この記事は2022年6月16日に「月刊暗号資産」で公開された「ECB理事、デジタルユーロの発行上限を1兆5000億ユーロと発言」を一部編集し、転載したものです。
欧州中央銀行(ECB)のファビオ・パネッタ(Fabio Panetta)理事は15日、欧州議会の経済通貨委員会に出席し、デジタルユーロの開発状況について報告をした。
デジタルユーロは昨年7月14日に準備プロジェクトが始動し、調査を開始している。パネッタ氏は、4年以内に中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタルユーロ発行の準備が整うと楽観的な見通しを示した。
その際、同氏は「デシタルユーロが発行されれば、上限として1兆5,000億ユーロ(約210兆円)になるだろう」と報告。さらに、「デジタルユーロの総額を1兆から1兆5,000億ユーロに抑えることで、金融システムと金融政策に対する悪影響を回避できる」と述べた。
ユーロ圏の人口は現在約3億4,000万人。そのため、1人当たり、約3,000から4,000デジタルユーロを保有することが可能となるという。
パネッタ氏は昨年、欧州委員会が行ったコンサルテーションについても言及し、「デジタルユーロ発行に積極的ではない」という回答が大半だったと明かした。デジタルユーロに関しては「複雑」ゆえ、理解が追いついていないと指摘する。また、「私たちの調査は市民を代表する人々に基づいてはいない。回答者の今回の答えは非常にアンバランスだ」と述べ、引き続き理解度の向上に努めていくと述べた。
パネッタ氏の発言後、ECBはデジタルユーロに関する最新レポートを公表した。
レポートではデジタルユーロについて、「現金に取って代わるものではなく、むしろ補完するものだ」と説明されている。加えて、新しい支払方法の選択肢の1つであり、決済の簡易化につながるものであるが、最大の問題は限度額と段階的な増額に関する点だと述べられている。
また、レポート内においてもデシタルユーロの発行上限を1兆〜1兆5,000億ユーロ間に維持すれば金融システムと金融政策への悪影響を回避できると語られている。(提供:月刊暗号資産)