日本の不動産業界は海外と異なり、独自の市場を形成しているといわれてきた。営業の属人化やIT化の遅れによる生産性の低さなど、市場の成長に対し、多くの課題を指摘されている。そこで近年注目されているのが、「不動産テック」と呼ばれるITを利用した不動産市場の活性化である。本稿では不動産業界の課題を不動産テックでどのように解決できるのか、どのような活用領域があるのかなどを解説する。

目次

  1. 不動産投資テックとは何か
  2. 不動産投資テックのカオスマップ
  3. 不動産テックの12種類のサービスとその特徴
  4. 不動産テックを活用する3つのメリットと課題
  5. まとめ:拡大する不動産テック。人の行うべき業務との組み合わせが投資のカギに

不動産投資テックとは何か

不動産テックとは? 12種類のサービスと活用する3つのメリット
(画像=Tierney/stock.adobe.com)

不動産テックとは、「不動産×テクノロジー」の略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのことを指す。はじめに不動産テックの概要と、国内外の現状を確認しておこう。

▽不動産テックの定義

不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。

引用:一般社団法人不動産テック協会 | 不動産テック カオスマップ

不動産テック=従来の不動産業務×テクノロジー

不動産テックは、従来の不動産業務にテクノロジーを掛け合わせた、IT時代に適したシステムである。これまで人の手によることが多かった不動産業務をIT技術の導入で効率化するのが不動産テックの目的だ。

たとえば、従来の不動産業務は、不動産会社から顧客に情報を発信(店頭、チラシ、不動産情報誌など)するしかなかったが、テクノロジーを融合させた不動産ポータルサイトの登場で、顧客側からも物件情報にアクセスできるようになった。

また、不動産会社にとって重要な顧客情報と物件情報の一元管理も不動産テックによって実現した。さらにマッチングサービスの登場で売り手と買い手を引き合わせる攻めの営業が可能になったのも業界にとって大きいだろう。

これらはテクノロジーのなせる技といえる不動産テックのメリットである。全部で12種類のカテゴリーがあるので、活用できるものも多いだろう。

▽不動産テックの12種類のカテゴリー

・ローン・保障
・クラウドファンディング
・仲介業務支援
・管理業務支援
・価格可視化・査定
・不動産情報
・物件情報・メディア
・マッチング
・VR・AR
・IoT
・リフォーム・リノベーション
・スペースシェアリング

引用:一般社団法人不動産テック協会 | 不動産テック カオスマップ

不動産テックという言葉は米国のReal Estate Techが起源といわれている。海外ではインターネットを利用した不動産テックの始まりは2006年頃とされているので、まだ歴史の浅い業界である。

一方日本では、不動産流通標準情報システム「レインズ」を運営する公益財団法人東日本不動産流通機構の沿革を見ると、1999年8月に端末形態にインターネット技術を用いたIP型が登場しているので、そこが起源という見方もある。

▽不動産流通標準情報システム「レインズ」のIP型導入

IPとはInternet Protocolの略で、「複数の通信ネットワークを相互に接続し、データを中継・伝送して一つの大きなネットワークにすることができる通信規約(プロトコル)の一つ」(IT用語辞典)である。IP型の登場によって、インターネットを利用した不動産情報の入力と閲覧ができるようになった。

2018年には一般社団法人不動産テック協会が設立され、カオスマップを公表するようになったことで、日本の不動産テックが徐々に社会に認知されつつある。

【参考】一般社団法人不動産テック協会

なぜ不動産テックが重要なのか

不動産テックは今後の不動産業界でますます重要性が高まるといわれている。その理由として、現状の不動産に関する業務が人の手による部分が多いことが挙げられる。売買や賃貸業務においては顧客の対応は営業担当者が直接行わざるを得ないため、長い間IT化が難しい業界といわれてきた。

