事業ドメインを設定する方法

事業ドメインの設定には準備が必要であり、準備不足の状態で作業を進めると経営戦略に活かすことが難しくなる。ここからは基本的な設定方法をまとめたので、ひとつずつ丁寧に確認していこう。

【STEP1】現状の把握

まずは改善したい経営体制や事業などに関して、現状を把握するところから始める。例えば、「どんな課題を抱えているか?」や「どういった強み・弱みがあるか?」などを改めて分析すると、将来性や業界内でのポジションを見極めやすくなる。

また、大きな変革を実現したいのであれば、自社の経営理念などを再定義することも必要だ。目指している企業像を意識しながら、自社が置かれている現状を慎重に分析していこう。

【STEP2】大まかな方向性の設定

次のステップでは、競合の存在や自社の強みなどを意識しながら、事業ドメインの大まかな方向性を決めていく。まず決めておきたいポイントは、「どの市場で事業ドメインを設定するか?」という点だ。

例えば、すでに参入している市場と新しい市場とでは、設定すべき事業ドメインが変わってくる。中心となる市場を決めたら、事業内容や展開エリアなどの細かい部分を煮詰めていこう。

【STEP3】事業ドメインの設定と検証

事業ドメインを煮詰める作業では、以下の3つを重点的に考える必要がある。

事業ドメイン

特にビジネスの核となる「コア・コンピタンス(他社を凌ぐ圧倒的な能力)」と、「ケイパビリティ(組織的な能力や強み)」の2つを明確にすることが重要。

ここまで進めば事業ドメインの大部分を設定したことになるが、設定後には入念な検証が必要だ。将来も踏まえて「どのような効果を得られるのか?」を分析することで、修正すべきポイントや漏れている部分が見えてくる。

もしこれらの不備が見つかったら、【STEP1】【STEP2】で決めた内容も振り返りながら、事業ドメイン全体を丁寧に見直そう。

【STEP4】役員への説明と承認

事業ドメインは設定がゴールではなく、社内の理解を得て上手に運用していく必要がある。そのため、設定が完了したら取締役会を開催し、役員からの承認を得なくてはならない。

承認作業では一方的に意見を押し付けるのではなく、周りの意見もとり入れながらブラッシュアップしていくことが重要だ。経営資源の確保にも関わる部分なので、丁寧に説明をしながら話し合いを進めていこう。

事業ドメイン設定に役立つフレームワークとは?

事業ドメインは、ビジネス用のフレームワークを使うと設定しやすい。通常はどのようなものが使われるのか、以下では2つのフレームワークを紹介する。

CTFフレームワーク

CFTフレームワークとは、「顧客・技術・機能」の観点から事業ドメインの範囲を見極める分析手法だ。例えば、前述の【STEP2】【STEP3】で以下のような分析を行うと、事業ドメインの全体像をつかみやすくなる。

<CTFフレームワークを活用した飲食店の例>

・顧客(Customer)…オシャレなランチに興味がある20~30代の女性。
・機能(Function)…見た目・味ともにハイクオリティな料理を、低価格で提供。
・技術(Technology)…一流レストランで培った味付けや盛り付けの技術。

上記は簡単な例であり、実際の分析では各要素をさらに細分化していく。業界動向や市場の変化なども踏まえて分析をすれば、より質の高い事業ドメインを設定できるだろう。

SWOT分析

SWOT分析は、「強み・弱み・機会・脅威」の4つの観点から、自社のポジションや環境を分析する手法である。

SWOT分析
(引用:中小企業庁「経営計画策定支援スライド」)

各事業を対象にSWOT分析を行うと、プロジェクトごとの成長性や将来性を判断できる。その結果をもとにコア事業・不採算事業を整理すれば、優位性のある市場で戦いやすくなるだろう。

また、会社全体を対象にSWOT分析をすると、注視すべき競合他社や競合商品、自社のコア・コンピタンスなどが明確になる。