すでにマンション経営に取り組んでいるオーナーさんはもちろん、これからマンション経営を始めたいとお考えの方も、所有している収益マンションの最適な売却タイミングはいつなのか?という疑問をお持ちではないかと思います。
マンション経営には必ず終わりがあり、そのときには所有しているマンションを売却することになります。この売却に成功するか否かで、マンション経営全体の成否が決まるといっても過言ではないほど重要です。
それでは、いつ売却するのがベストなのでしょうか。本稿ではマンション経営の重要な出口であるマンション売却の適切なタイミングについて解説します。
目次
1.マンション経営の成否は売却の成否次第で決まる
マンション経営をする以上、誰もが成功させたいと考えるのは当然のことです。
その成功の鍵を握っているのがマンションの売却である事実と、マンション売却を成功させる重要性について解説します。
1-1.売却が成功してこそマンション経営は成功する
マンション経営の成否はどう決まるのか、考えてみたことはあるでしょうか。
マンション経営の終了時、つまり物件を売却して最終的な収支が確定したときにプラスであれば成功、マイナスとなると失敗と定義することができます。
家賃収入を積み上げた総額よりも売却時の差損が大きくなれば、マンション経営のトータル収支はマイナスになってしまいます。
この事実からも、「マンション経営は売却に成功するか否か」がとても重要であることがご理解りいただけるかと思います。
期待通りの価格、もしくはそれに近い価格でマンションを売却してこそ、マンション経営は成功といえます。そして売却を成功させるにはタイミングがとても重要であるというわけです。
1-2.マンション経営の出口戦略とは
マンションの売却に成功できるかどうか、やってみなければわからない、終わってみなければわからないということだと、マンション経営は極めて不安定なものになってしまいます。
不確実性が高くては数千万円もの投資をするのは不安になることでしょう。そのため、マンション経営には必ず出口戦略があります。長期保有してトータル収支のプラスを目指すか、一定の時期で売却してプラス収支を確定させるか。売却を選択した場合、その戦略にそって売却を行えば成功を掴むことが可能になります。
出口戦略という言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますので説明いたします。
マンション経営における出口戦略とは、以下の通りです。
マンション経営のスタート地点である資金計画や物件選びの段階で最終的なトータル収支をプラスにするための戦略です。売らずに長期保有するか、ある時期で売却するかのいずれかを選択することになります。売却を選択する場合は初期の段階で売却することを想定し、期待通りの価格で売れることによって最終的なマンション経営の成功を目指します。
物件の価値は立地条件など購入後に動かしようのないことで決まる要素が強いため、売却を前提にする場合は物件選びの段階から出口戦略を立てておく必要があります。
有効性の高い出口戦略を描くことができれば、マンションの売却価格は想定内のものとなり、トータル収支を予定どおりプラスにすることができます。
1-3.マンションオーナーが物件を売却した理由を見てみよう
次に、売却を成功させるための重要なポイントとなる売却タイミングについてのデータを見てみましょう。
2019年、野村不動産が収益マンションのオーナーが物件を売却した理由を調査しました。その結果が、以下になります。
1位の「所有物件を組み換えるため」はオーナー自身の事情によるものですが、2位の「不動産価格が上昇したから」と3位の「修繕費がかかるから」は、売却のタイミングを重視した結果であることが読み取れます。
「不動産価格の上昇」と「修繕費」は売却のタイミングに大きく関わってくる部分なので、詳しくは次章で解説します。
2.収益マンションのオーナーが知っておくべき売却のタイミング7選
それでは、本題である「成功しやすい売却のタイミング」について解説いたします。
マンション売却に適したタイミングとして以下の7つが挙げられます。マンション売却を検討している方にとっては、今すぐ参考にできるタイミングもあることでしょう。
2.入居者が付き安定収入があるタイミング
3.短期譲渡所得の期間が終わったタイミング
4.大規模修繕の時期を迎えるタイミング
