本記事は、竹内義晴氏の著書『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント』(翔泳社)の中から一部を抜粋・編集しています。
「チームのアップデート」は、「私のアップデート」から生まれる
まずは、これまでのコミュニケーションスタイルを疑ってみよう
これまでお話ししてきたように、さまざまな社会環境の変化によって、私たち中堅世代と若手世代との間で、今まで以上に世代間ギャップを感じるようになりました。しかし、お互いの「正しさ」を主張し合っている状況があり、中堅世代は「今の若者とどう接したらいいかわからない……」と感じ、若手世代は「あの人には言ってもわかってもらえない……」とあきらめの気持ちを抱いています。
世代間の「vs.構造」から離れ、若手世代とよいコミュニケーションを築くためには、相手の変化を待つよりも、私たちから変わっていくことが重要です。
しかしながら、私たち中堅世代は、ベテラン世代から、かつての「報連相」のようなピラミッド型の関わり方や、アナログな情報伝達、「飲みニケーション」といった昭和のマネジメントスタイルをみっちりと仕込まれてきました。
幼少期に親から受けたしつけや価値観は、自分が親になったときにも引き継がれてしまうことがあるように、それと同じことが、若手社員との関わり方にも無意識に起こってしまうことがあります。
思考や行動の変化には、これまでの経験や教育、思い込みによってつくられ、固定化されたパターンを書き換えるマインドセットが伴います。今まで「正しい」と思ってきたことを、ある意味否定しなければならないこともあるでしょう。ときにつらいし、大変な作業になることもあります。
しかし、これまで多くの時間を、目の前にニンジンをぶらさげられ、本心は異なるのに「仕事とはこういうものだ」と我慢を強いられ、「いい思い」をほとんどしてこなかった私たち中堅世代にとって、「変わること」は、1つの「希望である」と私は思っています。
私たちの上司にあたるベテラン世代には、「オレの時代はな……」と自慢話をする人や、説教が好きな「面倒くさい」人が多かった印象があります。一方で、私たち中堅世代は、上の世代が味わっていた高度経済成長期やバブル時代のような「強烈な成功体験」がない分、物事を客観的に捉えて、「このままだとまずいかも……」と考えることができるし、「本当は、〇〇のほうがいいな」のような、今までとは異なる理想を描くこともできます。
まずは、私たちが教わってきた昭和のマネジメントスタイルを、一歩下がって「このままでいいのかな?」と疑ってみること。そして、「本当は、どうしたいのだろう?」と、新たな理想を考えてみること。それが、変化への第一歩です。
変わるのは、「若手世代のため」ではなく「自分のため」
「私たちから変化していきましょう」という話を聞いて、ひょっとしたら、次のように感じているかもしれません。
「何で若手世代のために、こちらが変わらなくてはいけないのでしょうか?」
変わるのは「若手世代のため」ではありません。「私たちのため」です。
あなたもすでにお感じのように、今、社会の変化の速度はとても速くなっています。
変化への対応力があるということは、マネジメントのスタイルだけではなく、社会の変化にも対応できるということです。
また、「柔軟になりましょう」という話を聞いて、このように感じている人もいるでしょう。
「私は柔軟だと思います。最近の若者が好きなドラマもチェックしていますし、マンガも読んでいますから!」
「世代間ギャップを縮める」と言うと、「相手に合わせる」のように理解する人もいます。共通の話題をつくるという意味では、ときには、相手に合わせることも大切です。
しかし、「柔軟」とは、必ずしも若手の価値観や趣味趣向に、自分の意見を無理やり合わせたり、おもねったりすることではありません。「あなたは〇〇だとお考えなのですね。私はこう思うんです」のように、相手を尊重しながら、自分の意見も大切にする。そのような関り方ができるといいですよね。
また、「自分は柔軟だ!」と反射的に反発してしまうとき、批判的な感情が伴うこともあります。何かに意識的に取り組んでいる人ほど、そのような反応が起こるものです。私自身短気なこともあって、そういった反応をしてしまうことがあります。
しかし、改めて自分に「本当に柔軟だろうか?」と問い直したとき、案外「オレは柔軟だよ!」という思考に固執していること、そこで思考停止していることに気づくことがよくあります。
「自分は柔軟だ!」というネガティブな気持ちや感情が生じたときほど、冷静になってみましょう。