また、顧客も営業担当者とのやりとりが煩雑で、不動産取引において、負担が大きい部分があったといえる。会社側も繁忙期には人手が不足するという悩みがあった。

それが不動産テックを使うことによって、顧客が自分でインターネットを使って物件を探してくれ、物件の現場にいかなくても店頭でVRを使って内覧でき、さらに購入が決まったときの重要事項説明もオンラインでできる(IT重説)など、一連の過程をかなり効率化することが可能になったのだ。

不動産テックは、まず繁忙期の人手不足の補助にもなるだろう。やはり人手不足に悩む飲食業界が、問題を解消するために店舗業務や厨房業務をITで効率化した「レストランテック」と共通するものがある。

ただ、現状では日本の不動産テックは海外に大きく後れをとっている。とくに不動産テック関連企業の約1,000社が米国に本拠地を置いているといわれており、日米の格差が大きいのが現状だ。下記で紹介している不動産テックカオスマップで参加している企業の数を見ても、海外版が1,833社に対し、日本版は446社にとどまっている。

その理由の1つになっているのが、情報の透明性である。日本の不動産業界は、国土交通省の指導によって不動産取引価格の情報公開を進めてはいるものの、現状でも多くの情報が公開されていないのが実情だ。

対して米国ではMLS(Multiple Listing Service)という一般の消費者もアクセスできる不動産情報ネットワークが整備されている。この透明性の高さが不動産テックのさまざまなサービスを生み出し、不動産取引の活性化につながっているのだ。

【参考】MLS.com | AERICA’S REAL ESTATE PORTAL

不動産テックの市場規模

不動産テックの市場規模はどれくらいあるのだろうか。株式会社矢野経済研究所が実施した「不動産テック市場に関する調査」によると、2020年度の不動産テック市場規模は6,110億円と推計されている。前年比では8.6%の増加である。2017年度から右肩上がりで市場が拡大しているが、同社では2025年度に2020年度の約2倍にあたる1兆2,461億円まで市場が拡大すると予測している。

▽不動産テックの市場規模

不動産投資テックのカオスマップ

インターネット上には不動産テックのカオスマップが公開されている。カオスマップとは、不動産など特定の業界のサービスやツールがカテゴリー別に掲載されている図(画像)のことである。日本版カオスマップの他に海外版も公開されているので紹介しよう。

日本版カオスマップ

▽不動産テック カオスマップ

日本版カオスマップは、一般社団法人不動産テック協会から第7版が公開されている。2021年7月現在で、「ローン・保証、クラウドファンディング、仲介業務支援、管理業務支援、価格可視化・査定、不動産情報、物件情報・メディア、マッチング、VR・AR、IoT、リフォーム・イノベーション、スペースシェアリング」の12種類のカテゴリーに446のサービスが掲載されている。

【参考】不動産テック カオスマップ 最新版(第7版)2021年7月8日(PDF)

海外版カオスマップ

▽米国スタートアップを中心とした不動産テックカオスマップ

米国不動産カオスマップ
画像引用:VENTURE SCANNER

海外版カオスマップは、VENTURE SCANNERのサイトに掲載されている。こちらは2019年版で、マップ上では企業ロゴをすべて掲載できず、各カテゴリーにおける企業数が掲載されている。1,833のサービスが掲載されており、日本版よりかなり多い数字となっている。なかでもIoT Home(IoT住宅)のカテゴリーには332社が参加しており、この分野への期待の大きさがわかる。

【参考】VENTURE SCANNER | Real Estate Technology Sector Overview – Q1 2019

不動産テックの12種類のサービスとその特徴

不動産テックに掲載されている12種類のサービスについて、その特徴とできることを見てみよう。

不動産テックの種類1:仲介業務支援

不動産売買や賃貸の仲介業務を支援するサービスである。売買仲介に比べて賃貸仲介は利幅が小さいビジネスモデルのため、不動産テックによる業務の効率改善に期待が持てる領域といえる。

仲介業務支援を利用すると、CRM(顧客関係管理)と物件管理を一元化することが可能になる。CRMでは顧客の連絡先、購入履歴、商談状況などと自社営業担当者の関係を一元管理でき、メールやソーシャルメディアを通してのやりとりができる。これに物件の管理情報を一元化できれば仲介業務にとって大きな支援になるだろう。

