COOという役職がある企業は珍しくないが、社内でどのような地位の人物がCOOに就任しているかは会社によって異なる。この記事では、COOの役割や日本に導入された理由、COOと取締役や社長・副社長といった他の役職との違い、どのような人物がCOOに就任しているかなどについて解説する。
目次
COOとは
COO(Chief Operating Officer)とは、アメリカ型のコーポレート・ガバナンスとともに導入された、会社内部の役職名で、日本では「最高執行責任者」と訳される。日本の会社法上の役員ではなく、企業の判断で導入・運用されている。
COOの役割
COOの役割は、最高執行責任者としてCEOが決定した方針を実現するために、マーケティング、開発、製造など営業活動を統括することにある。各部門の役割や会社の経営資源を把握し、それらを最適化することが求められる。
COOは取締役を兼務していることも多いが、その場合は経営陣として会社の意思決定の段階から関わっていることとなる。
COOを導入する3つのメリット
・1.スピーディな経営を実現できる
COOは、CEOが決定した経営方針を実現するために、社内の事業活動を統括する役割を担う。
そのため、COO を導入することには、CEOのみを導入する場合よりも、経営方針の決定から実現までにスピード感が生まれやすくなるのがメリットだ。その結果、CEOが経営判断に集中できるようになり、経営環境の変化や突発的な事態への即時対応など、効率的な経営につながるといえる。
・2.透明性の高い経営を行うことができる
会社の業務執行は、取締役の役割であり、その業務執行に対する監督は、取締役会の役割だ。しかし、業務執行に対する監督については、取締役同士に力関係があることや、業務執行の負担が大きいことなどによって、正常に機能しづらい場合がある。経営陣の監督機能が低下すれば、不正や重大な問題点を見落とすかもしれない。
そこで、信頼できる人物をCOOに選任し、業務執行ラインのトップに据えることで、透明性の高い経営を行うことが期待できる。内部統制の適正化によって、企業価値を長期的に高めることが目的だ。
・3.将来の経営人材を育成できる
CEOやCOOを導入することは、将来の経営人材の育成にもつながる。
たとえば、COO候補のポストを設けることで、優秀な経営人材の登用の手段として活用できる。さらに選任基準を定めて公開すれば、将来、経営幹部を目指す若手の仕事へのモチベーションも高まるだろう。
COOが日本に導入された経緯
CEOやCOOを選任する「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」を日本企業が導入する契機になったのは、1990年代初めのバブル崩壊などによる日本企業の業績低迷からと考えられている。
また、日本の企業統治の方法では、取締役の業務執行に対する監督機能が正常に働いていないという懸念があった。日本の伝統的な企業統治には、終身雇用や年功序列、社内の人材が経営陣に昇格するといった特徴があるが、この方法では、たとえば若い取締役が自分より上位の取締役を監督できないといった問題があり、透明性を確保することが難しい状況だった。
そこで、企業統治のあり方から変え、再び国際競争力を高めるきっかけにしたり、海外の投資家等にアピールしたりする必要があった。
アメリカのコーポレート・ガバナンスでは、取締役会が選任したCEOやCOOが会社の業務執行を担い、社外取締役を多く含む取締役会によって業務執行を監督するという特徴がある。つまり、取締役の職務から業務執行を分離させ、社外取締役を含む取締役会が業務執行の監督に集中できるため、透明性の高い経営が可能となる。
このような企業統治を実現するために執行役員制度を初めて導入したのが、1997年のソニー株式会社だ。
その後、2003年に「商法の特例法(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律)」によって、「執行役」を設置する指名委員会等設置会社の設立も、一部の企業を対象に認められるようになった。
なお、「商法の特例法」は会社法に統合され、現在でも指名委員会等設置会社を新しく設立可能である。
・指名委員会等設置会社とは
指名委員会等設置会社とは、業務執行を担う「執行役」や、取締役から選定した委員による、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会が設置されるのが会社の特徴だ。(制定当時は「委員会等設置会社」)
3つの委員会には、取締役の指名、執行役や取締役の監査や報酬の決定を行う権限がある上、委員の過半数を社外取締役から選定することが義務付けられており、執行役や取締役に対する監督機能が確保されている。