コロナ禍で在宅ワークが普及し、人々のライフスタイルに大きな変化がありました。仕事でもプライベートでも、家で過ごす時間が増えたことによって、賃貸住宅に求められるものや人気の設備はどう変わったのでしょうか。

賃貸経営をするオーナーは中長期的なトレンドを見据えて、設備の導入や更新を行なっていく必要があります。本記事では、在宅ワークの普及によって賃貸住宅の人気設備がコロナ前後(2019年・2021年)でどう変わったのかを解説します。

人気設備ランキングベスト5(2019年)

コロナ前後で比較!在宅ワークの普及で人気の設備はどう変わった?
(画像=thanmano/stock.adobe.com)

全国賃貸住宅新聞社が発表した、コロナ前の2019年における入居者に人気の設備ランキング(この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる)のベスト5は単身・ファミリー世帯でそれぞれ以下のようになっています。

【単身世帯】

今回順位設備前回順位
1位インターネット無料1位
2位エントランスのオートロック3位
3位宅配ボックス2位
4位浴室換気乾燥機5位
5位ホームセキュリティ8位

【ファミリー世帯】

今回順位設備前回順位
1位インターネット無料1位
2位追いだき機能2位
3位エントランスのオートロック3位
4位ホームセキュリティ6位
5位システムキッチン5位

単身・ファミリー世帯ともに「インターネット無料」が第1位となっており、4年連続(2016〜2019年)で首位をキープしているとのことです。

全国賃貸住宅新聞社の分析によれば、「インターネット回線は、連絡手段に加え、仕事や読書、エンターテインメントを楽しんだりと、日常生活に欠かせない存在だ」と述べられています。

人気設備ランキングベスト5(2021年)

一方、コロナ後の2021年における入居者に人気の設備ランキング(この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる)のベスト5は単身・ファミリー世帯でそれぞれ以下のようになっています。

【単身世帯】

今回順位設備前回順位
1位インターネット無料1位
2位宅配ボックス3位
3位エントランスのオートロック2位
4位高速インターネット
5位浴室換気乾燥機4位

【ファミリー世帯】

今回順位設備前回順位
1位インターネット無料1位
2位エントランスのオートロック3位
3位宅配ボックス2位
4位システムキッチン5位
5位追いだき機能4位

2019年の時点で単身・ファミリー世帯ともに第1位であった「インターネット無料」は2020年も第1位であったため、2016年から6年連続で首位を堅持しているということになります。

本アンケートに回答した管理会社からは、インターネット無料が導入されている物件は、周辺相場よりも家賃を3,000円ほど高く設定できるという声も上がっており、インターネットが無料で使えることの優位性が分かります。

2021年に初めて「高速インターネット」という項目がランクインしており、単身世帯では第4位、ファミリー世帯では第8位という結果でした。

ネットが無料であることだけではなく、高速であることも重視されるようになったという点はコロナ禍で生じた新たなトレンドの一つといえるでしょう。

コロナ禍でニーズが増えた設備とは?

全国賃貸住宅新聞社が行った「コロナ禍(20年4月以降)でニーズが増えた設備」というアンケート調査で最も多かった回答のベスト5は以下の通りです。

順位設備
1位インターネット無料
2位高速インターネット
3位宅配ボックス
4位テレビモニター付きインターホン
5位遮音性の高い窓

上記ランキングにおいて特に注目に値するのは、「高速インターネット」および「遮音性の高い窓」でしょう。いずれもコロナ前の2019年の調査では単身・ファミリー世帯ともにランクインしておらず、コロナ禍において注目されるようになった設備であるといえます。

在宅ワークやリモート授業の急速な普及により、自宅でミーティングや授業に参加したり、仕事をしたりすることが定着したことから、ネット環境の質や遮音性が重視される傾向が強まったといえそうです。

交通量が多い道路や線路に面した物件を所有しているオーナーは特に、窓の遮音性を意識して設備のリニューアルを検討するのがいいかもしれません。

セキュリティの点からは、オートロックやホームセキュリティに加えてテレビモニター付きインターホンのニーズが増えています。自宅で過ごす時間が増えたことで来訪者を直接対応する可能性が高くなったことから、よりセキュリティが重視されるようになったという理由が考えられます。

セキュリティの問題は、女性の入居者が多い物件やファミリー向けの物件を所有しているオーナーにとって特に関係のあるテーマといえそうです。

コロナ前後で人気の設備はどう変わった?

人気の設備について、コロナ前後の順位を改めて表で比較してみます。

【単身世帯】

2019年設備2021年設備
1位インターネット無料1位インターネット無料
2位エントランスのオートロック2位宅配ボックス
3位宅配ボックス3位エントランスのオートロック
4位浴室換気乾燥機4位高速インターネット
5位ホームセキュリティ5位浴室換気乾燥機

【ファミリー世帯】

2019年設備2021年設備
1位インターネット無料1位インターネット無料
2位追いだき機能2位エントランスのオートロック
3位エントランスのオートロック3位宅配ボックス
4位ホームセキュリティ4位システムキッチン
5位システムキッチン5位追いだき機能

結論として、ベスト5に大きな変化は起きていないといえます。

インターネット無料がいずれも首位であることや、単身世帯は宅配ボックス・浴室換気乾燥機、ファミリー世帯はシステムキッチン・追いだき機能を重視する傾向があることなどは、コロナ前後で大きく変化していないことが読み取れます。

コロナ前後で人々の生活様式に大きな変化があった中でも、普遍的にニーズの高い設備は単身・ファミリー世帯のそれぞれで存在するということです。

一方で、新たなトレンドが生じたというのも事実です。ネット環境の質に重きを置く世帯が単身を中心に増加しています。インターネット無料を導入していても、速度が遅いプランの場合は入居者からのニーズに応えきれないことも想定されるため、単身者向け物件では特に通信速度にも配慮するのが得策といえそうです。

設備の導入時はコストパフォーマンスの視点を常に持とう

入居者からの人気が高い設備はコロナ前後で大きくは変化していませんが、働き方や自宅で過ごす時間の長さなどの変化によって新しいニーズが生まれています。随時時代の流れを読みながらより入居者に求められやすい設備を導入していくというのは、賃貸経営をするオーナーの非常に重要な仕事の一つです。

設備の導入を検討するにあたっては、「コストパフォーマンスに見合うか」という視点を常に持つようにしましょう。設備の導入にはコストがかかることから、以下2つの目的を達成できない場合にはコストをかけることに賃貸経営上のメリットがないといっても過言ではないためです。

・空室リスクを下げる
・家賃を上げる

空室率が高い原因が設備の導入状況ではない場合や設備を導入しても家賃上昇が見込めない場合などは、設備を導入するコストに見合うリターンを得られないこともあるでしょう。

周辺の競合物件の設備状況と空室率および家賃の関係性を吟味して、「その物件においてその設備を導入する必要性が本当にあるか」ということを経営者としての目線で判断することが重要です。

(提供:Incomepress



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