この記事は2022年7月7日に三菱総合研究所で公開された「雇用関連指標(2022年5月) ―― 雇用環境は改善も、対面型サービス業は人員確保に苦心」を一部編集し、転載したものです。


雇用関連指標
(画像=ipopba/stock.adobe.com)

評価ポイント

労働力調査(2022年5月)の結果

完全失業率(季調値)は、2.6%(2022年4月:2.5%)と4カ月ぶりに悪化したものの、2022年入り後は改善傾向にある(図表1)。失業者の増加は、主に自発的な離職(前月差+6万人)であり、雇用削減の動きが強まっているわけではない。

就業者数(季調値)は6,724万人(前月差▲14万人)と4カ月ぶりに減少したものの、均してみれば回復傾向にある。役員を除く雇用者の内訳をみると、女性の正規雇用者の増加が顕著である。

完全失業率・就業者数の変化
(画像=三菱総合研究所)

一般職業紹介状況(2022年5月)の結果

有効求人倍率は、1.23倍(2022年4月:1.22倍)と5カ月連続で上昇。先行指標の新規求人倍率も2.27倍(2022年4月:2.19倍)と高水準で推移している(図表2)。

経済活動正常化に伴う需要の増加を見越し、企業の求人が増加した。

求人倍率
(画像=三菱総合研究所)

基調判断と今後の流れ

雇用環境は、着実に改善している。感染拡大時に増加した休業者数や短縮された労働時間も平時並みに戻りつつある。

先行きも、企業の労働需要は強く、雇用改善の継続が見込まれる。日銀短観2022年6月調査によると、非製造業を中心に雇用人員判断DI(過剰-不足)のマイナス幅が拡大し、企業の人手不足感は強まっている。

コロナによる打撃の大きかった「宿泊、飲食サービス」、「生活関連サービス、娯楽」等の対面型サービス業でも、雇用悪化懸念は和らぎつつある。労働投入量(人数×時間)の変化をみると、休業者の復帰、時短勤務解消により労働供給を回復させている(図表3)。雇用調整助成金の特例措置は2022年9月末に期限を迎えるが、制度終了、縮小に伴う雇用削減は限定的にとどまるだろう。

対面型サービス業は、経済活動正常化に伴い求人を増やしているものの、感染状況を巡る不透明感から就労を避けている側面もあり、就業者の増加につながっていない。人手不足による事業活動の制約が懸念される。

労働投入量(人数×時間)
(画像=三菱総合研究所)
堂本 健太(どうもと けんた)
政策・経済センター
金融機関にて国内外のマクロ経済分析業務に従事する間、2018年日本経済研究センター出向。2022年より現職にて主に日本経済分析を担当。