この記事は2022年7月12日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「さくらレポート(2022年7月)~9地域中7地域で景気の総括判断引き上げも、先行きへの警戒感は強い」を一部編集し、転載したものです。

さくらレポート
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目次

  1. 景気の総括判断は、全9地域中、7地域で引き上げ、2地域で据え置き
  2. 業況判断は改善するも、先行きへの警戒感は引き続き強い
  3. 製造業の業況判断は3地域で改善も、地域ごとに大きなばらつき
  4. 非製造業の業況判断は、対面型サービス、宿泊・飲食サービスが大幅に改善

景気の総括判断は、全9地域中、7地域で引き上げ、2地域で据え置き

7月11日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、景気の総括判断は、全9地域のうち7地域で引き上げ、2地域で据え置きとなり、引き下げた地域はなかった。

北海道、東北、北陸、近畿、中国、四国、九州・沖縄では景気の総括判断が引き上げられた。中国のロックダウンで供給制約がみられるものの、全体的に持ち直しの基調となっている。関東甲信越では、総括判断が横ばいとされたが、「基調としては持ち直している」と、持ち直しの基調は維持されている。一方、東海地方は「持ち直しの動きが一服している」と、弱い動きになっている。

需要項目別にみてみると、多くの地域で設備投資、個人消費において持ち直しの動きとなっている。3月21日にまん延防止等重点措置が解除されたことを受け、消費が回復していることが分かる。

さくらレポート(2022年7月)
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業況判断は改善するも、先行きへの警戒感は引き続き強い

「地域経済報告(さくらレポート)」と同時に公表された「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域中7地域で改善、2地域で横ばいとなり、悪化した地域はなかった。

前回調査からの改善幅をみると、九州・沖縄が+10ポイントと大きく、次いで北海道が+9ポイント、四国が+7ポイントとなっている。北陸と関東甲信越は+3ポイント、東北は+2ポイント、東海は+1ポイントと小幅な改善にとどまった。一方で、近畿と中国は横ばいとなった。前回調査では全地域で悪化となった景況感だが、今回調査では、全体的に改善に向かっていると言える。

さくらレポート(2022年7月)
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先行き(2022年9月)の景況感については、8地域でDIの水準が悪化、東海のみが横ばいとなっている。今回調査で業況判断DIが大きく改善された北海道と四国だが、先行きの低下幅は最も大きくなっており、先行きへの警戒感が強い。

全体として、景況感は改善している。3月21日にまん延防止等重点措置が解除されたことで人出が増加し、経済活動が活発になったことが影響している。しかし、先行きは多くの地域で警戒感が強く残っており、今後も景況感を楽観視できない状況が続くだろう。

製造業の業況判断は3地域で改善も、地域ごとに大きなばらつき

製造業の業況判断DIは、3地域で改善し、北陸で横ばい、5地域で悪化した。中国のロックダウンによる供給制約、資源高によるエネルギー価格の上昇が大きな影響を及ぼしている。

業種別には、前回調査では多くの地域で悪化した食料品が、今回調査では全地域で改善している。一方、紙・パルプは多くの地域で悪化したほか、石油・石炭製品についても悪化が見られた。

さくらレポート(2022年7月)
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北海道は前回調査から+7ポイントの改善となった。特に食料品の改善幅が大きく、+20ポイントとなった。一方、中国は前回調査から▲7ポイントの悪化となっており、ほとんどの業種で悪化した。特に紙・パルプ(▲29ポイント)や木材・木製品(▲20ポイント)の悪化が下押しの原因となった。

先行きについては、5地域で改善、4地域で悪化を見込んでいる。北陸は電気機械(+28ポイント)や木材・木製品(+25ポイント)が押し上げ要因となり、+7ポイントの改善を見込んでいる。一方、近畿は木材・木製品(▲13ポイント)や化学(▲13ポイント)が下押し圧力となり、全体では▲1ポイントの悪化が見込まれている。

業種別では、多くの地域で木材・木製品の悪化が見込まれるほか、化学や窯業・土石製品でも悪化を見込む地域が目立っている。

なお、日銀短観6月調査では、2022年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が118.96円と、足元の実勢(137円程度)よりも大幅な円安水準となっている。今後、円高が進まなければ、円安方向への修正が入り、輸出企業にとっては収益計画の上方修正要因になる。一方、輸出割合の低い企業にとっては、円安によって原材料輸入価格の上昇に拍車がかかり、利益計画の下方修正要因になる恐れがある。

さくらレポート(2022年7月)
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非製造業の業況判断は、対面型サービス、宿泊・飲食サービスが大幅に改善

非製造業の業況判断DIは全9地域で改善した。3月21にまん延防止等重点措置が解除され、対面型サービスを中心に非製造業は改善へ向かった。

業種別では、まん延防止等重点措置が解除されたことを受け、全地域で宿泊・飲食サービスが前回調査から大きく改善した。前回調査では四国を除く8地域で業況判断DIの水準がマイナスだったが、今回調査では、全9地域でプラスとなっている。同じく、まん延防止等重点措置が解除された影響で、対個人サービスも、全地域で前回調査から改善し、業況判断DIの水準の押し上げ要因となった。

前回調査からの改善幅は、九州・沖縄が+13ポイントで最大となり、北海道が+9ポイントで続いた。九州・沖縄では、宿泊・飲食サービスが+27ポイント、対個人サービスが+23ポイントと大幅な改善をみせたほか、運輸・郵便においても+21ポイントと大きく改善した。

さくらレポート(2022年7月)
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先行きについては、全9地域中、東海は横ばい、残りの8地域で悪化を見込んでいる。今回調査で非製造業が大幅に改善したのは、まん延防止等重点措置の解除、外国人旅行者の受け入れ再開などに伴う経済活動の回復が影響したとみられ、先行きも対個人サービス、宿泊・飲食サービスは引き続き改善が見込まれている。しかし、足元では新型コロナウイルスの新規感染者数が増加傾向にあり、県民割の全国拡大が延期されるなど、先行きを楽観視できない状況へと変わってきた。

さくらレポート(2022年7月)
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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安田拓斗(やすだ たくと)
ニッセイ基礎研究所経済研究部 研究員

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