この記事は2022年6月23日に三菱総合研究所で公開された「貿易統計(2022年5月) ―― 価格上昇でも輸入数量が増加、輸出はASEAN向けが堅調」を一部編集し、転載したものです。


貿易統計
(画像=sittinan/stock.adobe.com)

今回の結果

2022年5月の実質輸出(当社による季節調整値)は、前月比▲0.4%と、概ね横ばいとなった。他方、実質輸入は同+9.1%と大きく増加した(図表1)。

実質輸出入
(画像=出所:財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」、作成:三菱総合研究所)

実質輸出を国・地域別でみると、ASEANの経済活動再開に伴って、同地向けの電気機器やはん用・生産用・業務用機械の輸出が持ち直した。一方、ゼロコロナ政策の影響で2022年4月に急減速した中国向けが引続き減少したほか、欧米向けも、部品の供給制約等による輸送用機器の伸び悩みにより減少(図表2)。

実質輸出:国・地域別
(画像=出所:財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」、作成:三菱総合研究所)

実質輸入については、通信機等の電気機器が増加したほか、原油や液化天然ガスといった鉱物性燃料の輸入も増加(図表3)。資源価格の高騰等を受けて輸入物価が上昇するなか、輸入数量も増加したことで、名目輸入は前年比+49%と大幅に伸長し、名目貿易赤字(季節調整値)は1.9兆円と、2014年3月以来の水準にまで拡大している。

実質輸入:財別
(画像=出所:財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」、作成:三菱総合研究所)

対ロシア貿易の動向をみると、輸出規制の導入以降、実質輸出が前年で約6割減となっているものの、実質輸入については、鉱物性燃料や食料品が概ね横ばいで推移するなか、輸出に比べて緩やかな減少に止まっている(図表4)。

実質輸出入:対ロシア
(画像=出所:財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」、作成:三菱総合研究所)

基調判断と今後の流れ

実質輸出は概ね横ばい圏内、実質輸入は持ち直し傾向で推移している。

先行きの輸出については、2022年6月初めに中国・上海の都市封鎖が解除され、経済活動が再開に向かうなかで、中国向けを中心に緩やかに持ち直すとみる。また、供給制約の段階的な緩和が進めば、堅調なASEAN向けのさらなる増加や、欧米向けの持ち直しも期待される。

但し、米国でFRBが利上げのペースを加速させ、欧州でもECBが金融政策の正常化に向けて動き出すなか、欧米の景気減速や新興国からの資金流出等に対する懸念が強まっている。世界の成長鈍化はわが国の輸出の伸び悩みに繋がるため、引続き海外経済の動向にも注視する必要がある。

菊池 紘平(きくち こうへい)
政策・経済センター
メガバンクで国内外のマクロ経済動向や金融機関経営等に関する調査業務に従事した後、2022年より現職。国内研究機関への出向や米国駐在等の経験も活かし、分かりやすい情報発信・分析を行う。