キーボードの画像
(maxkabakov / PIXTA(ピクスタ))

2021年12月、米国のCPI(消費者物価指数)が7.0%と高水準になったことで、米FRB(連邦準備制度理事会)が金融市場に警告を発している。利上げのペースがコンセンサスよりも早まり、回数も増える可能性が浮上。これによって、世界中の株式市場が急落しているのだ。当コラムでは、これらの現状を分析していく。

ナスダック銘柄のチャートはリーマンショック直後より悪化

駄菓子メーカーのやおきんが、4月出荷分から「うまい棒」の価格を10円から12円に引き上げるという。ネットメディアなどで盛んに報じられているので、ご存知のかたも多いだろう。やおきんは1979年からうまい棒の価格を10円のまま据え置き続けてきた。そう言われてみると、筆者が子どもの頃から価格はずっと変わっていない。駄菓子業界の「価格の優等生」として、子どもから大人まで幅広い世代に親しまれている。

これまで、度重なる消費税の増税や、原材料である米国産とうもろこしの価格の上昇を受けても10円を死守してきた(サイズの変更はあった模様)同社だったが、さすがに直近の材料高には耐えきれなかったようだ。なにせ、2022年は「値上げラッシュ」の年である。電気・ガス、水道の光熱費から、電車賃、首都高の通行料、食品類など、消費者に関連するさまざまな分野で値上げがすでに行われたか、今年中に行われる見込みだ。原油価格の上昇傾向が続いていることを考えると、一段の値上げが行われる可能性があるだろう。

こうした値上げラッシュは、実は米国の方が深刻である。昨年12月の米CPI(消費者物価指数)は、前年同月比7%と市場予想を大きく上回った。日本の同じ月のCPIはまだ0.3%だ(ただし、CPIに数カ月から半年遅れて反映されるとされる「企業物価指数」は8.5%と高い数字を記録した)。米国のインフレ加速が、FRBの利上げ時期の前倒しや利上げ回数の引き上げを想起させるため、足元の世界同時株安につながっている。米国のネット証券大手のストラテジストによると、1月21日の時点で米ナスダック上場銘柄の63%が、日足チャート上の「200日移動平均線」を下回っており、この数値は過去20年で最も悪いという。ITバブル崩壊後やリーマンショック後よりも悪化しているわけだ。

それだけ相場参加者が弱気一辺倒ということなのだが、ナスダック指数は2020年3月のコロナショック以降、異常とも言えるペースで上昇を続けていたため、その反動という側面が大きいと思われる。ここまで、ちょっとした調整局面が訪れても保有をし続けてきた米国の投資家たちが、「これだけ上がれば十分だし、どうやら利上げに転じるらしい。ロシアとウクライナの戦争も起こりそうだし、このあたりで利食っておこう」と考えた結果、63%という数字に達したのだろう。25日もナスダック指数は続落しており、この数字はさらに悪化している公算が大きい。

米政府は2022年の年央で大きな方針転換に踏み切る?

2021年のシンクタンクや証券会社などの分析では、FRBは2022年中に年2、3回の利上げに踏み切るとの予測が多くみられた。ところが、現在は「今年5回、今回の利上げ局面で計7回の利上げ」という話が出てきているという。現地の報道によると、この「7回」という数字は、どうやらFRBサイドが金融市場の反応を見るために意識的にリークしたものと捉えられているらしい。1月25日、ナスダック指数は前日比マイナス2.28%の急落となったが、このリーク情報が下落の主因だったようだ。

また、同日、米国のバイデン大統領が「あれだけの兵力で(ロシアが)ウクライナに侵攻したら、第2次大戦以来の大規模な侵攻になる。世界を変える」と発言したことも、よりリスクオフの動きを強める格好となった。

仮に、7回にわたって0.25%ずつの利上げが行われれば、米国のFFレート(政策金利)は2%になる。米国のあるエコノミストが「利上げが必ず0.25%ずつ行われるとは限らない。インフレへの対応を急ぐなら、一度に0.5%引き上げるかもしれない」とコメントしていることを考えると、2.5%程度までの利上げが視野に入りそうだ。同エコノミストは「2.5%までの利上げでインフレの息の根を止められる保証はない」ともコメントしている。もし、米国のCPIが5%を超えるような高水準が続くなら、FRBも利上げを続けるしかないだろう。

しかし、何人かのエコノミストやアナリストたちの意見を聞くと、「さすがにCPIがこのまま高水準を維持するとは思えない。