日本は「段階的に軍備増強を行うべき」との声
一部で疑問視されているのは、その目標値の設定についてである。
国防費をGDPの2%まで増やすということは、2022年度の防衛関係費5兆4,000億円から試算すると、単純に考えて2倍=10兆8,000億円が必要となる。この金額の捻出についての課題があるのはもちろん、国防費を2倍に増やしたからといって防衛力が2倍に拡大するといった簡単な問題ではない。
ジョンズホプキンスSAISの国際関係学修士候補、ブラッドリー・イサクソン氏は、軍事的脅威から地域の安全を保護するという使命を果たす目的で、「日本はいくつかの重要かつ微妙な調整を行う必要がある」と賛同した上で、「一挙に国防費を倍増させるより、段階を追って増やすべきだ」と、慎重な見解を示した。
同氏によると、例えば2%の上限達成期間を5~10年に引き延ばすことにより、「地域の不測の事態に備えて、目標達成に向けた予算を迅速に引き上げることができる」「安全保障の必要性を適切に評価し、新たな防衛装備を調達する時間も稼げる」とのことだ。
さらに、2020年に突如計画停止となった「イージス・アショア・プロジェクト」のような、"国防費の誤算"も回避できると付け加えた。このプロジェクトはイージス・アショア建造に約4,500億円を投じて、日本全域に「陸の盾」を構築するという壮大なミサイル防衛政策だったが、「投資に見合わない」などの理由で実現しなかった。
英大学教授「日本の外交政策の変化が紛争を引き起こす」
日本の動きに疑問を唱える声もある。
「戦争の放棄・戦力不保持」が憲法で定められているはずの日本が、西側諸国と足並みを揃えて軍力を拡大していくことに、違和感を感じる」と語るのだ。
英イーストアングリア大学国際関係学部のラ・メイソン教授は、『日本の国防費の倍増が、世界をより危険な場所にする』という見出しで、「日本の外交政策の変化が将来の紛争を引き起こすリスクがある」との懸念を露わにした。
同教授は、日本が世界9位の軍事費を誇る「名ばかりの平和主義者」であり、平和憲法を掲げる傍ら、戦後間もなく再軍事化に着手していたと指摘。ドイツの軍事政策改革を引き合いに出し、軍事大国→敗戦→軍事無力化→軍事拡大の「サイクルを一周した」と述べた。
その一方で、「過度に拡大した後、現在は衰退しているように見える米国」と同盟を深める動きは、「日本の安全保障のアイデンティティに疑問を投げかけている」とし、「2015年に憲法の解釈の変更が批准されて以来、日本の外交政策はますます大国の外交政策化している」と疑問を投げかけた。