本記事は、弓削徹氏の著書『アイデア体質になる! 課題が解決する! キャリアが広がる! メモ・ノートの極意』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
コンサルタント必携の“スキルノート”とは
10人のスターより1つのアイデア
アイデアを出すことは、レバレッジを効かせることです。
すぐれた販促企画による売上拡大は、1人のスーパーセールスパーソンがもたらすそれを超えます。
つまり、個人技よりも売るためのアイデア発想に価値があるということです。
言葉の定義をすると、「営業力」とは、すぐれたセールスパーソンが目の前のお客さまを説得して成約に持ちこむことであるなら、「マーケティング力」とは、そのセールスパーソンの目の前に見込み客を連れてくる仕組みをつくることです。
紀元前、中国の武将であった韓信の肖像画を見ると非常に細身に描かれています。しかし、彼は背水の陣などの奇抜な戦術を駆使し、最後には一騎当千の巨躯である項羽を破って劉邦に漢を建国させ、国士無双とまで呼ばれます。
敗れた項羽は、「自分には山を引き抜くほど力があるのに、なぜ」と嘆きながら憤死します。
いまの時代に置き換えて考えると、適切なアイデアをインターネットで実行すれば、予算が少なくても効果が出る、というところでしょうか。
芸人でなくてもネタ帳を持とう
芸人たちはネタ帳にあれこれ書き込んでコントや漫才をつくっているといいます。
ビジネスパーソンであっても、これは同様です。
仕事上のデータや最新ニュース、他社の成功事例はもちろん、文字通り商談相手を笑わせるアイスブレイクのネタまで、ビジネスベースのネタ帳を持つようにしましょう。ノートはネタ帳、メモはネタ帳の元です。
そして、すぐれたコンサルタントは、独自の「コンテンツノート」を持っているものです。
つまり、自分だけのノウハウを記したノートです。経験した事例や、成功にいたったアイデアと要因、あるいは反対に失敗したアイデアと要因、次に試したい企画。さらに、関わっている業界の近年の傾向や分析、考察、また行政の動向など。
冒頭には、はじめての企業から聞きとるべき質問項目の列挙もあります。
これが、あなた独自のコンサルティングの元帳となります。
そして、企業支援メニューの根拠となり、セミナーや書籍のネタ元にもなります。コンサルタントにとっては存在価値そのものともいうべきものです。
元帳があればコンテンツを自在に出せる
例えば、セミナー講師の依頼が来たとすると、主催者が求める内容や結果を勘案してストーリーをつくり、そこへノートからコンテンツを置いていきます。
レジュメのページをイメージしたハコを描いていき、そこへ当てはめていくのも順序をつかみやすいのでよいと思います。
持ち時間に見合うコンテンツを置いたら、あとは説明の流れがスムーズかどうかを確かめ、ページタイトルを書き、セミナータイトルを考える、という具合です。
各ページの内容はわかっているので、残っているのは図解や箇条書きを入れ込んで、見やすいレイアウトにする作業だけです。
このとき、あなたのコンテンツがまとまっておらず、アタマのなかにあるだけだったり、どこかの棚のファイルにあるかも? という状態だったりしたら、どうでしょうか。
作成の作業に相当な時間がかかることはもちろん、伝えるべき要素の抜けやモレをさけられないでしょう。
書籍企画もセミナーレジュメと似ていますが、元となるノートは同じ。テーマや仮タイトルを中央に書いて楕円で囲み、5〜6つの章へと線を延ばしてみます。
そこへ、ノートから必要なコンテンツを取り出し、マインドマップ調で書き込んでいきます。
そして、書籍企画のノートを新たにつくり、元となるコンテンツノートを見ながら目次とコンセプトを書き出し、さらに本文の元となるコンテンツを移動させるような使い方をするのです。
図解して考える技術
関係性を理解するなら動画より図解
私の授業の内容をマインドマップに書き表し、授業終了後に大学の共有ドライブ上にアップしてくれるという奇特な院生がいました。
授業をした当の本人が、それを見て(あ、そうか)と気づかされることさえあるほど詳細で、図解のチカラはあなどれないなとあらためて考えさせられたものです。
