米国とは真逆のアプローチをとる中国
これに対して中国は、他国の内政に一切介入せず、新興国・途上国へのインフラ融資や市場開放にも積極的だ。
古くは韓国やインド、スリランカなどと締結した特恵貿易協定「アジア太平洋貿易協定(APTA、1976年)」から、ASEAN(インドネシアやマレーシア、フィリピン、ベトナムなどの10カ国から成る東南アジア諸国連合)が参加する「地域的な包括的経済連携協定(RCEP、2022年1月)」まで、合計20件の自由貿易協定や関税同盟、特恵貿易協定を発効・署名している。チリ、ペルー、コスタリカ、カンボジアなどとは、二カ国間自由貿易協定も結んでいる。
さらに、中国には巨大経済圏構想「一帯一路イニシアティブ(BRI)」という強力な武器もある。2022年3月の時点で世界147の国と地域が参加しており、そのうち約半分は低~低中所得国だ。
中国は「新たな経済発展の機会を生み出し、地政学的安定に繋げる」という名目の元、途上国のインフラ整備などに巨額の資金を提供して来た。BRI参加国に投資・融資した金額は、2021年だけでも総額595億ドル(約8兆345億円)に上る。
その一方で、一帯一路の資金提供については全貌が明らかになるにつれ、国際批判も高まっている。その事業費の大半が中国金融機関からの高金利融資によるもので、多数の途上国が巨額の負債に喘いでいるのだ。
国際社会の二極化で選択迫られる新興国・途上国
IPEFへの参加に踏み切ったインドなどの一部の国が脱中国依存を図っている一方で、中国の影響力が高まっている国もあることは事実である。
国際社会の二極化で選択を迫られている新興国・途上国。「アメリカ第一主義」が政治信念に沁みついた経済大国の米国より、新興国の経済的成功例であり、狡猾だが何らかの利益をもたらすと期待させてくれる中国に流れるという構図は、今後さらに鮮明になっていくだろう。
文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)