この記事は2021年12月28日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「雇用関連統計2021年11月 ―― 緊急事態宣言解除後も雇用情勢は厳しい状態が続く」を一部編集し、転載したものです。

失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.8%

雇用関連統計
(画像=PIXTA)

総務省が12月28日に公表した労働力調査によると、2021年11月の完全失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.8%(QUICK集計・事前予想:2.7%、当社予想は2.6%)となった。労働力人口が前月から13万人の増加となる中、就業者が前月と変わらず、失業者は前月から10万人増の192万人(いずれも季節調整値)となった。

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4カ月ぶりに労働力人口が前月から増加したが、8〜10月の3ヵ月で▲99万人減少していたことを踏まえると、11月の増加幅は限定的にとどまった。

また、就業者は8〜10月の3カ月で▲84万人の減少となっていたが、11月は前月から横ばいにとどまり、前年に比べると減少幅が拡大した。失業率は横ばい圏で推移しているが、緊急事態宣言解除後も雇用情勢は厳しい状態が続いている。

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就業者数は前年差▲57万人減(10月:同▲35万人減)と3カ月連続で減少した。産業別には、製造業が前年差▲21万人減(10月:同▲1万人減)、卸売・小売が前年差▲12万人減(10月:同▲32万人減)と減少が続いたほか、10月に緊急事態宣言が解除されたにもかかわらず、宿泊・飲食サービスが前年差▲19万人減(10月:同▲44万人減)、生活関連サービス・娯楽が同▲26万人減(10月:同▲26万人減)と大幅な減少が続いた。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ▲38万人減(10月:同▲9万人減)と2カ月連続で減少し、前月から減少幅が拡大した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差▲1万人減(10月:50万人増)と1年6カ月ぶりに減少、非正規の職員・従業員数が前年差▲37万人減(10月:同▲40万人減)と4カ月連続で減少した。

求人数は増加が続く

厚生労働省が12月28日に公表した一般職業紹介状況によると、21年11月の有効求人倍率は前月と同水準の1.15倍(QUICK集計・事前予想:1.16倍、当社予想も1.16倍)となった。有効求人数が前月比1.0%の増加、有効求職者数が同0.9%の増加となった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.05ポイント上昇の2.13倍となった。新規求人数が前月比4.1%の高い伸びとなり、新規求職申込件数の(同1.8%増)の伸びを上回った。

有効求人数、新規求人数ともに増加傾向が続いており、企業の採用意欲は高まりつつあるが、現時点では就業者の増加につながっていない。緊急事態宣言が解除された10月以降、景気は個人消費を中心に持ち直しているが、雇用情勢は景気に遅れて動く傾向があるため、厳しい状態が続いている。


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斎藤 太郎 (さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

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