この記事は2022年2月25日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「コロナ禍における行動変容(1) ―― 個人消費および雇用情勢の概観」を一部編集し、転載したものです。

要旨

行動変容,個人消費,雇用情勢
(画像=PIXTA)
  • コロナ禍において個人消費は感染状況と連動しており、消費を上向かせるためには、社会経済活動との両立を図るために感染状況を制御していくことが肝要だ。一方で今後の足かせとなるものとしては、長引くコロナ禍における雇用環境の悪化による消費抑制や物価高による家計負担増などが懸念される。

  • 雇用の状況を見ると、非正規雇用者は減少する一方、正規雇用者は増加しており、いずれも女性で増減が目立つ。従来から非正規雇用者は女性が約7割を占めて多く、女性の従事比率の高い医療・福祉で正規雇用者が増加している影響と見られる。一方、コロナ禍で苦境に立つ飲食などの対面型サービス業等の雇用者数は減少している。コロナ前から生じていた雇用者間の分断はコロナ禍で一層深いものとなっている。

  • 賃金についても、対面型サービス業では正規・非正規ともに全産業平均と比べて減少する一方、需要の増す医療・福祉では増加している。よって、雇用維持の面だけでなく、収入の面でも雇用者の分断は深まっている。

  • 政府はこれらへの対応として、成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現するとして、経済団体への賃上げ要請やデジタルなど成長産業への労働移動を促すための公的職業訓練の強化などを講じている。雇用環境の改善は個人消費を改善させる上での土台となる。