5.減価償却の期間が満了するタイミング
6.1月から3月のタイミング
7.築20年になるタイミング
2-1.購入時よりも高く売れそうなタイミング
購入時よりも高く売れるのであれば、家賃収入と売却益の両方を手にすることができるので理想的な売却タイミングといえます。
幸いにも2012年頃から大都市圏を中心にマンション価格の上昇が続いており、この波に乗ることとは売却益を得る大きなチャンスといえるでしょう。
マンション価格がどの程度上昇しているのかは、国土交通省が発表している不動産価格指数を見ても明らかです。
このデータからも、マンションの価格が突出して上昇しているのが一目瞭然です。こうした傾向が続く限り、収益マンションが購入時の価格よりも高くなっていることは十分にありえます。
2-2.入居者が付き安定収入があるタイミング
現在入居者が付いている状態で売りに出す物件のことを「オーナーチェンジ物件」といいます。
オーナーチェンジ物件は購入後に入居者募集をしなくてもよいため初心者向けともいわれており、人気が高く売却しやすくなります。
つまり、入居者が付いて収益が安定しているときは有効な売却タイミングの1つといえます。
2-3.短期譲渡所得の期間が終わったタイミング
マンション売却で売却益が発生すると、その売却益に税金がかかります。これを譲渡所得税といいますが、譲渡所得税は物件の所有期間によって税率が異なります。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
税率は長期と短期に分けられ、長期譲渡所得の場合は税率が20%、短期譲渡所得の場合は税率が39%です。実に倍近い差があるので、譲渡所得が発生する場合は注意が必要です。
所有しているマンションを売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期となり、それより短い場合は短期です。
これは短期間に不動産を転売するような投機的な売買を抑制するために設けられた制度なので、所有期間が5年前後の場合は短期譲渡所得の期間が終わったあとが税金面で有利になります。
2-4.大規模修繕の時期を迎えるタイミング
マンションには10年から15年に1回の周期で、大規模修繕があります。
大規模修繕のために管理費とは別に修繕積立金を払い込んでいるのですが、場合によっては大規模修繕の費用が追加で発生することがあります。
その出費を避けたいのであれば、大規模修繕を迎える時期が売却のタイミングとなります。
2-5.減価償却の期間が満了するタイミング
マンションなどの不動産は償却資産なので、毎年一定率ずつ価値が目減りしていく分として減価償却費を経費として計上することができます。
実際にはキャッシュが出て行かない経費なのでマンション経営の節税メリットとして広く知られています。
ほとんどのマンションは鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造の建物で住宅用なので、減価償却の期間は47年です。
この47年間は減価償却費を計上できますが、それを過ぎると経費としての計上ができなくなるため、節税メリットも終了します。
減価償却の期間が満了するタイミングは売却のタイミングといえますが、それ以前に新築から47年間所有しているとすると築47年となり、マンションとしては築古です。
築年数の古さゆえに売却しにくくなることも考えられるため、現実にはもっと早い時期に売却を検討したほうが賢明かもしれません。
2-6.1月から3月のタイミング
毎年、1月から3月は引っ越しの繁忙期です。4月から新入学や新入社など新しいスタートを切る人が多くなるため、1月から3月をその準備期間に充てる人が多くなるからです。
この時期は新たに住居を求める人も多くなるため、需要が高まる時期を売却タイミングとするのも有効です。
2-7.築20年になるタイミング
あくまでも目安であり一般論なのですが、不動産は築20年を超えると維持コストが割高になってきます。コスト増を許容してそのまま所有するか、売却するかの選択を岐路に立たされる時期でもあります。
そのため、築20年を迎えたときは売却タイミングの1つといえます。
3.少しでもマンションを高く売るためのノウハウ4選
売却タイミングが成功のための重要な鍵を握っているのは間違いありませんが、マンションの売却を成功させるためのノウハウはタイミングだけではありません。
