不動産投資をする理由の一つとして「家賃収入という不労所得を得るため」と考える人は多いのではないだろうか。しかし実際のところ家賃収入は完全な不労所得ではない。なぜなら大家には仕事があり、家賃収入はその対価ともいえるからだ。本記事では、不動産投資をして大家になった後の7つの仕事と内容を解説し、大家に向いている人の特徴についても紹介する。

家賃収入は完全な不労所得ではない

大家にはどんな仕事がある?7つの仕事とその内容を紹介
(画像=Kzenon/stock.adobe.com)

「不労所得」とは、働かずに得られる所得のことで、直接的な労働対価としての所得(給与や業務委託報酬等)以外の所得を指す。家賃収入は、以下2つの理由から不労所得といえる要素はあるが、完全な不労所得とまではいえない。

  • 入居者がいる限り半自動的に発生する
  • 大家にはオーナーおよび貸主としての仕事がある

家賃収入は、自分の物件に入居者が住んでいる限り発生し続けるため、直接的な労働の対価ではない。一方、大家にはオーナーおよび貸主としての仕事が継続的にあるため、完全に労働をしなくていいわけではない。これらを踏まえると「大家になれば全く仕事をせずに収入を得続けられる」という認識を持つのは危険だ。

大家にはどんな仕事がある?7つの仕事とその内容を紹介

大家がオーナーおよび貸主として行わなければならない仕事は、主に以下の7つだ。

  • 損害保険・特約への加入および更新
  • 入居者からの問い合わせ対応
  • 建物および設備のメンテナンス・修繕
  • 入退去関連の一連業務
  • 入居者募集活動
  • 確定申告
  • 納税

いずれも毎日決められた時間・場所・方法で行うわけではないが、定期的かつ継続的に行う必要のある仕事だ。

損害保険・特約への加入および更新

不動産投資をするにあたっては、自然災害や二次災害などによる建物の損傷・倒壊に備えて損害保険(火災保険や地震保険、特約など)に加入するのが一般的だ。保険会社やプラン、特約の有無を選定する際の意思決定は、大家自身で行う必要がある。また契約や更新における事務手続きも同様に大家が行う仕事の一つだ。

ただし契約期間が満了すると自動更新される保険商品もあるため、頻繁に手続きが必要なわけではない。しかし保険商品の選定と加入において、大家としての仕事が発生する。

入居者への問い合わせ対応

入居者からの問い合わせ対応とは、具体的に以下のような仕事を指す。

  • 騒音やマナーなどについてのクレーム対応
  • 設備不具合についての問い合わせ対応
  • 駐輪場や駐車場等の契約手続きおよび使用状況の管理

入居者からの問い合わせは、24時間365日いつ来るかわからない。また内容によっては、至急対応が必要であったり入居者が激昂していたりする場合もあるだろう。大家として快適な住空間を入居者に提供することが求められるため、迅速かつ適切な対応が必要だ。

建物および設備のメンテナンス・修繕

建物および設備のメンテナンス・修繕とは、物件全体(エントランスや廊下など)および物件内にある設備の清掃や点検、不具合箇所の修繕などのことだ。エントランスや廊下にゴミや汚れがあったり設備が故障したままになっていたりすると住環境の質の低下につながるため、定期的に物件を訪問してメンテナンスをしよう。

エレベーターなどの一部の設備には、定期的に点検を行うことが法律で義務付けられているものもあるため、漏れがないように注意が必要だ。

入退去関連の一連業務

入退去関連の一連業務とは、既存入居者の退去から次の入居者(新規入居者)の入居までの一連の業務を指し以下の表のような業務が該当する。

退去者新規入居者
・解約受付、解約日の確定
・退去時立ち会い
・敷金精算
・原状回復工事の手配
・内見時対応(鍵貸し出しなど)
・入居申込受付
・入居審査
・賃貸借契約の締結および書類回収
・初期費用の入金確認
・鍵の引き渡し

敷金精算では、費用負担について入居者と交渉をしたり新規入居者と賃貸借契約を締結する際には契約書を作成したりすることが求められる。そのため各業務において一定の専門知識が必要だ。

入居者募集活動

入居者募集活動とは、空室住戸に新規入居者を見つける活動のことで、以下のような業務が該当する。

  • 募集条件(家賃、礼金、広告料など)の設定
  • 仲介業者への営業および周知活動
  • 反響状況を踏まえた募集条件の変更

空室期間を長期化させないよう周辺相場に合わせて適切な募集条件を設定したり、物件情報を広く周知させたりすることは重要だ。またお客様からの反応に応じて募集条件を柔軟に変更することは、大家の最も重要な仕事の一つといえるだろう。

確定申告

確定申告とは、1年間(その年の1月1日~12月31日まで)に生じた所得の金額および所得税などの金額を集計・確定させて管轄の税務署へ申告する手続きを指す。大家は、不動産賃貸業を営む事業主に該当するため、給与所得者であっても毎年確定申告をしなければならない。確定申告は、所得税法によると所得を得た年の翌年2月16日~3月15日までの間に行うのが原則だ。

期間内に行っていない場合は、無申告加算税が課されることがあるため、注意したい。
※無申告加算税の税率は、納付すべき税額の50万円までは15%、50万円を超える部分は20%

納税

納税とは、物件の購入時・保有期間中・売却時のそれぞれにおいて発生する税金を納めることを指す。不動産投資における主な税金をまとめると以下の表の通りだ。

購入時保有期間中売却時
・不動産取得税
・印紙税
・登録免許税
・固定資産税
・都市計画税
・所得税
・住民税
・所得税
・住民税

購入時・売却時の税金は、それぞれの時点でかかる単発のものである一方、保有期間中の税金は毎年発生する。そのため毎年の固定費として予算計上しておこう。

専門家にアウトソーシングすれば経営判断に専念できる

上述したように大家には、オーナーおよび貸主としてのさまざまな仕事がある。しかし大部分は、パートナーとなる専門家へアウトソーシングすることが可能だ。不動産投資の実務では、専門知識に基づいて迅速かつ適切な対処が求められることが多い。そのためコストを割いても専門家にアウトソーシングするのが合理的といえるだろう。

賃貸管理会社へのアウトソーシング

以下のような現場実務は、賃貸管理会社にアウトソーシングすることができる。

  • 入居者からの問い合わせ対応
  • 建物および設備のメンテナンス・修繕
  • 入退去関連の一連業務
  • 入居者募集活動

物件の管理をアウトソーシングする際の委託料は、家賃収入の5%程度が一般的な相場だ。現場実務を賃貸管理会社に委託した場合、大家は現場からの報告を受けて経営判断をすることに専念できる。

税理士へのアウトソーシング

税務に関する以下のような仕事は、税理士にアウトソーシングすることができる。

  • 確定申告
  • その他税務一般に関する相談

確定申告では、経費として計上できる支出を確認したり減価償却費の計算をしたりするなど高度な税務知識が求められる。納税に申告ミスや遅滞があると追加課税されることもあるため、税理士に一任するのも選択肢の一つだ。

大家には賃貸経営のチームマネジメント力が求められる

大家の仕事は、入居者や賃貸仲介業者、工事業者などの利害関係者を取り巻いて賃貸経営をする力が求められる。複数の利害関係者と信頼関係を築き自分の物件を運営する一つのチームとしてマネジメントする力がある人は、大家に向いているだろう。大家には、賃貸管理会社や税理士などの専門家に仕事を任せ賃貸経営を成功させるためにうまく経費を使うバランス感覚も必要だ。

(提供:manabu不動産投資

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