不動産投資も投資である以上、失敗したり損失が出たりするリスクは常にあります。オーナーによっては失敗や損失に直面したときに冷静な判断ができず、物件を安売りしてしまったり不要な追加投資をしてしまったりすることがあるかもしれません。

本記事では、不動産投資において損失が出る要因を3つ述べたうえで、オーナーとして損失に対処する方法を4つ解説します。

不動産投資で損失が出る3つの要因

売る?持ち続ける?不動産投資で損失が出ているときの対処法4選
(画像=SERSOLL/stock.adobe.com)

不動産投資において損失が出る要因になりやすいのは以下の3つです。

・空室期間の長期化
・家賃や物件価格の下落
・コストの増加

不動産投資の主な収益ポイントである家賃収入と売却益の中で、コストを賄うことができなくなった場合に損失が出るという構造をまず認識しておきましょう。

空室期間の長期化

空室期間の長期化とは、入居者が長期間見つからず、空室が続いてしまう状態のことです。空室期間が長期化するとその部屋からの家賃収入が途絶えてしまうため、家賃収入の中から物件運営にかかるコストを賄いきれずに損失が出てしまう可能性があります。

空室期間が長期化する要因には主に以下のようなものがあります。

・募集条件(家賃、礼金)が相場より高い
・そのエリア、その間取りへの賃貸需要が少ない
・閑散期(7~8月頃、11~12月頃)で部屋探しをする人が少ない
・仲介業者への訴求が不十分(周知活動、広告費など)

入居者募集活動においては、周辺相場にマッチした募集条件であることを前提としたうえで、部屋探しをするお客様のみならず実際に物件を紹介する仲介業者にも訴求をすることが重要です。

家賃や物件価格の下落

家賃や物件価格は、築年数の経過とともに下落していくのが一般的です。住宅という建物は、経年とともに古くなって劣化したり、周辺に新築物件が供給されたりすると、その物件の競争優位性が相対的に落ちるためです。

家賃収入が下落すると毎月の収支の悪化につながり、物件価格が下落すると売却益が得られない可能性があります。

特に新築物件の場合、新築でなくなった時点(誰かが居住を開始した時点)で新築時の建物価格から約2割も価格が下落するといわれることもあり、初期における物件価格の下落幅が大きくなる可能性があるという点は認識しておくといいでしょう。

コストの増加

不動産投資では物件の保有期間中に様々なコストが発生します。コストが増加すると、家賃収入が同じ水準でも賃貸経営の収支が悪化してしまう可能性もあるでしょう。

物件の保有期間中に発生するコストは以下の通りです。

固定コスト※1変動コスト※2
・賃貸管理委託料
・税金(固定資産税および都市計画税)
・損害保険料
・管理費および修繕積立金(区分マンションの場合)
・ローン返済(融資を受けている場合)
・修繕費
・入居者募集コスト(広告費など)
※1固定コスト:毎月ないし数年に一度の頻度で定期的に発生するコスト
※2変動コスト:突発的かつ不定期に発生するコスト

いずれのコストも以下の表のような要因によって値上がりする可能性があり、収支の悪化につながることがあるという点を認識しておきましょう。

分類コスト値上がり要因
固定費賃貸管理委託料賃貸管理会社の決定
税金課税標準額の評価替え(3年に一度)
損害保険料損害保険会社の決定
管理費および修繕積立金管理組合の決定(大規模修繕に向けた資金プール)
ローン返済金利上昇(変動金利の場合)
変動費修繕費修繕箇所および内容によって
入居者募集コスト市況に応じて

変動費はいつ・どの程度のコストが発生するかの予測が困難であるため、当初の想定よりもコストが増加する可能性が特に高いという点に注意が必要です。

不動産投資で損失が出ているときの対処法4選

不動産投資で損失が出ている場合の対処法は以下の4つです。

・広告費を増やす
・物件のバリューアップをする
・固定コストを見直す
・損切り(売却)する

損失の原因に応じて適切な対処法をとることを考えましょう。

広告費を増やす

広告費とは、入居者募集にかかる営業広告費という名目で、オーナーなどの貸主が、自分の物件に入居者を見つけた仲介業者に対して支払うインセンティブのような性質を持つ費用です。

