この記事は2022年6月24日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「PR TIMES【3922・プライム】上場企業の半分が使うリリース配信サービス 積極投資で海外進出・新事業育成に注力」を一部編集し、転載したものです。


PR TIMESは、企業が発表するプレスリリース(報道資料)の配信サービス「PR TIMES」の運営会社だ。企業が伝えたいメッセージをメディアや生活者に伝えられる手段として普及し、これまで累計で6.5万社、上場企業では半数以上が利用している。

2005年の創業以来売上は右肩上がりを続け、2022年2月期に売上高が15期連続、営業利益は7期連続の過去最高を記録した。現中期経営目標では更なる飛躍に向け、海外展開や新事業育成で積極投資を推進中。2026年2月期に、営業利益は5年前比2.7倍の35億円、利用企業数は同3倍の15万社へ押し上げる。

▼山口 拓己社長

PR TIMES
(画像=株主手帳)

リリースをメディア・生活者に
ダイレクトに配信

新商品の発売や他社との業務提携など、企業が外部に発信したい際に掲載されるのが「プレスリリース」だ。同社は、こうした企業発のプレスリリースを広く配信する同名のサービス「PR TIMES」を主力としている。

同サービスの機能は大きく2つ。1つめは、メディアへの配信だ。同社ではテレビや雑誌、新聞、インターネットサイト、専門家など1.2万近くのメディア配信先情報を保有しており、企業はこの中から「取り上げてほしい」と思う媒体を最大300件まで選べる。それに基づき、同社は企業のプレスリリースをメディアに配信している。

また、これとは別に同社は210媒体以上とパートナー関係を締結。プレスリリースは、提携メディアの中から20媒体以上に基本原文のまま掲載される。

機能2つめは、同社が運営する自社サイトやFacebook、Twitterを通じたプレスリリースの配信。同社によると、自社サイトの閲覧者はメディアだけでなく一般消費者(以下生活者)も多く、企業にとって直接情報を伝える場となっている。

「元々プレスリリースは、生活者ではなくメディア向けに配信するもの。そのため生活者へ届くためには、メディアが記事にしたり、番組で取り上げたりしなければなりません。ですが取り上げられるのは大抵大企業か有名企業で、中小企業など多くは知ってもらう機会がありませんでした。一方当社のサイトは、月間に過去最高で5880万PV(ページビュー、閲覧数)に達するなど、多くの生活者に閲覧いただいています」(山口拓己社長)

使いやすい料金プランで
多くの顧客を獲得

国内プレスリリース配信サービスは、同社のほかにソーシャルワイヤー(3929)の「アットプレス」やバリュープレス(非上場)の「バリュープレス」などが大手となる。同社によると、国内シェアはこうした競合を抑え1位。同社の2022年2月期末時点の累計利用企業社数は、6万5660社となった。また国内上場企業の利用割合は50.4%に達し、2021年に新規上場した企業に限ると7割弱に上った。

多くの企業に利用される背景のひとつが、シンプルな料金体系だ。サービス利用料は、プレスリリース1本あたり3万円の従量課金プランと、(1)月間契約8万円、(2)半年契約7.5万円(月額)、(3)年間契約7万円(月額)、の3つによる定額プランの2通りがある。

月に3件以上プレスリリースを配信する場合は定額プランの方が割安だが、これを売りにストック収益である定額プランの会員数を増やす取り組みは一切行っていないという。

「私たちは、一つひとつのプレスリリースにそれぞれ価値があると思っています。月に3件も利用が見込まれないお客様なのに、長期契約して無理してリリースを出していただく必要は全くありません。従量課金・定額課金どちらも大切なので、それぞれの指標はあえてモニタリングしていません」(同氏)

2022年2月期は売上高が48.5億円、営業利益は18.3億円といずれも過去最高となった。特筆すべきは、営業利益率が37.8%と高水準な点。これは、基本がインターネット上のプラットフォームサービスであることから変動費が少なく、売上が積み上がればその分利幅が大きくなるため。売上高の前期比は28.9%増だが、営業利益は同40.9%増だった。  

売上成長も9期ぶり減益
積極投資で新市場拓く

同社は2021年4月、5カ年の中期経営目標を発表した。今後は、更なる成長ステージに踏み込むために積極的な投資を行う計画を立てる。そのため2023年2月期は、売上高は前期比22.6%増の59.5億円予想だが、営業利益は同12.8%減の16億円と9期ぶりに増収減益を見込んでいる。

投資対象のひとつが、PR TIMESの海外進出だ。

「当社は以前、中国に進出したことがあります。当時は地理的に近い点と成長可能性が大きい点を考慮し、この機会を逃してはいけないと参入しました。ただ、出てみると尖閣諸島問題があったり、外資インターネットサービスの締め出しが始まったりと、結局撤退となりました」(同氏)

こうした経験を踏まえ、現在進出を狙うのが米国だ。同市場は、長年Cision社の「PR Newswire」、Berkshire Hathaway社の「Business Wire」、Intrado社の「GlobeNewswire」の大手3サービスによる寡占が続いているが、市場規模の大きい同市場で商圏拡大を図る。

主力のプレスリリース配信サービス以外では、2つの新事業「Jooto」と「Tayori」それぞれで広告宣伝投資を行う。Jootoはクラウド型タスク・プロジェクト管理ツールのことで、Tayoriは、HPの問い合わせフォームなどを作成できるサービス。それぞれを育て、新たな成長軸とする狙いだ。

「PR TIMES社が、PR TIMESだけで終わってはいけないと思っています。それを超える可能性のある新事業を育て、『会社をスケールさせよう』と本気で目指す優秀な人材が集まる場を目指したいと考えています」(同氏)

計画最終年の2026年2月期には、営業利益は5年前比2.7倍の35億円となる予定。この利益をさらに既存サービスの深耕・新サービス育成に必要な投資の原資とし、持続的な成長を目指す。

▼自社サイトは過去最高で月間5880万PVに達する

PR TIMES【3922・プライム】上場企業の半分が使うリリース配信サービス 積極投資で海外進出・新事業育成に注力
(画像=株主手帳)

2022年2月期 連結業績

売上高48億5400万円前期比 ー
営業利益18億3400万円
経常利益18億3300万円
当期純利益12億8100万円

2023年2月期 連結業績予想

売上高59億5000万円前期比 22.6%増
営業利益16億円同 12.8%減
経常利益15億9600万円同 13.0%減
当期純利益11億500万円同 13.8%減

*株主手帳7月号発売日時点

山口 拓己社長
Profile◉山口 拓己(やまぐち・たくみ)社長
1974年1月生まれ、愛知県出身。1996年、山一證券入社。デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)などを経て、2006年ベクトル入社、取締役CFO就任。2007年、PR TIMES代表取締役就任。2009年、同社代表取締役社長就任(現任)。