任しているパターン
多くはないが、CEOとCOOを代表取締役社長が一人で兼任している会社も見受けられる。
COOと執行役員の違い
COOは、営業活動の業務執行を統括する役職であり、執行役員は、会社の業務執行を担う者として各社が運用する会社内部の役職である。前述のとおり、COOは、社長である場合もあれば取締役でない者がCOOに就任することもある。
執行役員の場合、代表取締役や専務・常務取締役など、取締役と執行役員を兼務している者と取締役でない従業員を含む執行役員のチームを作って運用している会社も見られる。個々の執行役員は、特定の業務執行を担当分けされている場合が多い。
なお、COOの訳は「最高執行責任者」だが、執行役員制度を導入しているからといって、必ずしもそのトップにCOOを配置する必要はない。COOと執行役員の両方を置いている会社もあれば、どちらか一方のみを置いている会社もある。
COOも執行役員も、どちらも会社法で選任することを定められている役職ではなく、各社の判断によって運用されている。
・執行役員制度とは
取締役に代わって会社の業務を執行する「執行役員」を選任する制度だ。
会社の業務執行権を取締役から分離し、執行役員に担わせることを目的とする。執行役員制度は、会社法で設計された内部統制の方法ではないが、指名委員会等設置会社でなくても、同社に近いメリットを得られる制度といえる。
COOと執行役・代表執行役の違い
COOは「最高執行責任者」の意味であり、海外の制度を模倣して日本に導入されたものだ。したがって、COOは広く知られる名称ではあるが、日本の法制度に根拠のない役職である。
これに対し、「執行役」とは、前述の「指名委員会等設置会社」において設置しなければならない、会社法上の機関名だ。(「COOが日本に導入された経緯」を参照)「執行役」とは、この指名委員会等設置会社の業務執行を担う者のことであり、「代表執行役」とは執行役が複数名のケースにおいて、対外的な代表権を付与された人物を指す。(執行役が1名のみであれば、その者が代表執行役となる。)
つまり、COOと執行役、代表執行役は、いずれも会社の業務執行を担う人物を指すが、法律で定められた役割であるかどうかと、COOが業務執行を統括するトップを指すかどうかに違いがある。
COOとCFOの違い
COOは最高執行責任者であるが、CFO(Chief Financial Officer)は最高財務責任者であり、その職務内容に違いがある。COOは営業活動を、CFOは会社の財務に関する活動を統括する職だ。
COOとCFOの両方を置いている会社もあれば、どちらか一方の会社もある。組織編成において、COOとCFOの間に優劣は特になく、CEOが社長で副社長がCOOである会社もあれば、副社長がCFOである会社もある。もちろん、両方とも副社長というケースもある。
たとえば、株式会社EduLabでは、それぞれに担当業務をもつ5名を副社長とし、その中に、副社長兼COO、副社長兼CFOが存在する。
(参考)株式会社EduLab
COOとCTOの違い
COOは「最高執行責任者」と訳される職であるが、CTO(Chief Technology Officer)は「最高技術責任者」と訳される職であり、COOとCTOにはその責任範囲に違いがある。
COOは会社の業務執行のトップであるため、マーケティング、開発、営業など会社の事業活動に関わる部門全体を統括する。これに対してCTOは、技術開発のトップであり、開発部門全体を統括することを責務とする。