タイミング以外で知っておきたい高値売却のノウハウを4つお届けします。
2.自分でも相場観を掴んでおく
3.マンション高騰の流れに乗り遅れない
4.信頼できる不動産会社に相談する
3-1.売却時の査定は複数の不動産会社に依頼する
複数の同業者に見積もりを依頼することを「相見積もり」といいます。
複数の業者から見積もりが得られるため相場観を掴みやすく、マンションの売却においても相見積もりを取るのが有効です。
相見積もりは相場観を掴めることに加えて、見積もりの依頼を受けた側に競争意識が働くため、有利な条件を引き出しやすいメリットもあります。
不動産の売却には一括査定サイトといって、一度の操作で複数の不動産会社に売却物件の査定依頼を出せるサービスがあります。
おもなサービスには以下のものがあるので、これらサービスを利用して相場観を掴むことから始めてみてはいかがでしょうか。
3-2.自分でも相場観を掴んでおく
上記の一括査定サイトを利用するノウハウと同様に、事前に相場観を掴むための有益なサービスとして、国土交通省が提供している「不動産取引価格情報検索」を利用してもいいでしょう。
このサイトでは、実際にあった不動産取引を不動産会社から聞き取り調査を行い、その情報がデータベース化されています。
近隣の類似物件を探してみて近い時期に取引結果を見つけることができれば、おおむねどれくらいの価格で売却されたのかがわかります。
3-3.マンション高騰の流れに乗り遅れない
すでに述べているように、大都市圏を中心にマンション価格の高騰が続いています。
この波が永久に続くことはないので、今後長く所有しておく理由がないのであれば、この上昇傾向が続いているうちに売却するのも手です。
当記事では売却に適したタイミング7選を紹介していますが、このマンション価格の高騰だけは定期的に訪れるものではなく特殊な要因なので、今回のチャンスが過ぎると次にいつ同じような状況がやってくるかは全くの未知数です。
その意味でも所有されているマンションの売却を検討されている方は、今あるチャンスを活かす考え方を持っておくことも重要です。
3-4.信頼できる不動産会社に相談する
マンション経営では物件を購入する段階から売却するまで、さまざまな場面で不動産会社の役割が大きな意味をもちます。売却を成功させられるかどうかも、信頼できる不動産会社をパートナーにすることができるかがとても重要です。
誠意ある対応を期待するのはもちろんですが、それ以前に不動産会社には分野によって得手不得手があります。マンションの売却をするのであればマンションの取引に強い不動産会社に相談するのがセオリーです。不動産会社の知名度や規模だけで判断するのではなく、査定内容の整合性や担当営業マンへの信頼感、売却に対する提案内容などを総合的に判断してパートナーを選びましょう。
また、不動産業界には「両手仲介」といって売主と買主を自社で見つけることによって双方から手数料を得ることができる取引を実現するために「囲い込み」をする業者も存在します。売主であるマンション所有者の利益を最優先に動いてくれる不動産会社であるかを見極めるために、ネット上の口コミなども参考にしながら選ぶことをおすすめします。
4.収益マンションの売却でありがちな失敗パターンと対策
収益マンションの売却にはありがちな失敗パターンがあります。
これらの失敗はいずれも事前に理解しておくことで回避できるので、5つの典型的なパターンを理解し失敗しないように備えてください。
2.短期譲渡税が高額になってしまった
3.急いでいたため安い価格でしか売れなかった
4.買い手候補との契約がなかなかまとまらない
5.高い査定価格を提示されたから依頼したのに思っている価格で売れなかった
4-1.一般媒介で「出回り物件」になってしまった
不動産の売却を不動産会社に依頼する場合、依頼の方法は3種類あります。その3種類とは、以下のとおりです。
・専任媒介契約
・一般媒介契約
これらは上から順に、不動産会社に任せる比重順に並べています。
まず、専任媒介契約、専属専任媒介契約はいずれも特定の一社に買い手探しを依頼する契約になります。
・専属専任媒介契約
専属専任媒介契約の特徴としは、自己発見といって依頼主が自ら売主を見つけることができない契約になっています。
最も不動産会社に任せることになり、依頼を受けた不動産業者は1週間に1度以上売却活動の進行状況を売主に報告する義務があります。
