不動産投資をするうえで、一棟物件・区分マンションともに修繕のスケジュールおよびコストについての計画を綿密に立てておく必要があります。

修繕計画が適切に立てられていないと場当たり的な修繕対応になってしまい、資金不足により必要な修繕ができない、物件内で不具合や事故が発生する、空室率が上がるといった致命的な事態に発展する可能性があるためです。

本記事では、オーナーとして知っておくべき、不動産投資における修繕計画の周期およびコストについて、一棟物件・区分マンションそれぞれの見地から解説します。

建物や設備は経年で劣化する

不動産投資の修繕計画はどう立てる?周期やコストについて知っておこう
(画像=bubbers/stock.adobe.com)

不動産投資においてオーナーが所有する建物や設備は、経年とともに劣化していくため、定期的に修繕が必要になるという点を理解しておきましょう。ここでは、不動産投資をするオーナーに関わる修繕について、以下の3つの観点から解説します。

・修繕や設備交換の周期
・修繕や設備交換にかかるコスト
・突発的な修繕が発生する可能性

修繕や設備交換の周期

国土交通省のガイドラインによれば、主な設備の修繕・交換の周期は以下の表の通りです。

箇所周期(およそ)
共用部分
鉄部の塗装5〜7年
屋上・バルコニー等の防水12〜15年
外壁の塗装やタイル12〜15年
機械式駐車場18〜22年
給排水管30〜40年
エレベーター26〜30年
専有部分
エアコン11〜15年
給湯器11〜15年
浴室設備※部分的な交換11〜15年
キッチン設備※部分的な交換11〜15年

ただし、上記は大規模な修繕の周期となるため、軽微な修繕や部品交換などは、もっと短いスパンで発生する可能性があることを認識しておきましょう。

修繕や設備交換にかかるコスト

修繕や設備交換にかかるコストは、物件の規模や劣化の程度、修繕の方法などによって大きく異なります。エアコンのように交換にかかる費用が10万円程度に収まるものもあれば、エレベーターや機械式駐車場のように数百万円以上の規模になるものもあります。

また、一棟物件に投資している場合は、特にコスト計画の立案を意識しておく必要があるでしょう。一部屋あたりの修繕費は安くても、全部屋で一斉に行う場合(エアコンや給湯器の一斉交換など)はトータルのコストが高額になる可能性があるためです。

賃貸管理会社を通じて建築士や各設備のメーカーに確認を取るなどして、コストの概算を把握しておくといいでしょう。

突発的な修繕が発生する可能性

外壁塗装や塗膜防水の塗り直し、エレベーターの交換など、大規模な修繕は数年ないし数十年に一度の頻度で発生するものですが、その他にも小規模な修繕が突発的に起こり得ます。

例えば、給湯器が故障してお湯が出ない、エアコンが作動しないといった、設備交換の必要まではない軽度な不具合はいつ発生してもおかしくありません。大規模な修繕への備えや計画のみならず、日常的な物件のメンテナンスに対しても、常に準備をしておきましょう。

一棟物件:修繕計画を立てるうえで押さえておくべきこと3つ

一棟物件の修繕計画を立てるうえで、押さえておくべきことは以下の3つです。

・修繕計画の立案や実施は原則全てオーナー判断
・修繕コストは原則全てオーナー負担
・賃貸管理会社や建築士に相談して修繕計画を立てよう

修繕計画の立案や実施は原則全てオーナー判断

一棟物件の場合、建物も設備も基本的に全てオーナーの所有物であるため、修繕計画の立案から実施に至るまで、原則として全てオーナーの判断で行わなければなりません。

また、賃貸管理会社に管理を委託している場合であっても、必ずしも賃貸管理会社が自発的に修繕計画を立ててくれるわけではないことも理解しておきましょう。オーナーから賃貸管理会社に働きかけ、修繕計画を一緒に立てるという姿勢が重要です。

修繕コストは原則全てオーナー負担

一棟物件の場合は全てオーナーの所有物であるため、修繕計画の立案、実施と同様に、修繕コストも原則として全てオーナーが負担することになります。特に多くの箇所を一斉に行う場合は、相当なコストになる可能性があることを想定しておかなければなりません。

毎月の家賃収入の中から一定の割合を修繕コストの準備金としてプールしておくなど、資金面での計画が非常に重要になります。

賃貸管理会社や建築士に相談して修繕計画を立てよう

修繕計画を立てるにあたっては、賃貸管理会社や建築士などの専門家の意見を聞きましょう。修繕計画の立案や実施には、建築や法律、機械などの幅広い分野における専門知識や実務経験が求められるためです。

各設備の修繕周期やコストの概算について、一般の個人オーナーが全てを正しく把握したうえで修繕計画に落とし込むことは難しいでしょう。修繕計画が正しく立てられていないと、設備の故障で入居者の生活に大きな支障が出たり、物件内で事故が起きたりするリスクが高まります。

入居者に快適な生活を送ってもらい、より長く住んでもらうために、専門家とともに修繕のスケジュールおよび資金の計画を立てましょう。

区分マンション:修繕計画を立てるうえで押さえておくべきこと3つ

区分マンションの修繕計画を立てるうえで、押さえておくべきことは以下の3つです。

・修繕計画の立案や実施は管理組合が主導する
・大規模修繕のための資金は「修繕積立金」という形で積み立てられている
・専有部分内の修繕は原則全て各オーナーの個人負担

修繕計画の立案や実施は管理組合が主導する

区分マンションの場合、外壁や共用廊下、エレベーターなどの共用部分における修繕計画の立案や実施は、管理組合が主導して行うのが一般的です。

管理組合とは、区分所有者(マンション一室のオーナー)全員で構成される組織のことで、マンション全体の運営について議論し意思決定を行います。区分マンションを購入すると「区分所有者」として、管理組合に加入することが法律によって義務付けられています。

修繕計画の立案や実施は管理組合の意思決定によって行われるため、個々のオーナーが共用部分における修繕の計画を個人で立てなければいけないということはありません。

大規模修繕のための資金は「修繕積立金」という形で積み立てられている

区分マンションを購入すると、「管理費」「修繕積立金」というコストが毎月かかります。

管理費は、共用設備の保守維持費および運転費、経常的な補修費といった日常的な管理や設備の維持などにかかる費用のために使用される資金です。

修繕積立金は、定期的に行われる大規模修繕や不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕といった計画的または突発的な修繕にかかる費用のために使用される資金です。

大規模修繕のための資金は、実施時期および実施箇所などから逆算して計画的に全オーナーから集められ、積み立てられています。

大規模修繕を実施する際に当初の計画よりも修繕箇所が増えたなどの要因でコストが上振れした場合を除いて、原則として大規模修繕は修繕積立金の範囲内で行われます。

専有部分内の修繕は原則全て各オーナーの個人負担

共用部分の修繕は管理費および修繕積立金から支払われますが、専有部分内の修繕については各部屋のオーナーが個人で負担することになるのが原則です。

エアコンや給湯器、床材、クロスなどの消耗品は目安となる修繕周期や劣化状況などを見ながら適宜修繕を行いましょう。

不動産投資では修繕計画の更新を定期的に行い、物件価値を守ろう

不動産投資における建物および設備の修繕計画は、物件の価値を守り、入居者の満足度を高めるために定期的にアップデートする必要があります。

一棟物件では物件全体、区分マンションでは専有部分内における修繕計画を、賃貸管理会社や建築士、各設備のメーカーなどの専門家に相談しながら立案し、スケジュールと資金の準備を計画的に進めておきましょう。

(提供:Incomepress



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