中小規模の防衛関連企業も各地に存在
もっとも、上記の企業は国内軍需産業に関わる巨大企業ばかりだ。こうした企業では防衛関連以外の事業の売り上げも莫大であることから、仮に国内の防衛市場が拡大しても、その影響は企業全体から見ればそれほど大きくならないだろう。
逆に、防衛産業に関わっていながらも事業規模が小さな会社は、市場拡大によるプラスの影響が大きい。そこで、今度は中小規模で防衛に関連する上場企業を見てみる。
石川県白山市に本社を置く「石川製作所」は、ダンボールを作る機械を製造する半面、戦時中に海軍兵器を製造していた経緯から、今も自衛隊向けに機雷を納入している。東京都あきる野市の「細谷火工」は自衛隊向けに照明弾や発煙筒を製造している。
これらの企業は、ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射など「有事」を臭わせる事態が発生すると、株価が大きく上下する傾向がある。なお、この2社は東証スタンダードに上場している。
東京都千代田区に本社がある「興研」は防塵・防毒マスク製造大手で、防衛省向けに独占供給している。「新明和工業」は兵庫県宝塚市に本社を置き、防衛省向けに救難飛行艇と部品を供給している。なお、興研は東証スタンダード、新明和工業は東証プライムに上場している。
防衛関連企業にとっては追い風か
このように、軍需産業に関連する企業は国内各地に存在しており、非常に裾野の広い業界と言える。
ロシアがウクライナに侵攻して以来、将来的に「中国が台湾に攻め入る」という事態を警戒する声が日本国内でも強くなっている。日本の周辺地域でそうした動きが活発になってくれば、さらに国内の軍需市場は拡大の道を歩む可能性もある。
それは、一般的にあまり歓迎するべき局面ではないだろうが、こと防衛関連企業にとっては業容拡大に向けた追い風と言うこともできる。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)