遺産分割の方法とそのポイント

では次に遺産分割のポイントをサンプルを挙げながらご説明していきたいと思います。

(遺産分割協議書のサンプル)

遺 産 分 割 協 議 書

本   籍  東京都国分寺市南町A丁目B番C号

最後の住所  東京都新宿区X町Y丁目Z番

被 相 続 人  桐生 為五郎 (平成26年2月1日死亡)

上記の者の相続人全員は、被相続人の遺産について協議を行った結果、次の通り分割することに同意した。

1.相続人桐生 竜太は次の遺産を取得する。

【土地】

所   在  何市何町何丁目

地   番  何番何

地   目  宅地

地   積  150.00㎡

2.相続人冴島 花子は次の遺産を取得する。

【預貯金】

スカイ銀行新宿東口支店 普通預金 口座番号123-4567

本協議書に記載のない遺産が判明したときは、後日別途協議する

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を2通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

平成25年何3月1日

【相続人桐生竜太の署名押印】

住所

氏名           実印

【相続人冴島花子の署名押印】

住所

氏名           実印

遺産分割は、法的には、遺言とは異なり書面を作成して行うことは要求されていません。そのため、口頭での話し合いだけでも遺産分割は有効に成立します。故人の遺品を思い出のためにわけるいわゆる形見分けも厳密に考えれば口頭による遺産分割に当たることもあり得るでしょう。しかし、遺産分割は、内容を明確にするため書面を作成して行うのが一般的です。

特に、不動産登記など手続きが必要な場合には遺産分割協議書が添付書類として必要とされるので書面化が必須となります。遺産分割協議書の紙質には全く規定はないので、極端、ノートの1枚を遺産分割協議書としても差し支えありませんが、上質のA4の用紙、あるいはA3の用紙を使うのが一般的です。遺産分割を行う場合の最大の注意点としては前述しましたように、相続人全員で行う必要があるという点です。

相続人を1人でも欠いて行った遺産分割協議は無効です。これは、遺産は相続人全員で共有している状態なので全員で、相続人全員での共有状態を解消するためには全員で話し合いをしなければならないためです。

そのため、どんなに縁遠くなってしまっている方でも戸籍上相続人となっている以上はその方も含めて遺産分割協議を行わなければなりません。遺産分割協議書の作成時に全員がひとつのテーブルに着くことまでは要求されませんので、郵送でのやりとりでも構いませんが、とにかく相続人全員と連絡を取ることが基本となります。

では、行方不明の方が居る場合にはどうすれば良いのでしょう。この場合には、不在者の財産管理人という人を家庭裁判所に選んでもらわなくてはなりません。また、未成年の子供がいる場合、子と親とが相続人の場合、親が子の代理人として遺産分割協議をすることは、一方的に子供に不利益な協議がされる可能性があることから、法律上利益相反行為(民法第826条)と言われ、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任しなければなりません。

この手続きを欠くとやはり遺産分割は無効(無権代理)となるので、遺産分割協議書はあっても、法的には遺産分割協議は成立していない事となりトラブルが生じえます。遺産分割に相続人全員参加が必要ということは有名かと思われますが、不在者の財産管理人制度や利益相反の規制等はなかなか専門家でなくてはわからないポイントであると言えるでしょう。

遺産分割について気になる場合には、専門家に相談されることをお勧めいたします。まずは何より、戸籍を調べて、相続人に抜け落ちがないことが遺産分割の最大のポイントです。

次に、遺産分割の方法は、当事者が納得する形であれば、何らかの法律に反するものでない限りは、どのような形で分割しても有効です。民法第906条は「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と抽象的な「心構え」的なことを定めており、詳しいルールは決めていません。一般的には目的物を現物のままに分け合う現物分割を行うことが望ましいとされますが、家屋などの場合には現物分割は不可能です。

この場合には遺産を売却して代金を分割する換価分割という方法、一人が遺産を取得して他の相続人には代償金(代金)を渡す換価分割という3つの方法があります。遺産分割の進め方については全員が納得できる方法と現実味がある方法両方に配慮することが大切です。