事業ドメインを設定する効果

経営資源が限られた中小企業にとって、事業ドメインを設定する意味合いは大きい。具体的にどのような効果があるか、以下で詳しく解説しよう。

1.一貫性のある経営体質になる

事業ドメインを設定すると、注力すべき事業や施策が明確になる。また、従業員から見ても組織の方向性が分かりやすくなるため、一貫性のある経営体質を築けるだろう。

将来のビジョンを合理的に説明できるような経営体質は、投資家などのステークホルダーに対しても有効である。

2.経営資源の配分を最適化できる

各事業のポジションや優先度が明確になれば、将来性・成長性がある事業に経営資源を集中させることが可能だ。資金や人員、設備の配分を最適化できるため、事業ドメインの設定は生産性アップやコスト削減につながる。

3.競合他社やターゲット層が明確になる

事業ドメインの設定を通して各事業のポジションを整理すると、意識すべき競合他社が明確になる。さらに市場セグメンテーションまで落とし込むことで、より細かなターゲット層も設定できるだろう。

コア事業への注力や規模拡大を目指す企業にとって、競合他社・ターゲット層の明確化は欠かせないプロセスである。

4.商品価格を上げやすくなる

ターゲット層が明確になると、提供すべき製品や的確なアプローチも見極めやすくなる。結果として、高品質な商品・サービスを提供できるようになるため、自社のブランド力を価格に反映しやすくなる。

ブランド化が成功するとは限らないが、付加価値を商品価格に転嫁できる段階まで進めば、売上アップやさらなる成長を見込めるだろう。

事業ドメインの成功事例3つ

実際に事業ドメインを設定している企業は、どのように事業領域を決めているのだろうか。ここからは、参考にしたい3つの成功事例を紹介する。

事例1.普段着の定義づけで世界的なブランドへ/ユニクロ

ファストファッションで有名な『株式会社ユニクロ』は、普段着のコンセプトとして「LifeWear(究極の普段着)」を掲げている。このコンセプトによって、独自の機能性素材や高品質素材を使うなどの方向性が明確になり、同社は個性的なブランドとして世界的に受け入れられるようになった。

「普段着」という小さな領域でも、事業ドメインの設定方法によっては強力なブランド化につながる。実際にシンプルで上質、かつ合理的なファッションと聞いて、ユニクロを連想する人は多いはずだ。

小さな領域を細部まで突き詰める企業努力は、ぜひ参考にしたいポイントだろう。

参考:ユニクロ「LifeWearとは

事例2.モノだけではなく「便利」も提供/セブンイレブン

大手コンビニチェーン『株式会社セブン-イレブン・ジャパン』の事業ドメインも分かりやすい。同社はコンセプトとして「近くて便利」を掲げており、地域から頼られるインフラを目指してサービス展開をしている。

例えば、荷物の受け取りやATM、公共料金の支払いなどは、利便性の高い代表的なサービスだろう。その他、駅前などのアクセスが良い立地や、スマートフォンとの連携サービスなども、”近くて便利”を実現している要素である。

取り扱う商品・サービスだけではなく、「消費者が何を求めるか」「ニーズにどう応えるか」を総合的に判断することが、事業ドメイン設定の成功につながるだろう。

参考:セブン‐イレブン「「近くて便利」なお店であるために。

事例3.コア・コンピタンスを活かした方針転換/富士フイルム

業界の衰退をきっかけに、事業ドメインを再設定したような例も見受けられる。例えば、写真フイルムの需要減に直面していた『富士フイルム株式会社』は、独自の技術・ノウハウを意識して事業領域を見直し、次々と新規事業を成功させた。

具体的には三次元構造化の技術や高機能材料を活かして、今では化粧品やサプリメント、抗菌用品、双眼鏡などを多角的に展開している。医療関係者に向けては、ヘルスケアITソリューションや医療AIなどの最先端サービスも提供しているようだ。

この事例のように、自社ならではの強みである「コア・コンピタンス」に目を向ければ、業界の危機も乗り越えられるだろう。

参考:富士フイルム「企業理念