この記事は2022年8月23日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「セリア【2782・スタンダード】高収益体質作り上げ「全品100円」を堅持 22年3月期は売上過去最高の2080億8400万円」を一部編集し、転載したものです。
100円ショップ業界では、大創産業、セリア、キャンドゥ、ワッツの大手4社による寡占状態が長年続いてきた。2022年3月からは急速な原材料高騰、円安など、小売業にとっては厳しい局面に突入。業界動向に注目が集まっている。
そのような状況をチャンスと捉えているのが、業界2位のセリアだ。POSシステムで収集したデータの活用によって実現した高収益体制が、現情勢における最大の強みとなっている。
▼河合 映治社長
データを活用した店づくりで
営業利益率は前期10.1%
昨今の原材料高騰やインフレなどで、長らく低価格を堅持してきた100円ショップ業界でも高価格帯商品の導入が増えている。大手4社中3社が値上げ商品拡充に力を入れる一方、業界2位のセリアは唯一「全商品100円」を堅持。100円に拘り続けることが可能な理由の1つは、その利益率の高さにある。
同社の2022年3月期営業利益率は10.1%。業界1位の大創産業は非公開だが、3位キャンドゥの1.3%、4位ワッツの3.3%と比較すると突出した数字になっている。
背景にあるのが、2004年に導入したPOSシステムだ。収集したデータをもとに、AIが自動的に店舗ごとの売れ筋商品・発注数を算出する。システム構築を主導した河合映治社長は、もともと銀行の出身。前職でも貸出債権業務のシステム化を行っており、統計学に精通している。
「100円ショップは在庫リスクが1番怖いですが、システムによりその問題をカバーできます。売れない商品が棚に留まっていると、魅力のない店になってしまう。商品1点1点の動きを見ることで、他にない品揃えに変わります。店舗ごとの売れ筋が絶え間なく納入され、売れても継続的に魅力的な商品が陳列される仕組みができました」(河合映治社長)
同社では、商品開発や生産数の決定にもデータを活用。製品力を高めた他、在庫を抱えない適切な数の生産が可能になり、同社とメーカー双方の利益率を高めた。
「業界は、どこかが淘汰されるまで戦いが続く局面に入っている。当社はシステムによって他社に利益面で差をつけることができました。昨今の情勢で値上げ要請は当然来ており、今期は粗利が1%低下、販管費が1%増えるため、利益率2%低下を見込んでいます。しかし最低限の目標は営業利益率5%としており、まだ3%分の余裕がある。今後も全品100円で勝負していきます」(同氏)
成長のキーポイントは
商品・店舗政策と業務効率化
2022年3月期の売上高は前期比3.7%増で過去最高を更新。今期も増収を見込む。今後の成長戦略としては、商品政策、店舗政策、業務効率化の3本柱を掲げている。
1つめの施策「商品政策」では、低原価商品の開発、顧客層拡大を狙いとした商品開発、定番商品のブラッシュアップを行う。もともと女性層に支持されてきた同社だが、顧客層拡大のためにアウトドアグッズやアニメグッズなどを投入したことで男性ファンも獲得。全体の客数が伸び、女性8:男性2だった顧客比率が7:3になった。
「データにない部分でのチャレンジが顧客層拡大への打開策となっています。まだ来店されていないお客様に向けては、まず商品部の提案で新ジャンルの商品を20~30種類出し、発売後に分析しています。分析力はあるので、そこから売れ筋を強化し新規ファンを獲得していきます」(同氏)
商品開発の拠点は、大阪に続いて2021年東京にも設置したサテライトオフィスだ。市場調査やメーカーとの交渉もしやすくなったという。
インショップ型中心に出店
年間150店舗増加目指す
2つめの施策「店舗政策」では、現在の約1,900店を年150店ずつ拡大し、中期的には3,000店舗を目指す。同社のシェアは本社を置く東海では40%だが、東京・大阪は20%、中国・四国は10%。これまでもイオンやベイシアなど複数店舗を持つ企業と提携し、店舗を増やしてきた。
同社が得意とするインショップでの出店は、家賃固定のロードサイド型と違い、売上に家賃が連動する。そのため相場に合った安定した収益が見込め、リスクヘッジにも繋がるという。
「均一価格の維持は、インショップ型出店においてシナジーを生みやすい。高価格帯商品を扱えばニトリや無印良品、3COINSなども競合になりますが、当社は100円だけに商圏を絞っています。そうすることで前述の店舗と共存でき、インショップ型で出店しやすくなります」(同氏)
3つめの施策「業務効率化」においては、店舗だけではなく社内システムの再構築も進めている。また現在370店以上で導入されているセルフレジは全店導入が目標。都心では40~50%の顧客が使用しており、買い物時間の短縮に繋がった。省人化に加えて顧客満足度向上にもなる施策だ。
「ビジネスは、オペレーション力とブランディング力に集約されると考えます。『早く、誰でもできる仕組み』を本社でも構築していきたいです」(同氏)
▼アウトドアグッズ拡充で男性顧客を獲得
▼商業施設内に出店する「インショップ型」で安定的な成長図る
▼セルフレジは全店導入を目指す
2022年3月期 連結業績
売上高 | 2,080億8,400万円 | 前期比 3.7%増 |
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営業利益 | 209億1,800万円 | 同 1.7%減 |
経常利益 | 213億4,700万円 | 同 0.0%減 |
当期純利益 | 143億100万円 | 同 2.9%減 |
2023年3月期 連結業績予想
売上高 | 2,168億円 | 前期比 4.2%増 |
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営業利益 | 175億円 | 同 16.3%減 |
経常利益 | 175億円 | 同 18.0%減 |
当期純利益 | 119億円 | 同 16.8%減 |
*株主手帳9月号発売日時点