経済には大きく分けて、2つの局面があります。1つはデフレ(デフレーション)で、もう1つはインフレ(インフレーション)です。日本経済はかつての不動産バブルが崩壊した後に「失われた20年」に突入し、長期にわたるデフレ局面が続きました。

しかし世界は日本とは裏腹に、アメリカをはじめとする主要国でインフレが進行しています。インフレになると物価が高くなるため、不動産もその影響を受けて価格上昇が続いています。ニューヨーク・マンハッタンの高級マンションが1室194億円で売りに出されたことに象徴されるように、特に大都市圏での不動産価格の高騰が続いています。このままインフレが進行すると、不動産価格はさらに上昇するでしょう。それはもちろん日本にも波及し、すでに高止まりしている東京など大都市圏の不動産価格がさらに上昇する要因になります。

今後日本にも到来する可能性が高い本格的なインフレに備えるには、現物資産を保有するのが一番の対策になります。そのなかでも不動産はインフレに強いといわれていますが、その理由や不動産を活用したインフレ対策の概要について解説したいと思います。

世界はインフレに突き進んでいる

インフレと不動産価格の関係を理解してこれからの時代を生き抜く正しい対策を
(画像=hakinmhan/stock.adobe.com)

CPI(消費者物価指数)は身の回りにある日用品の物価を知る指標として知られていますが、アメリカではこのCPIが上昇を続けています。2021年1月には1%台だったCPIが11月には7%に迫る上昇を見せており、この急激な物価の上昇がインフレへの懸念を増大させています。

実は日本でもアメリカほどではないものの、CPIの上昇は始まっています。2021年6月にはそれまでマイナスだったCPIがプラスに転じ、上下を繰り返しながらも秋以降はプラス基調となっています。

他の国でも同様の傾向が見られ、世界経済は今後インフレに向かうことが確実視されています。つまり、今後はあらゆるものの価格が高くなる時代がやってくるということです。

そもそもインフレとは?デフレとの違いを理解しよう

インフレとデフレは、対極の関係にあります。お金とモノの価値は常にシーソーのように相対的な価値が上下していますが、お金の価値が相対的に低くなって物価が高くなる状態をインフレ、その逆にお金の価値が高くなって物価が低くなることをデフレといいます。

2020年に世界を襲ったコロナ禍では世界各国の政府が自国の経済を下支えするために大規模な金融緩和を行い、膨大なお金が供給されました。やがてコロナ禍が収束に向かうようになるとお金余りの傾向が顕著になり、経済の回復が早い国を中心にインフレ圧力が強まりました。一時はマイナス価格を付けたことで衝撃が走ったWTI(原油先物)ですら、2021年の年末には70ドル台の高値圏で推移しました。世界経済の回復が原油需要を喚起すると考えた投資家が原油先物を買ったことも高騰の一因です。

日本は長らくデフレに苦しんできました。そこでアベノミクスでは、インフレターゲットというわざとインフレに誘導してデフレを脱却する政策がとられました。そんな日本ですらインフレ傾向が見られるのですから、元からデフレではなかった国でインフレが進行するのは容易に想像がつきます。

ちなみに、インフレが行き過ぎるとハイパーインフレといって経済が破綻状態になります。物価が毎日上昇し、昨日は買えたものが今日は買えないといったことが起こります。こうなると通貨が紙切れ同然になってしまいます。世界にはジンバブエやベネズエラなどハイパーインフレによって経済が破綻した国も多々あり、行き過ぎたインフレには経済を破綻させ国民生活を窮地に追い込むリスクがあります。

長らくデフレだっただけに日本で今すぐインフレが顕著になることはないかもしれませんが、そんな日本にもついにインフレの時代がやってくることが確実視されているのです。

インフレになると不動産価格も上昇する

インフレではモノの値段が高くなるので、現物資産の1つである不動産の価格も上昇します。しかも野菜や果物といった日々の買い物と違って不動産は高額商品の代表格なので、インフレになると価格の上昇幅も大きくなります。

この傾向はすでに世界的に見られます。以下はオックスフォード・エコノミクスがまとめた主要国の住宅価格上昇率です。

インフレ傾向が顕著になっているアメリカですら4位で、長らくデフレが続いてきた日本も香港に次ぐ上昇率です。日本の不動産には割安感があると考えている投資家は多いので、今後日本の不動産価格が大きく上昇することも考えられます。

不動産はインフレに強い現物資産の筆頭格

ここまでの解説を通して、不動産を持っておくことがインフレ対策になるのではないかと思われた方は多いのではないでしょうか。それは正解で、不動産はインフレに強い現物資産の筆頭格です。その理由は、主に2つあります。

  1. 物価が上昇すると不動産価格も上昇するため資産価値が高くなる
  2. インフレでお金の価値が低下すると借入金の価値も目減りするため返済しやすくなる

不動産は高額商品なので、投資目的で購入する場合であっても一般的にはローンを利用します。借金の返済は現金でするわけですが、インフレになるとお金の価値が下がるため借金の実質的な価値も目減りします。つまり返済しやすくなるため、資産価値上昇と返済負担軽減というダブルのメリットがあるわけです。

先ほども述べたように、主要国の中で日本の不動産には出遅れ感があると見る投資家が多く、不動産バブルが実質的に崩壊した中国の投資家も日本の不動産を物色しているという話はよく聞かれます。インフレとともに日本の不動産価格が上昇する流れになることは、資産防衛だけでなく資産形成の観点からも有効です。

インフレ対策を考慮した不動産投資のあり方

インフレ時代への備えとして不動産投資の有効性をご理解いただきました。それではインフレ対策を視野に入れた不動産投資では、どんな方向性を意識するべきなのでしょうか。そのキーワードは「都心物件」と「タイミング」、「借り入れ」の3つです。

すでにその傾向は見られますが、これからも日本の不動産市場では外国人による旺盛な買い意欲がポイントになります。外国人の不動産投資家がどんな物件を志向するかを考えると、やはり東京の都心もしくは都心から好アクセスの物件が軸になります。こういった立地に恵まれた物件は賃貸需要も安定しているので、今後も価格推移は堅調であると考えられます。

2つめのキーワードである「タイミング」も、不動産の価格上昇が続いている局面ではとても重要です。まだまだデフレを本格的に脱却していない日本には、優良とされる物件であってもまだまだ出遅れ感のある物件が多いというのが世界からの見方です。資金的に可能なのであればできるだけ早く不動産を購入するのも1つの戦略です。手が届かないような価格になってしまってからだと参入が困難ですし、逆にそうなる前に購入した人は値上がり益を手にすることもできます。

3つめの「借り入れ」は、すでに解説したとおりです。インフレになるとお金の価値が低くなるので借金をしても返済の負担も低くなります。属性が良好であるなどローンを利用しやすい環境にある方にとってインフレはチャンスなので、それをいかして積極的にローンを活用することをおすすめします。少ない自己資金で物件を購入し、家賃収入を返済に充当しながら資産形成ができるのは不動産投資の大きなメリットであり、しかもインフレになるとそのメリットがより大きくなるので、このチャンスを大いにいかすべきでしょう。

(提供:Incomepress



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