遺族厚生年金は、一般的に会社員の夫が死亡したときに妻が受け取れる年金として知られていますが、妻に限らず他の親族であっても受け取れる可能性があります。ただし、手続きをしなければ受け取れないので、万が一のためにいつから誰が受け取れるという受給条件を知っておくことが重要です。
本記事では、遺族厚生年金の概要や受給対象者と手続きから受け取るまでの流れ、関連する制度などについて解説します。
遺族厚生年金とは
遺族厚生年金とは、基本的には厚生年金に加入している被保険者が死亡した場合に、遺族が受給できる年金のことです。遺族厚生年金の受給要件となる条件は下記の通りになります。
- 厚生年金保険の被保険者期間中に死亡
- 1級・2級の障害厚生年金(共済年金)の被保険者の死亡
- 老齢厚生年金の受給権者の死亡
- 老齢厚生年金の受給資格を満たした対象者の死亡
- 被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡
上記の中で特筆すべき事項は、対象者が会社員から自営業になり厚生年金から国民年金に移行した場合も、5の条件を満たしていれば遺族厚生年金を遺族が受け取れるということです。
ただし、被保険者の保険料の支払い状況によっては条件を満たしていても遺族厚生年金が受け取れない場合もあるので、保険料の納付済期間が短いなど不安がある場合は福祉事務所などに相談することをおすすめします。
遺族厚生年金は誰がいつからいつまで受け取れる?
亡くなった親族が遺族厚生年金の対象者であることが分かったとき、問題になるのは誰がいつからいつまで受け取れるのかです。この疑問に答えるために、遺族厚生年金の受給対象者と手続きの流れについて解説します。
遺族厚生年金の受給対象者
遺族厚生年金の受給対象者は、必ずしも被保険者の妻だけではありません。複数の受給対象者の中で優先順位の高い人が受け取れる仕組みになっており、いつまで年金が受け取れるのかは対象者によって異なります。受給対象者の優先順位は以下の通りです。
順位 | 受給対象者 | 特筆事項 |
1位 | 妻 | 30歳未満で子がいない場合、受給期間は5年 |
2位 | 子供 | 18歳まで(障害等級1級または2級の場合は20歳まで) |
3位 | 夫 | 55歳以上であること受給開始は60歳から |
4位 | 父母 | 55歳以上であること受給開始は60歳から |
5位 | 孫 | 18歳まで(障害等級1級または2級の場合は20歳まで) |
6位 | 祖父母 | 55歳以上であること受給開始は60歳から |
遺族厚生年金で最も優先される受給対象者は妻であり、妻が年金を受け取る場合は子供に年金は支給されません。一方で、厚生年金の被保険者である配偶者を亡くした夫に条件を満たした子供がいる場合は、子供に年金の支給が優先されます。
夫は55歳以上で権利が発生し受給開始は60歳からになりますが、遺族基礎年金を受給できる場合は60歳より前から遺族厚生年金も受給可能です。なお、遺族基礎年金については後述します。
遺族厚生年金の手続きの流れ
遺族厚生年金の申請は権利の発生から5年が期限となっているため余裕はありますが、申請を忘れた場合や、そもそも受給対象者であることを知らない場合は、すべて請求主義であるという年金の特性上、受け取ることができません。手続きの流れについては、以下の通りです。
- 年金請求書を用意し記入する
- 年金請求書と共に戸籍謄本、住民票、収入証明書など必要書類を用意する
- 福祉事務所や年金相談センターに書類を提出する
- 年金証書が自宅に届き年金の支払いが開始する
年金請求書は、日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。なお、上記で示した必要書類はあくまでも一例であり、支給を受ける人によっても変わってきます。必要書類について詳しく知りたい場合は、申請する福祉事務所や年金相談センターに相談するのが確実です。
遺族厚生年金は被保険者が亡くなった翌月に申請可能ですが、手続きに時間がかかる可能性もあります。支給開始が手続きにより遅れた場合も、遅延した期間だけ年金がまとめて振り込まれます。
遺族厚生年金と合わせて支給される制度
遺族厚生年金を受給できる場合に合わせて支給を受けられる制度として、遺族基礎年金と中高齢寡婦加算/経過的寡婦加算があります。それぞれ詳しく解説します。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者と老齢基礎年金の受給権者が死亡した際に受給要件が発生する年金であり、子供のいる配偶者か子供に支給されます。遺族厚生年金の受給対象である場合も併給が可能です。
年間の支給額は78万900円と決まっており、子供のいる配偶者が受け取る場合は、子供の人数に対して1人目と2人目は22万4,700円、3人目以降は7万4,900円が加算される仕組みです。
中高齢寡婦加算/経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算は、40歳以上65歳未満で生計を同じくする子供がいない妻が遺族厚生年金に対して加算が受けられる制度です。65歳になるまで年間58万5,700円が支給されます。
また、遺族厚生年金と共に遺族基礎年金の支給を受けており、子供が18歳になり受給資格を失った場合も中高齢寡婦加算の支給の対象になります。
経過的寡婦加算は昭和31年以前に生まれた妻が65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した場合と、すでに中高齢寡婦加算を受けていて65歳に達したときに加算されます。
これは年齢によっては老齢基礎年金の支給額が少なくなることもあるので、老齢基礎年金と経過的寡婦加算を合わせて中高齢寡婦加算と同額になるように調整する制度です
遺族厚生年金にかかる税金
遺族厚生年金に関わらず、遺族に対して発生する年金は所得税・住民税はかからず非課税になります。
老齢厚生年金にはその年の収入に応じた所得税と住民税がかかりますが、遺族厚生年金の支給額は老齢厚生年金の支給額を計算した上でその4分の3が支給されます。遺族年金には税金がかからないので、老齢年金と勘違いすることがないようにしましょう。
年金は老後以外でも受け取れる可能性がある
年金は老後以外でも受給対象者となった場合は受け取ることが可能です。特に遺族年金は、万が一のことを考えて制度について理解を深めておくことが重要になります。遺族厚生年金は妻が受け取る年金という認識が強い傾向がありますが、子供や夫も条件を満たせば受け取れることは理解しておきましょう。
年金は請求主義であるため、知らなかったという理由は通らず、受給要件を満たしていても申請しなければ受給できません。受給権の失効には5年という長い猶予はありますが、できる限り早く申請したいところです。
(提供:Incomepress )
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