カルテルの5つの種類
近年では、価格や数量に関する合意だけでなくその他の内容に関する合意などについてもカルテルにあたるとして調査、摘発されることも増えている。そこでカルテルの種類についても知っておきたい。
1. 価格カルテル
価格カルテルは企業が同業他社と話し合うなどして共同で商品の価格を取り決める行為だ。標準価格や最低販売価格だけでなく、価格算定方式や割戻し値引きなどに関する合意なども該当する。近年では、自社で価格を決める際にAI(人工知能)やアルゴリズム(計算方法)を利用している企業もあるだろう。
例えば複数の企業が共通のアルゴリズムを使って各社の価格が同調することも考えられる。しかし公正取引委員会によると「価格が同調すると認識して使っていれば価格カルテルにあたる」との指摘もあるようだ。
2. 数量制限カルテル
数量制限カルテルは、生産量や出荷量、販売量などに関する取り決めをする行為だ。例えば複数の企業で生産量を取り決め共同で市場への供給量を制限するようなケースがある。製品の数量は、価格への大きな影響力を持つ。一般的に市場への供給量が減少すれば価格が上昇し消費者に不利益を与えることになる。
3. 顧客・販路カルテル
取引先や販売地域に関する取り決めを行う行為を「顧客カルテル」「販路カルテル」などという。例えば顧客争奪の禁止や取引先の専属登録制、市場分割などの制限を取り決めるような行為だ。これらは、市場における競争を実質的に制限することになり禁止されている。
4. 技術カルテル
技術カルテルは、生産その他の事業活動に用いる技術の開発や利用を制限することを共同で取り決める行為である。技術は、提供する商品およびサービスにおいて品質や価格に大きな影響を及ぼすものだ。当然重要な競争手段であり複数の事業者間で開発・利用する技術を制限することは、市場での競争を妨げることになる。
一方で価格や数量に関するカルテルなどと異なり競争制限効果が高いとはいえず、技術をめぐるすり合わせが摘発対象となることは一般的ではない。しかし近年欧州でフォルクスワーゲンなど自動車大手による排ガスの浄化技術をめぐる合意がカルテルと認められるなど、競争政策も新たな領域に入っている傾向だ。外国の規制だからと看過することのないように注意しておこう。
5. 雇用・賃金カルテル
近年、人材獲得市場において決定されるべき取引条件を複数の事業者間で共同して人為的に決定する行為が、雇用・賃金カルテルとして問題視されている。例えば以下のような行為は注意が必要だ。
- 他社との間で従業員の給料などの雇用条件を具体的な数値や幅で合意する
- 福利厚生の内容について合意する
- 従業員の勧誘や引き抜きをしないように合意するなど
米国の大手IT企業間で相互にエンジニアの引き抜きを禁止する取り決めが問題となったのを発端に、日本の公正取引委員会でも「人材と競争政策に関する検討会」の報告書を公表した。そのなかで従業員やフリーランスなどの人材獲得競争に関して引き抜き禁止の取り決めや賃金調整をした場合、独占禁止法上問題となる旨明記されている。
人事担当者間での交流や情報交換などの際には、内容に配慮が必要だろう。