本記事は、三井智子氏の著書『仕掛ける力』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

2択
(画像=PIXTA)

広報と現場のリレーションを強める

現場に目が向いている人、情報を吸い上げる力のある人、社内にも社外にもお互いに助け合える仲間がたくさんいる人は、仕事がよりスムーズにできているのではないでしょうか。広報の人脈は、メディア関係者だけで良いわけではなく、広報活動を円滑に進めるためには「社内人脈」も大切です。

社内外ともに人脈というのは、最初からあるわけではなく、また簡単にできるものではありません。たとえ優秀な先輩や上司から名刺の束やリストを引き継いだとしても、それだけでは「人脈」と呼べるようなパワーにはなりません。

力強いパワーにするには、自分の人間力でコツコツと時間をかけ、コミュニケーションを取りながら「人の輪」をつくっていく必要があります。

突然の取材依頼に、メディアの希望にどれだけ対応できるか。その鍵となるのは、社内全体にすぐに対応してくれる人がいるかどうかもポイントです。

たとえ広報担当者が「取材OK」しても、最終的にそれを受けるのは現場です。百貨店の場合は売場が対応することになりますが、売場担当者に「NO」と言われてしまえば、広報担当者は取材を断らざるを得ません。現場が納得して、快く取材を受けてくれることが最も重要です。

売場にまだ広報の必要性を理解してもらっていない頃、売場スタッフが、カメラクルーに向かって「いつまで撮影しているんですか? たくさんの人数でいられるとお客様が驚いて売場に近寄れないんですよね」と、早く切り上げてほしいといわんばかりの言い方をしてしまったことがありました。その一言で、現場の雰囲気は一瞬で凍りついてしまいました。

その時私は、「企業における広報の立場」を理解してもらうこと、「広報と現場との距離」を縮める必要性を痛感したのです。まったくできていなかった自分は、普段から広報の大切さを現場に理解してもらう努力をしなければと感じました。それと同時に、広報に共感してくれる仲間が増えれば、情報が入りやすく、取材もうまく進みます。私はそれ以来、広報の重要性を周知させて、理解者・仲間を増やしていく活動に力を注ぎました。

広報の目
メディア対応の成否を分けるのは、強固な人の輪。
広報に対する周囲の理解を広めること。

社内における広報のポジションを確立する

理解者や仲間を増やすべく活動していましたが、うまくいかないことも度々ありました。各担当者は自分の仕事に忙しく、中には広報からの突然の取材要請を、時間の無駄だと思う人もいました。広報への理解が薄い会社も実は多いと聞いています。

大企業においても、「広報って何やってんの?」「取材を受けたからって自分にどんなメリットがあるの?」と冷めた目で見る人も少なくないと聞きます。

まず広報は、企業にとって、各部署にとって、どれだけメリットのある部署なのかを訴え、広報全体のポジションを高める努力が欠かせません。そのためには、広報の仕事内容を理解してもらうことが最も大切です。プランタン銀座時代は、社長の広報に対する理解が深かったため、広報のポジションを積極的に高めてくれたという恵まれた環境がありました。ただ、それに甘んじることなく、自分自身もその期待に応えようとさまざまな工夫をしました。

広報を理解してもらうための具体策としては、以下のポイントに留意しました。

①各部署のキーパーソンを探す

圧倒的な情報を持ち、惜しみなく教えてくれる各部署のキーパーソンを見つけます。常にコンタクトをとることで理解は深まり、自然に社内情報も集まります。

②広報の戦略会議を開いて、社内で広報センスを共有する

プランタン銀座では、1カ月に1度、広報会議を開いていました。出席者は、社長、企画販促担当者、各売場の責任者などです。この会議の目的は大きく分けて2つありました。

1つ目は、広報の活動内容を現場に理解してもらうこと。2つ目は、売場からの情報を吸い上げることです。

この会議において広報担当者は、まず前月の広報活動の結果報告を行います。たとえば2月の広報会議であれば、1月に受けた福袋やバレンタインのテレビ・新聞・ラジオ・雑誌取材の件数や、取り上げられたテーマと記事の内容、メディア名をまとめて報告します。

また、ライバル他社のメディア状況、新聞社が取り上げたテーマやタイミングを前年と比較して、その年のメディアによる注目傾向や市場の分析も行います。翌年はどういうタイミングで何をアプローチすればいいのかがわかるような資料を作って配るのです。

現場からは、事前に渡しておいたその月のテーマに合わせた情報や、翌月以降のお勧め情報も提供してもらいます。

こうやって、毎月の百貨店の商況や、話題になっている情報をまとめて、前年と比較することで、来年の対策を現場とともに練ることができ、広報の求めている内容と現場の売り込みたい内容とを合致させていました。

この会議は少ない人数で活動している広報にとって、大きなメリットがありました。会社も社員も、広報やメディアの方がどのタイミングで何を求めているのかを感じ取ってくれるようになったのです。社内に広報のセンスを持った人が増えれば増えるほど、的を射た情報が広報担当に入ってきますし、社内からの協力も得られるようになりました。

広報の目
現場が広報の視点を共有することで、特徴ある商品が揃い始め、それがそのままニュースとして売り込めるようになっていく。
仕掛ける力: 売れる広報の鉄則
三井智子
広報プランナー・プロデューサー・コンサルタント
株式会社Office Me 代表取締役
1988年、「OLの聖地」と呼ばれた伝説の百貨店・プランタン銀座に入社。自ら売り込む「企画広報」を考え、個性的なスイーツを集めた「プラ地下」や、コンセプト福袋など多くのブームを生み出し、メディアに引っ張りだこの百貨店へと成長させる。
プランタン銀座の株主変更を機に、2004年、銀座三越へ出向し、広報として福袋やふんどし、焼きいもなど、ヒットの一翼を担う。
2006年、広告代理店読売エージェンシーに出向し、銀座の商業施設のオープンから7年間広報プロデューサーを務めるほか、サービスエリアやアンテナショップのオープンの広報担当を務める。
2014年、株式会社Office Meを設立。自治体の地方創生、農業女子プロジェクト、その他食材や企業のブランディングなど幅広いジャンルの広報に携わる。キャリア約30年の広報知識と経験、ネットワークを生かし、世の中の話題になる企画づくりから、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBなど、主要メディアへの露出機会拡大と話題づくりまでトータルプロデュースを行う。

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