本記事は、三井智子氏の著書『仕掛ける力』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。
思わずメディアが目を留めるプレスリリースの書き方
実をいうと、小学生の頃から国語が大嫌いだった私は、社会人になっても文章能力はやはりいまひとつでした。一番てこずる仕事、それが「プレスリリースの作成」でした。
しかし、「メディア分析」をしたりメディアの方と話をしているうちに、書き方のコツが徐々にわかってきました。もちろん今でも100%の出来ではないのですが、以前、メディアの方に褒められたポイントを下記にお伝えします。
ただし、人事関係や経理関係のリリースは、専門書を参考にして法的な表現にも気をつけて作成するようにしてください。
①枚数は少なく、余白を多めに
プレスリリースはシンプルが一番。必要なことだけをA4で1枚か2枚にまとめるのがお勧めです。ある記者の方曰く、余白があったほうがメモがとれていいのだそうです。用紙に空きスペースがあるからといって無理に情報を押し込めずに、空白があってもいいという意味です。
②見出しにはインパクトを
一番大切なのは見出しです。車内吊りの広告やテレビの番組表も短い言葉を使って印象づけ、購買や視聴につなげています。プレスリリースも同じで、各社の広報から毎日大量に届く中から忙しいメディアの方に選び出してもらい、目を通してもらうには見出しに一工夫する必要があります。そのため、見出しは「内容を凝縮し、想像が膨らむような言葉で目立つ」ものであること。見出しを変えただけでもかなり印象は変わるはずです。
さらにいえば、伝えたい内容に「初」「新」「ナンバーワン」などの切り口がある時は、それらをぜひ見出しに使ってください。「今年初登場」「世界新」「業界ナンバーワン」という文字が並ぶと、かなり注目されます。
③リード文は簡潔に
リード文では、本文の内容を簡潔にアピールします。よく見かけるのは、プレスリリースのリード文に「○○株式会社(本社住所○○、代表○○)」と書かれていることです。これは1つのセオリーになっているようですが、記者さんたちは「タイトルとリード」だけで必要な情報かどうかを判断するともいわれています。企業の住所などは、文末に書いてもいいのではないかと私は思っています。
④本文はわかりやすい言葉で
一般の新聞がどのくらいの学力レベルの人を対象に書かれているかご存じですか? 実は中学生から高校1年生程度だといわれています。これはわかりやすさを重視した結果だそうです。
同様にプレスリリースも、あまり難しい言葉や専門用語を使ってしまうと、ごく一部の人にしか伝わらず、読むことすら嫌がられてしまいます。業界独特の言い回しやカタカナ語を極力使わないことをお勧めします。
記者さんの中にはその業界を初めて担当する人もいるので、誰もが業界に詳しいと思っての対応は避けたほうがベストです。誰にでも伝わる言葉で書くこと。これが一番のポイントです。
⑤内容の裏付けと分析を入れる
私が重要視しているのは「内容の裏付けと分析」です。たとえば、ふんどしの情報なら、数字の裏付けがポイントです。扱い点数、売上枚数、その昨年比など。また、購入者層や購入理由などの現状と、なぜ売れているかなどの分析を詳しく載せるほうがメディアの方に理解していただけます。
そして、「3の法則」に則って、話題として関係するネタがあれば、自社情報ではないものを盛り込むこともお勧めです。プレスリリースに入れられなければ、補足資料として伝えるのも1つの方法です。
「あまり詳しく情報を入れすぎると、プレスリリースだけで記事が書けてしまうので取材に来てもらえないのではないか?」と心配する広報担当者がいらっしゃいました。私の経験では、告知のコーナーは別として、基本的にプレスリリースだけで記事を作成することはほとんどありませんでした。必ず一度は連絡をくださっているので、現場に取材に来ていただけるかどうかは、その時のコミュニケーション次第だと思います。
⑥なぜ今このネタなのかの理由を入れる
「今そのネタを取り上げる理由は?」というメディアの方からの質問に答えるべく、その理由を書きます。例をあげてみましょう。
- インフルエンザの時期だから、発表する
- 最近の夏は異常気象だから、気候に合わせてお勧めの商品を記載する
- 8月31日は「やさいの日」だから、など記念日を記載する
発表のタイミングは、時事ネタに合わせて、そろそろだなと誰もが感じる時期がベストです。
- 広報の目
- プレスリリースはシンプルで、有益性と必要性を感じてもらえるように書くこと。
広報が「書きたい」ことだけではなく、メディアが「読みたい」ことを書くこと。
株式会社Office Me 代表取締役
1988年、「OLの聖地」と呼ばれた伝説の百貨店・プランタン銀座に入社。自ら売り込む「企画広報」を考え、個性的なスイーツを集めた「プラ地下」や、コンセプト福袋など多くのブームを生み出し、メディアに引っ張りだこの百貨店へと成長させる。
プランタン銀座の株主変更を機に、2004年、銀座三越へ出向し、広報として福袋やふんどし、焼きいもなど、ヒットの一翼を担う。
2006年、広告代理店読売エージェンシーに出向し、銀座の商業施設のオープンから7年間広報プロデューサーを務めるほか、サービスエリアやアンテナショップのオープンの広報担当を務める。
2014年、株式会社Office Meを設立。自治体の地方創生、農業女子プロジェクト、その他食材や企業のブランディングなど幅広いジャンルの広報に携わる。キャリア約30年の広報知識と経験、ネットワークを生かし、世の中の話題になる企画づくりから、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBなど、主要メディアへの露出機会拡大と話題づくりまでトータルプロデュースを行う。※画像をクリックするとAmazonに飛びます