不動産テックの種類2:管理業務支援

不動産管理会社等のPM(プロパティマネジメント=不動産に関する資産管理)業務を支援するためのサービスである。

不動産管理業務では、不動産情報や顧客情報を管理・運営しているが、不動産テックにおける管理業務支援の分野ではまだBtoC(企業がモノやサービスを消費者に提供するビジネスモデル)のサービスが多く、BtoB(企業がモノやサービスを企業に提供するビジネスモデル)のサービスは普及が進んでいない。

BtoC向けのサービスには、在不在に関わらず自宅玄関前で荷物が受け取れる置き配サービス、BtoB向けでは、さまざまな不動産情報や履歴、契約関係書類や建築図面などを網羅したCRE(企業不動産)情報整備ツールなどがある。

不動産テックの種類3:リフォーム、リノベーション

リフォームやリノベーションの実施ののちに売り出される物件もある。リフォーム・リノベーションの市場規模は大きいが、「業者を評価する方法や情報がないため、適切な業者を選べない」「適正価格がわからないので、見積書の単価・数量が妥当であるのか判断できない」などの課題を抱えている。

不動産テックでは、リフォーム・リノベーションの企画設計施工やWebのプラットフォーム上でリフォーム業者をマッチングするサービスを提供する。

リフォーム業者のなかには外壁塗装に特化するなど、リフォーム部位別の専門業者も登録しているので、比較的ニッチとみられている分野もカバーできるのがメリットだ。また、リノベーションされた物件を紹介するポータルサイトもあり、物件情報面でも利便性が高まっている。

不動産テックの種類4: IoT

通信規格の5G時代が始まり、IoT住宅が注目を集めている。IoTとは、Internet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と訳されている。住宅はIT化することによって他物件との差別化を図りやすい分野のため、不動産投資家も注目している不動産テックのカテゴリーだ。

IoT住宅に導入されるシステムの一例を挙げると、各種センサーと連携させて外出先からリアルタイムで部屋の状況を確認したり、部屋の照明や家電を操作するシステムや、スマートロックを使った入退室管理システムなどがある。部屋にいるときの利便性だけでなく、外出した際のセキュリティや施錠の確認ができるのが特徴だ。

セキュリティに対する意識が高い入居希望者を取り込むために、これから賃貸住宅でも普及が進みそうな分野といえる。

不動産テックの種類5:ローン・保証

不動産取得に関するローンや保証サービスを提供、仲介、比較しているサービスである。シミュレーション機能を使って、借り換えメリットを査定するなど、借り手の立場に立ったアドバイスをしてくれる。

不動産テックサービスのなかには、賃貸物件に入居する際に必要な「敷金・礼金・仲介手数料・保証料・保険料」などの初期費用を分割して支払えるサービスも登場している。

ローン・保証の業務では過去に作成した紙の書類が大量に残されており、データベース化して業務を効率化することが急務な分野といえる。

不動産テックの種類6:クラウドファンディング

資金調達の方法として、クラウドファンディングが各分野で盛んに行われている。クラウドファンディングは、インターネット上で不特定多数の人から少額ずつ出資を募る新しい資金調達方法である。不動産クラウドファンディングは1万円などの少額から不動産投資ができることから、近年人気が高まっている。

不動産テックでは、クラウドファンディングの仕組みを不動産分野に応用しており、最近は不動産ポータルサイトでも不動産クラウドファンディングの情報を得られるようになった。

資金調達方法として不動産クラウドファンディングは大きな可能性を秘めたカテゴリーであるが、誰でも参加可能なゆえに、支払い遅延などのトラブルが発生する問題を抱えている。しかし、東証プライム上場の大手不動産会社が進出するなど、クラウドファンディングに対する不動産業界の期待は大きい。

不動産テックの種類7:価格の可視化・査定

データを活用して物件価格や賃料の査定、物件の将来性などを分析するサービスである。不動産の推定価格や価値を、テクノロジーを使って算出するが、一般的な一括査定サイトはここには含まれない。