空室が長期化している場合、広告費を増やすことが有効な対処法となるかもしれません。広告費は仲介業者の大きな収入源の一つであるため、広告費が高い物件の方が仲介業者の目にとまりやすくなるためです。

周辺の競合物件が広告費2ヵ月分で募集している中で、広告費1ヵ月分や0.5ヵ月分の物件は、仲介業者にとってはメリットが少なく感じられるでしょう。周辺の競合物件と比較して自分の物件の広告費が低い場合は、広告費を増やすことでより積極的に仲介業者に営業してもらえるようになるかもしれません。

ただし、広告費の増額はオーナーにとってのコストの増加であるため、単純に積み増すのではなく周辺相場とのバランスやコストパフォーマンスも加味しながら慎重に行うのが賢明といえます。

物件のバリューアップをする

物件のバリューアップとは、大規模修繕やリノベーションのことです。バリューアップを行うことで、空室の長期化や家賃・物件価格の下落への対策になる可能性があります。

老朽化した建物や設備を適切にメンテナンス・刷新することで、お客様や仲介業者がその物件を見た時の印象が良くなったり、賃貸住宅としての価値の下落を緩めたりする効果が期待できるためです。

管理が行き届いており築年数が経過しても建物や設備の状態が良い物件は、家賃を大きく下げなくてもお客様や仲介業者から選んでもらいやすく、物件価格も維持しやすくなるでしょう。

外壁塗装の塗り直しやエアコン・給湯器の交換といった大掛かりな修繕はおよそ10年ないし18年程度に一度の頻度が目安とされているため、計画的に資金をプールしておくことが大切です。室内の壁紙や床材、水回りなども清潔感を保てるように定期的に張り替えや清掃を行うようにしましょう。

固定コストを見直す

固定コストは家賃収入の有無に関わらず発生するものであるため、可能な範囲で削減することで合理的に収支を改善することができます。

物件の保有期間中における固定コストの中で、見直しによって削減できる可能性があるコストとその削減方法は以下の表の通りです。

コスト削減方法
賃貸管理委託料・管理プランの変更
・賃貸管理会社の変更
損害保険料不要な保険、特約の解約
ローン返済低金利な金融機関への借り換え

いずれのコスト削減についても、必要な範囲で行うという視点も持っておきましょう。コスト削減ばかりを考えるあまり、必要なサービスや保険まで解約してしまうリスクもあるため、バランスを考えることが重要です。

損切り(売却)する

広告費を増やす・物件のバリューアップをする・固定コストを見直すという対処法のいずれによっても収支の改善が著しく困難であることが見込まれる場合、物件を売却するというのも選択肢の一つでしょう。

収支の改善が望めない物件を所有し続けることで損失額が膨らむ可能性もあり、売却損が出たとしても売却をした方が合理的といえることもあるためです。

具体的には、法人拠点や大学のキャンパスの移転などによりそのエリアにおける賃貸需要の回復が見込めない場合、物件運営に必要な大規模修繕やリノベーションに巨額の費用がかかり資金調達の目処が立たない場合などは物件を手放すのが合理的といえるかもしれません。

とり得るあらゆる手段を検討したうえで収支改善が見込めない状況の場合、損切りした方がトータルの損失額を抑えられる可能性があります。

まずは損失の原因を究明することが重要

不動産投資をしていれば、築年数の経過やマーケットの変化、競合物件の出現などによって自分の物件の入居者募集活動がうまくいかなくなったり、家賃が下落したりして損失が出ることもあるでしょう。損失が出ているときに重要なことは、冷静に損失の原因を究明することです。

原因を究明することで適切な対処法を考えることができるため、焦って不用意な投資判断をしないように客観的に状況を把握することがオーナーには求められます。

(提供:Incomepress



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