本記事は、長谷川建一氏(著)、元榮太一郎氏(監修)の著書『世界の富裕層に学ぶ海外投資の教科書』(扶桑社)の中から一部を抜粋・編集しています

不透明な時代こそ「分散投資」による「資産防衛」を

分散投資
(画像=PIXTA)

日本の富裕層の資産の持ち方(運用の仕方)も再考する必要があります。

日本の富裕層の資産構成は、「金融資産」、「不動産」、「実物」など一見、分散されているように思えます。しかし、ほとんどの資産は「日本国内の資産」であるという特徴が際立っています。これはある意味、「集中リスク」が過大であることに気づいている方は、多くありません。

21世紀に入り、世界の流れは一段と速くなり、私たちを取り巻く経済・金融・政治・軍事環境は激動の中にあると言っても過言ではありません。こうした環境下で、日本の富裕層が気をつけるべきことは「過度の集中リスクを回避すること」でしょう。この課題の最も単純な解決方法は、「分散投資」に他なりません。

筆者も日本人であり、日本の未来はあると信じていますが、それでも様々なリスクに晒され、想定外のことが起こる可能性は十分にあるということを前提に行動しておく“時は今”なのではないでしょうか?

2020年の新型コロナウイルスの世界的感染拡大(パンデミック)は誰も予想できませんでした。そして、コロナ禍からの景気回復の過程で、過去20年ほど意識されることもなかったインフレーションの進行にも直面するようになりました

ウクライナでは、考えられなかったロシアによる侵攻という暴挙まで起こってしまっています。人類はもっと理性的で合理的と考えられていましたが、そうでもないとすれば、不測の事態に備えておくことは必須でしょう。事が起こってからでは手遅れです。

日本だけで分散投資は可能か

分散投資では「通貨の分散」や「投資対象の分散」を検討する必要があり、日本国内でも実行可能なものもあります。しかし、日本の金融機関を通じて外貨預金をしても、通貨の変動リスクに対応する手段とはなりますが、例えば政府が何らかの理由で海外送金を禁止するなどの規制を実施した場合には、外貨での送金も併せて規制されることが想定されます。そうなると、外貨であっても、他国へ送金して国外で使用することはできなくなります。

実際、デフォルトを起こしたことのある国の例を見てみると、資本流出を防ぐ措置を取る場合には、自国通貨のみならず、外国通貨の送金も含めて一切の国外送金が禁止されています。こうした例からは、やはり国外に一定の資産を持っておいたほうがよいと言えるでしょう。

なお、2018年2月に日本の金融庁は「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」を出しました。これを踏まえて、各金融機関では、過去の取引状況、送金目的や送金内容等について確認することが義務づけられています。

近ごろではこれが行き過ぎて、日本の銀行口座から、外国にある自己名義の銀行口座や証券口座への送金ですら、「マネー・ローンダリング防止」を理由に拒絶する金融機関もあるようです。しかし、これこそ日本の金融機関の事なかれ主義の最たるもので、自らの財産をどこでどのように運用するかの自由を損なう悪弊です。

海外にある、より広い「投資のユニバース」

日本国内と海外のマネーセンターにおける資産の運用で、最大の特徴は「投資のユニバース」が異なることです。「投資のユニバース」とは、目的に対して運用していくために選んだ「投資商品の集合体」のことをいいます。

例えば海外から車を輸入しようとすると日本の車検を通さないといけないのと同じで、海外で販売している金融商品でも、日本で販売しようと思ったら日本の金融規制に合わせて日本語化したり、規制に沿った変更が必要になったりします。それだけコストはかさみ、同じ商品でも同じリターンは望めません。逆にいえば、それだけ日本にはない魅力的な金融商品を海外では取り扱っている場合があるということです。

実際、海外に目を移せば、オルタナティブ投資やIPO投資、プライベート・エクイティ投資、(国別)フロンティア投資など、非常に広い投資機会を得ることができます。オーソドックスな金融商品である「保険」も、富裕層のニーズによっては高い効果を得られる金融商品として利用できます。結果として、広範囲の「投資のユニバース」を得ることができると言えるでしょう。

具体的には、「15年で4.8倍になる貯蓄型保険」や「実質ただ同然で掛けられる12億円の死亡保障」など、日本では販売していない有利な金融商品を海外では購入できるのです。

世界の富裕層に学ぶ海外投資の教科書
長谷川建一(はせがわ・けんいち)
Wells Global Asset Management Limited, CEO。国際金融ストラテジスト〈在香港〉。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)。シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG Bank)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009年からは国際部門に異動しアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、MUFG Bankを離れ、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得し、最高経営責任者として、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。世界水準の投資機会や投資戦略、資産防衛に精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。 ブログ「HASEKENHK.com」
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