この記事は2022年5月6日に「月刊暗号資産」で公開された「米ハイテク株に大量売り 相関関係にあるビットコインなど下落で全面安に」を一部編集し、転載したものです。


1ドル=90円に向け、ドル円相場は下落トレンドに
(画像=PIXTA)

4日、FOMC(米連邦公開市場委員会)を終えたFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が会見で、0.75%の利上げに関して「積極的検討はない」と発言したことで、大幅利上げへの懸念が薄れ、ダウ平均が今年最大の上げ幅となる932ドル高となった。

暗号資産(仮想通貨)市場においてもこの発言を受け上昇する銘柄が多く、ビットコイン(BTC)も5%ほど上昇し、4万ドル(約516万円)に迫る推移を見せた。

しかし、5日になると状況は一転。米株式市場が開けると、米長期金利が急伸するのと同時に、米金融引き締めへの警戒とインフレへの対応が遅れるとの見方が広がり、割高感が強まったハイテク大手、グロース株を中心に売りが先行した。パウエル議長の発言でFRBの高インフレへの対処法が腐心すると判断された格好だ。

大幅上昇から一夜明け、リセッション(景気後退)も起こり得ると判断した投資家、トレーダーが買い方から売り方に転じ、株式をはじめ債権、暗号資産に大量の売りが出た。

5日の取引では、ダウ平均が2020年6月以来の大幅下げを記録し、前日終値比1,063.09ドル安の3万2,997ドルで終了した。S&P500種株価指数は終値で3.6%安、ハイテク株中心のナスダック100指数は5.1%安となった。個別銘柄ではテスラが8.3%安、Amazonが7.6%安、エヌビディアが7.3%安、Appleが5.6%安となっている。

影響は暗号資産市場にも波及し、ビットコインは一時前日比8%ほどのマイナスを記録。一時3万5,000ドル(約456万円)台まで下落した。

下落の原因は投機筋の売りと見られている。インフレ動向の改善に基づかない相場になっており、金融市場は乱高下が激しくなっている。

また、この下落時に、テラ(LUNA)の非営利組織LFG(Luna Foudation Guard)は15億ドル(約1,960億円)相当のビットコインを買い増ししたことを公表した。結果的にLFGによる買い増しが下落に歯止めを掛けた形だ。

3万7863BTCを購入したことで、同組織の累計保有量は8万394BTCとなった。Bit Info Chartsによると、LFGのビットコイン保有量は、暗号資産取引所ウォレットを含むクジラの中で7位になるという。

今回の買い増しにより保有量はテスラを超え、マイクロストラテジーに次ぐ規模となったという。

金融市場は金融引き締めがリスク資産全体に与える影響をまだ消化しきれていないという見方もあり、暗号資産市場も相関関係から下落する可能性は捨てきれない。

日本時間6日夜には米雇用統計の発表がある。コロナ禍で悪化した失業率がコロナ以前の水準にまで回復する見込みが立てば、市場にもポジティブな影響をもたらす可能性があるだろう。

こうした状況を受け、FRBがどのような行動を取るのか注視する必要がある。(提供:月刊暗号資産