データに基づく根拠のある物件価格を不動産テックによって可視化できれば、不動産投資家にとっては頼りになるだろう。また、透明性の高い情報を提供することによって、一般消費者からの信頼も高まる効果が期待できる。

ただし、物件価格の算定はあくまで売出価格の目安であり、実際に取引された成約価格は入手困難であることから、実勢価格と多少乖離する点が今後の課題といえる。

不動産テックの種類8:シェアリング

最近さまざまな分野でシェアリングという仕組みが取り入れられている。カーシェアリングが代表例だが、不動産も例外ではない。空室となっている不動産や空きスペースなどを貸し出し、利用を希望する人とマッチングするサービスがある。

2020年以降の新型コロナウイルスの影響により増えた空き店舗やオフィスを有効活用する方法としても、時代にマッチしたサービスといえる。

他にもカフェや店舗の空きスペースをコインロッカーと同じ程度の料金で荷物を預けられるサービスや、荷物の置き場所に困っている人と自宅の余剰スペースを荷物置き場として提供したい人をマッチングするサービスもある。

不動産テックの種類9:マッチング

不動産テックのマッチングは大きく分けて、買い手と売り手を引き合わせるマッチングと、労働力と業務を引き合わせるマッチングがある。買い手と売り手のマッチングは比較的スタンダードな組み合わせといえる。

もう1つ、賃貸オーナーにとってあると便利なのが職人・大工・作業員といった修繕や軽作業を依頼できる人とオーナーとのマッチングだ。リフォームというほどではないが、雨漏りの修繕や棚の増設といったちょっとした軽作業ができる労働力を確保したいときに重宝するだろう。

建築・建設といった人手不足に悩む業界を補完する役割も期待できるため、不動産テックとして今後の伸びが予想される分野である。

不動産テックの種類10:物件情報・メディア

物件情報・メディアの分野は、インターネットやスマートフォンの普及で早い時期から不動産テック化されていた分野である。すでに店頭広告や不動産情報誌で物件を探す時代ではなくなっている。主力は不動産ポータルサイトなどのインターネット広告だ。

大手広告代理店電通の調べによると、2021年のインターネット広告費は2兆7,052億円(前年比121.4%)で、4大マスコミ(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)広告費2兆4,538億円を上回っている。インターネットが4大マスコミの広告費を超えたのは初の出来事である。

【参考】dentsu | 「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」

不動産会社の店頭を訪れるのは敷居が高いと感じる人も、不動産ポータルサイトなら気軽に訪れてくれる。不動産広告のインターネット比率はこれからも高まりそうだ。

不動産テックの種類11: VR・AR

通信規格が5G時代になり、VRやARという言葉を頻繁に聞くようになった。VRとはバーチャルリアリティ(仮想現実)のことである。

不動産テックのVR内覧は、入居希望者の案内に対する利便性を大幅に向上させた。VR内覧は現地を訪れなくても、VRゴーグルを装着し、収蔵されている物件データを使って、360°の視野で部屋を内覧することができる。

一方のARとはオーグメンテッドリアリティ(拡張現実)のことを指す。物件と違う場所で使用するVRと異なり、AR内覧は物件を訪れた人がその場で利用する。

VRが空室を内覧するイメージなのに対し、ARでは物件の現場に家具をリアルタイムで画面上に配置し、モデルルームのように部屋の雰囲気を確認することができる最新技術だ。

不動産テックの種類12:不動産情報

一見すると物件情報と混同しそうだが、不動産情報とは物件情報を除く不動産関連の情報やデータ分析などを取得できるサービスである。データは集めただけではそれほど意味がない。データをきちんとデータベース化して蓄積してこそ精度を向上させることができる。

データベース化の一例を挙げれば、不動産の登記情報をデータベース化して情報取得を容易にするシステムがある。これによって法務局に行かなくても登記情報を取得できることになるので時間を効率化できる。