そこまでしっかりした図解でなくても、それぞれの言葉や要素の関係性や位置関係を図解風にしておくのも有効です。
単語同士を矢印でつなげたり、丸で包含関係を示したりするだけでも、理解を促進する効果があります。
【図解の効果】 ・全体像をつかむ ・関係性をつかむ ・時系列がわかる ・重要点がわかる
一方で、いまはなんでも動画を見てサクッと理解しようという時代。
たしかに動画はボーッと見ていても、だいたいの内容をつかむことができます。しかし、図解をすると各要素の関係や役割を立体的に理解することが容易になります。
例えばPDCAも、箇条書きではなく、ぐるりとつなげた4つの円のなかに書き込んでいくと、わかりやすくなるでしょう。
あるいは、次のような説明文も、図解にするとあっけないくらい理解が早くなります。
「大切な要素としてはAとBの2つがあります。それぞれにはメリットとデメリットがあり、まずAには○○と□□というメリットがあるものの、デメリットとしては△△があります。一方、Bには○○と□□というメリットがあり、△△というデメリットがあるのです。」
企画も図解して考える習慣を
紙の上で完結するメモ、ノートほど、図解することで意図や目的が明解になります。
図解やビジュアルによって理解度を高めることが大切なのは、広告表現でも同じです。「見ていただく」のが宿命である広告では、フクザツな商材もわかりやすく表現しなければなりません。
そして、自分のアタマのなかを整理したり、全体の事象が見えにくくなったりしたときは、図に表すことが有効です。
私はセミナーや授業のレジュメでも、いかに「図解により秒で理解してもらう」かということに腐心していますし、企画を考えるときなどはマインドマップとロジックツリーとを組み合わせたような図解を多用しています。
企画の途中で図解してみて、さらに修正を加えていき、なるべくシンプルに捉えられるようにします。すっきりと図解ができていれば、他者に説明することも容易になります。
要素が3つになったら図解する
言語を超えて伝わるチカラ
図解は、描くことによって整理ができますし、第三者として見る側も強い刺激となって理解を促進する効果があります。
近年は長文を読んで理解できる人が減ってきているという意見も耳にしたことがあるのではないでしょうか。
百聞は一見に……ではありませんが、話せば30分かかる内容も、A4紙1枚の図解でなら30秒で理解してもらえることもあるのです。
このように図解はフクザツな事象を伝えることに向いていますが、その効果はシンプルな内容であっても同様です。
登場する要素が3つになったら、もう図解を考えたほうがいいのです。
図解で表現するのは、関係性です。これによって、言葉で表現しても伝わりづらいことも構造的に理解しやすくなります。
【図解の手順】 ・要素を書き出してみる ・それらの関係性を考えてみる (原因と結果、包含関係、ビフォアアフターなど) ・とにかく並べてみる(丸、四角、三角などで囲む) ・矢印をつけてみる
イラストを描くとグンと伝わる
メモやノートに記入する図解は、シンプルでわかりやすいもので十分です。
アタマを整理するための図解は会議でも活用できます。会議の流れや問題点を図解すれば、いつ、何を発言するべきかがわかります。
私は会議の席でホワイトボードにイラストを描いて説明することがあります。イラストを描いて見せると、それほどうまくなくても「雰囲気が伝わる」と言ってもらえます。
展示会ブースのような立体ものは、描くのもむずかしいですが、ヘタでも描けば理解を促進できます。
あるていどバランスのとれたイラストを描くためには、日頃から練習をすることが必要です。私は、自分のアタマを整理するためにも、よくノートにイラストを描いています。
苦手意識のある人も、まず最初は目の前の商品や写真を見て描くのではなく、「イラスト」を見て描いてみてください。
立体物や写真をイラストにするのにはコツが必要です。しかし、いったんイラスト化されたものをマネするのはカンタンなのです。
最初はマネからはじめ、コツをつかんでいき、やがては写真や立体物を見て描いたり、想像しながら描いたりできるようになってください。
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