令和3年末を期限としていた住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、令和7年までの4年間に延長することが決まりました。今後も住宅ローンを利用した住居の購入で、控除が受けられることに変わりはありませんが、令和4年から控除におけるさまざまな要件が改正されます。

この改正は控除率だけでなく、ローンの借入限度額や、制度の適用条件にも関係してくるので、令和4年以降に住宅ローン控除を受けるなら確認しておきたい内容です。本記事では、令和4年の住宅ローン控除の改正内容と控除額に関する影響について解説します。

令和4年の住宅ローン控除の改正内容

令和4年の住宅ローン控除の改正内容は? 控除額に関する影響について
(画像=udonsuki/stock.adobe.com)

住宅ローン控除は「住宅ローン減税」とも呼ばれており、正式には「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」という制度をいいます。本記事では「住宅ローン控除」で統一します。

住宅ローン控除は数年ごとに改正されており、平成31年には税制を改正しています。今回の改正内容を詳しく解説する前に、これまでの住宅ローン控除の内容と令和4年以降の改正内容の違いを表にまとめました。

令和4年以前令和4年以降
控除率1%0.7%
控除期間10年10年~13年
借入限度額(認定住宅)5,000万円4,500万円~5,000万円
所得要件3,000万円以下2,000万円以下

控除の適用条件

住宅で適用される控除の条件は、50平方メートル以上かつ床面積の2分の1が居住用であることに変わりはなく、40平方メートル以上50平方メートル未満でも受けられます。

今回の改正では納税者の所得要件が変化しており、これまで控除を受ける年度の所得が3,000万円以下の方が受けられる制度でしたが、今回の改正で所得2,000万円以下に引き下げられています。

控除率と控除期間

控除率は1%から0.7%に引き下げられ、控除期間は10年から13年に正式に延長されています。控除期間の延長は、消費税増税における措置により、以前にも控除期間が13年となるケースがありました。また、中古住宅を取得する場合は改正後も控除期間は10年です。

借入限度額

今回の改正でローンの借入限度額が新築住宅において細分化され、令和6年以降に限度額の引き下げが発表されています。下記の表に限度額をまとめました。

新築住宅の種類令和4年以前令和4年以降令和6年以降
認定住宅5,000万円5,000万円4,500万円
ZEH水準省エネ住宅4,000万円4,500万円3,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円4,000万円3,000万円
それ以外の住宅4,000万円3,000万円控除の対象外

これまで新築住宅は、認定住宅とそれ以外の住宅という分類で区別していましたが、ZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅の2つの分類を追加し、借入限度額がそれぞれ設定されました。上記のいずれにも該当しない新築住宅は、令和4年以降の限度額は3,000万円となり、令和5年までに建築確認がされていない場合は、控除が受けられなくなります。

中古住宅の種類令和4年以前令和4年以降令和6年以降
認定住宅・ZEH・省エネ3,000万円3,000万円3,000万円
それ以外の住宅2,000万円2,000万円2,000万円

一方で中古住宅のうち、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅は一律で3,000万円、それ以外の住宅は改正後から令和6年以降も含めて2,000万円となります。

住宅ローン控除が改正された背景

令和4年に住宅ローン控除が改正された背景には、現在の住宅ローンにおける金利が控除率を下回るケースが増えていることが挙げられます。金利が控除率を下回ると支払った利息以上に控除が受けられることになります。仮に0.4%で住宅ローンを組んだ場合、控除率が1%であればローン残高の0.6%にあたる益税が発生しているということです。

今回の控除率の引き下げは、金利が控除率を下回る状況を是正する目的があります。しかし、0.7%に控除率が引き下げられても益税が発生するケースがなくなったわけではないので、金利タイプや金融機関の選択によっては、これまで通り金利が控除率を下回ることも考えられます。

また、新築住宅の種別による借入限度額を細分化し、より省エネ性能の高い住宅が優遇されるようになりました。こちらは環境への配慮が求められる時代背景に合わせた改正といえるでしょう。

今回の改正で住宅ローン控除を受ける前に確認したいこと

今回の改正内容を受けて控除を受ける前に3つ確認したいことがあります。

・所得制限などの控除の要件
・住宅の分類について
・住宅ローン控除に関わる他の税制改正

それぞれ詳しく解説します。

所得制限などの控除の要件

所得要件が3,000万円以下から2,000万円以下になったことで、住宅ローン控除を受けられなくなった人が増加しているため、必ず確認しておきたいところです。また、40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅で控除を受ける場合の所得要件は1,000万円以下になるので気をつけましょう。

住宅の分類について

今回の改正で住宅の分類が認定住宅とそれ以外の住宅の2種類ではなく、環境への配慮などを理由に新築住宅が複数に分けられました。住宅の分類によって控除額も変わってくるので、住宅の種別を確認するようにしましょう。また、今後住宅を新築するなら住宅ローン控除も考慮して環境に配慮した住宅を建設するほうが控除による節約につながるかもしれません。

住宅ローン控除に関わる他の税制改正

住宅取得等資金に関わる贈与税非課税措置や、新築住宅に係る固定資産税の減額措置はどちらの制度も2年間の延長が決まり、内容も改正されています。贈与税の非課税措置は環境に配慮した良質な住宅であれば控除額は1,000万円、それ以外の住宅であれば500万円の贈与が直径親族に限り非課税で認められるため、住宅の購入時に利用したい制度です。控除を受けるなら住宅ローン控除に関わる他の税制改正の内容も確認しておきましょう。

住宅ローン控除の改正による控除額への影響

それでは、具体的に住宅ローン控除の改正による控除額への影響を考えていきます。控除額の計算をする上で、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅以外の新築住宅を例に挙げます。

上記の住宅は令和4年以前では借入限度額が4,000万円、控除率1%、控除期間10年となりますが、令和4年以降は借入限度額が3,000万円、控除率0.7%、控除期間13年という条件で制度が適用されます。この条件で最大で受けられる控除額を比較します。

4,000万円×1%=40万円(年間の控除額)
40万円×10年=400万円(最大で受けられる控除額)

3,000万円×0.7%=21万円(年間の控除額)
21万円×13年=273万円(最大で受けられる控除額)

よって、最大で受けられる控除額の差は「400万円-273万円=127万円」となります。すべての種類の住宅に関して同様の計算方法で、最大で受けられる控除額を比較したので参考にしてください。

新築住宅の種類令和4年以前令和4年以降令和6年以降
認定住宅500万円455万円410万円
ZEH水準省エネ住宅400万円410万円319万円
省エネ基準適合住宅400万円364万円273万円
それ以外の住宅400万円273万円控除の対象外
中古住宅の種類令和4年以前令和4年以降令和6年以降
認定住宅・ZEH・省エネ300万円210万円210万円
それ以外の住宅200万円140万円140万円

改正内容も踏まえた上で計画的に住宅を購入する

住宅ローン控除の内容は定期的に改正されており、現在の状況を踏まえた上で内容が更新されています。新たに住宅を購入して住宅ローン控除を受けるなら、内容を踏まえた上で計画的な住宅の購入が求められます。

特に今回の改正では環境に配慮した住宅が優遇されているため、制度を最大限に活用するなら環境対策が整った住宅を新築する必要があります。改正前と改正後で控除額に大きな差が生じているため、少しでも控除額を増やすために改正内容を正確に理解しましょう。

(提供:Incomepress



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