媒介契約を結んでから5日以内に売却物件情報を不動産情報ネットワークに掲載する義務もあるため、より確実に売却しやすいメリットがあります。
・専任媒介契約
専任媒介契約は、専属専任媒介契約と同じように特定の不動産会社一社に買い手を探してもらう契約ですが、売主が買い手を探すことは禁止していません。
また、不動産会社は2週間に1度、売却活動の進行状況を売主に報告する義務があります。
・一般媒介契約
一般媒介契約は複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約です。
依頼主にとっては縛りが少ない契約ですが、不動産会社にとっては一般媒介契約だと本腰を入れにくいといえます(他社で決まる可能性があるため)。
どの不動産会社も本腰を入れないことによって売却情報が出たままになり、「出回り物件」として買い手が付きにくくなってしまいます。
確実に売却するのであれば専属専任媒介契約、もしくは専任媒介契約で特定の一社に依頼して短期間のうちに売却活動を完了するのが得策です。
4-2.短期譲渡税が高額になってしまった
長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いについてはすでに解説したように、税率に倍近くの差があります。それを理解し、税率が倍になっても十分な利益を手にすることができるのであれば問題はありません。
この違いを理解しないままにマンションを売却してしまい、予想以上の税率に驚いてしまうことになっても後の祭りです。
マンションを所得した期間を忘れずに確認し、短期に属する場合はその税率が適用されても利益を出せるかどうかをしっかり考えましょう。
4-3.急いでいたため安い価格でしか売れなかった
不動産は海千山千の業界です。急いで売却したいと思っていると、それを買主候補に見透かされてしまい、足元を見られる可能性があります。
仮に急いでいるとしても、急いでいることを悟られないようにすることが重要です。
理想的なのは急がず自分のペースで売却することなので、急にマンションを現金化しなければならないような事態になることがないよう、マンション経営は資金に余裕をもって臨みたいところです。
4-4.買い手候補との契約がなかなかまとまらない
マンションの売却活動をすると、避けて通れないのが買主候補との価格交渉です。
売主は少しでも高く売りたいと思っている一方で、買主候補は少しでも安く買いたいと考えます。この両者が折り合うためには、価格交渉にも柔軟な姿勢で臨む必要があります。
頑なに条件を守るのも重要ですが、それにこだわりすぎるあまり売却チャンスを逃してしまい、売却情報が出たままになって「出回り物件」と見なされると、さらなる大幅な価格引き下げを余儀なくされることになります。
あまり欲張りすぎず、できるだけ早く売却することを重視することが、高値売却につながることもあります。
4-5.高い査定価格を提示されたから依頼したのに思っている価格で売れなかった
一括査定サイトなどを利用して複数の不動産会社に売却物件の査定依頼をすると、どうしても最も高い査定価格を提示した不動産会社に依頼したくなるものです。
その価格が相場の範囲内であれば問題ありませんが、1社だけ突出して高い価格を提示している場合は、要注意です。
査定価格を高くすることで媒介契約を取り付けても、結局は相場どおりの価格でしか売れません。ひどい場合は売却力が弱く、相場よりも安い価格でしか売れないこともあります。
これを不動産業界では「高預かり」といって、あまり感心されないやり方です。「不動産に掘り出し物無し」という言葉があるように、不動産は相場が支配する世界です。
常に相場観を意識して、妥当な価格を提示している不動産会社から依頼先を選ぶようにしましょう。
5.まとめ
マンション物件を少しでも高く、有利に売却したいとお考えのオーナー、もしくは今後マンション経営を始めたいとお考えの方に向けて売却について適切なタイミングを7つの視点で解説しました。
タイミングだけでなく他のノウハウも織り交ぜて高値で売れる戦略をしっかり立て、マンション経営をプラス収支で終えることを目指しましょう。
これからマンション経営を始めたいとお考えの方は、物件を購入する前に出口戦略をしっかり描き、売却に成功できる有益な物件を選んでください。
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