また、ハザードマップがデータ化されていれば、災害リスクの高い地域にある物件を知ることができるだろう。

不動産テックを活用する3つのメリットと課題

不動産テックは、活用することでいくつかのメリットがあり、そして課題もある。海外に比べて立ち遅れているといわれる日本の不動産テックが活性化するには、不動産業界がメリットを認識し、課題の解決に取り込むことが求められる。

不動産テックを活用する3つのメリット

不動産テックを活用するメリットとして、次の3つのポイントが挙げられる。

・不動産テックのメリット1:情報の質や量、双方向性がITにより向上する
不動産テックではITを活用することによって情報の量や質が向上し、情報アクセスへの双方向性が高まる。これまで物件情報は不動産会社の店頭、不動産情報誌、チラシなど不動産会社から顧客に一方向で提供されるのが一般的であった。

また、アナログ的な情報提供では掲載できる数量にも限りがあるが、インターネットであればほぼ掲載数に制限はない。しかも膨大な量の情報を全ページ確認する必要はなく、検索システムによって希望する条件に適した物件のみを確認できるようになっている。不動産テックの活用は顧客側のメリットも大きい。

・不動産テックのメリット2:不動産取引の顧客層が拡大され、活性化する
不動産テックを活用すると、不動産取引に従来以上の顧客層を取り込める可能性がある。

たとえば、店頭に顧客が訪れるのを待っているだけなら、周辺エリアの顧客層に限定される。新聞折込チラシも配布するエリアはある程度絞られるだろう。

その点インターネットの不動産ポータルサイトに掲載すれば顧客の対象を大幅に拡大できる。

たとえば、東京都新宿区にある物件も、「東京」という大きな括りで探している顧客の目にとまるのだ。さらに不動産テックにはマッチングサービスもあるので、ピンポイントで取引相手を紹介してもらえる可能性がある。不動産取引の活性化にIT技術は欠かせない。

・不動産テックのメリット3:仲介専門、管理専門の枠組みが不要となる可能性も
不動産テックが本格的に普及すると、仲介専門業者は不要になる時代がやって来るかもしれない。

仲介業務が不動産テックの活用で大幅に簡素化されれば、あえて仲介と管理を分ける必要もなくなるだろう。多くが仲介と管理の両方を扱う「総合不動産会社」になれば顧客の利便性が高くなる。不動産会社にとっても仲介と管理の垣根がなくなればビジネスチャンスが広がる。

不動産テックの課題

不動産テックには課題もある。不動産業界のITリテラシーが高くないという現実だ。不動産テックに対する認識は、「テクノロジーを取り入れれば不動産業務をすべて効率化できる」と考える人と、「AI(人口知能)に仕事を奪われる」と考える人に分かれている。楽観と悲観の考え方が極端になりがちなのだ。

不動産テックがすべての仕事を効率化できると考えるのは誤解で、不動産業務は人の手によることのほうがまだまだ多い。不動産テックは業務支援の性格が強く、資料整理や雑務、データ収集などを効率化するのに向いている。

したがって、人間の仕事がAIに奪われると悲観する必要はないのだ。まずはどの程度自社の仕事に役立つか使ってみることが大事といえる。

まとめ:拡大する不動産テック。人の行うべき業務との組み合わせが投資のカギに

不動産テックは年々拡大しているが、海外に比べればまだ十分に普及しているとはいい難い。長い間アナログ的な手法を中心にやってきた不動産業界にとって、ITリテラシーを高めることが重要な課題といえるだろう。不動産テックは予算の関係もあり、すべてのサービスを利用することは難しい。

大事なのは自社の業務を効率化するのに適した不動産テックを活用し、営業担当者の負担を減らして、顧客対応など本当に人手が必要な業務に集中できるようにすることだ。その結果生産性が向上すれば、不動産テックへの投資が活きたものとなるだろう。

ただし、不動産テックの活用で不動産業務の利便性は高まるが、それを活用するのは人であり、顧客の希望にマッチした優良な物件を提供するという、不動産会社の基本的役割はこれからも変わらないだろう。