この記事は2022年8月31日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「やまみ【2820・プライム】圧倒的な量産化実現する豆腐・厚揚げメーカー 新工場稼働で関東圏に参入、大幅シェア拡大へ」を一部編集し、転載したものです。


やまみは、広島に本社を構える豆腐・厚揚げの量産メーカーだ。西日本を中心に高いシェアを持つが、2019年に富士山麓工場を新設し、首都圏でも攻勢をかける。業界でトップクラスの生産能力を強みに、安価でありながら、品質、原料にこだわった生産体制を築く。

2021年6月期の売上高は前期比7.7%増の127億9,800万円、営業利益は同102.0%増の7億3,200万円と内食需要も取り込み、成長を続ける。

▼山名 徹社長

株主手帳
(画像=株主手帳)

量産化で固定費下げる
生産ラインは業界最速級

豆腐や厚揚げの量産メーカーのやまみは、本社のある中国・四国地方を始め、関西を地盤に「圧倒的な量産化」を強みに、売上を伸ばしてきた。同業界の平均生産能力は、売上高が100億円以上の上位5~6社でも1時間5,000~7,000丁。

一方、同社では最も速いラインで1時間に1万2,000~1万3,500丁と業界でも最速レベルを実現している。豆腐製造の機械メーカーと共同で、より性能の高い機械づくりに挑戦しているという。

「量産化を進めることで、人件費など固定費はどんどん下がります。他社さんが148円、158円で売る商品が、当社では118円、特売で98円。これが、やまみの適正価格です。でも他業界、例えば飲料業界では1時間に4万~5万本を製造するのは当たり前。それに比べたら、当社も含め、この業界はまだまだですよ」(山名徹社長)

同社では大手小売店向けのPB(プライベートブランド)を含め、30~40種類の豆腐・厚揚げ製品を製造する。機械化により人間が非接触で製造できることで、充填豆腐などでは最長2週間の賞味期限を実現。また異物混入のリスクを減らせるなどの利点もある。

中食・外食のニーズが高まる中、注力するのが麻婆豆腐用やゴーヤチャンプルーなど、それぞれの用途に適したカット済み豆腐などの「高付加価値商品」だ。約6割は元々あるラインを作り変えて対応でき、総菜工場やコンビニのベンダー工場の手間を省くため、利益率も高いという。

また固定費を抑えた分、良い材料に投資し「禅豆腐 北海道とよまさり」シリーズ(全9品)も新発売した。「大豆の横綱」と言われ甘味があって美味しいが、豆腐にすると固まりづらい「とよまさり」という品種の豆を使用し、試行錯誤の末ラインで大量製造できるまでにこぎつけた。

「他社がやりにくいこと、取引先が困っていることを進んでやることにこそ、価値がある。また他社にはない製品なので外されることもない」と山名社長は話す。

原料高・円安など向かい風も
苦境は逆にチャンス

同社は1975年、野菜のパック詰めを祖業として設立した。1978年、野菜を積載するチルド品輸送のトラックの荷台を埋めるのに豆腐が向いていることに目を付け、事業譲渡により豆腐製造販売に参入した。

その後、1999年に工場が洪水で被災。これを機に2000年、豆腐・厚揚げ製品の量産化へと方向転換し、業績を伸ばした。本社工場、滋賀県の関西工場に続き、2019年からは静岡県の富士山麓工場を稼働。首都圏へも出荷し、シェアを拡大している。

豆腐の単価は機械化・量産化により下がり続けている。最近の豆腐・厚揚げの市場規模は大きな変動はなく、家庭用・業務用を合わせ全体で5,000億~6,000億円。一方で2人以上の世帯あたりの購入量は84.41丁と増加傾向にあるが、年間購入金額は8,336円(*1)とここ10年で横ばいが続く。

豆腐・厚揚げの製造業を営む事業者数は、2000年に1万5,600あったが、2018年には6,143(*2)と半分以下に減少し、特に小規模事業者の淘汰が進む。スーパーなど小売店の大型化・チェーン化にともない、メーカーは大量納入やコストダウンを迫られている。

「さらに燃料高、大豆価格など原料高、円安と業界は今、トリプルパンチを受けているが、当社にとっては逆にチャンスだと思っています。首都圏では競合が多いが、他社より価格面で強みがあるので、スーパーさんから以前より商談で声をかけていただく。今後、業界内で大手メーカーの寡占化が進んだ時に、上位数社に入ることを目指しています」(同氏)

2022年から利益拡大期へ
ファンを増やす商品を

やまみの2021年6月期の売上高は前期比7.7%増の127億9,800万円、営業利益は同102.0%増の7億3,200万円。売上高では富士山麓工場の稼働に加え、大量生産が可能な同社のシェアが拡大したこと、またコロナ禍で高まる内食需要を取り込み、増収となった。利益面では、利益率の高い「高付加価値商品」や国産大豆「とよまさり」を使用した「差別化商品」に注力した販売戦略で、収益性が改善。営業利益は前期比倍増となった。

2022年5月に発表された2022年6月期第3四半期累計では、首都圏での好調が影響し、売上高は104億2,500万円、営業利益は前年同期比39.2%増の7億8,200万円だった。大型投資一巡による減価償却費のピークアウトを受け、2022年6月期は売上高131億6,000万円を予定している。

「利益は3分の1ずつ株主、従業員、投資に還元したい」(同氏)と語り、長く働いてもらいたいとの思いから平均給与の増加率はコロナ禍前後で29.3%(*3)と上場企業でもトップクラスである。

また省エネ・CO2削減などSDGsへの取り組みにも積極的だ。3工場すべてに太陽光設備を敷設した他、本社工場では隣接する広島ガス備後工場の約マイナス160℃のLNGから熱交換した冷熱を豆腐製造過程の冷凍設備に利用している。

「社員にも自社に誇りを持ってほしい。そのためには利益も出さないと。そして今は豆腐は価格で選ぶ商品かもしれませんが、将来は『やまみの商品だから買いたい』といってもらえるような、ファンを増やす商品づくりをしたいです」(同氏)

▼業界最高レベルの生産能力を誇る豆腐製造ライン

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▼新発売の「禅豆腐 北海道とよまさり」シリーズ

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▼富士山麓工場の稼働で関東圏でもシェア拡大を図る

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*1:総務省「家計調査」、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数」をもとに作成(2021年)
*2:厚生労働省「衛生行政報告例」による事業所数(年度末)
*3:日本経済新聞調べ。直近の売上高が300億円以下の上場企業190社が対象


2021年6月期 業績

売上高127億9,800万円前期比 7.7%増
営業利益7億3,200万円同 102.0%増
経常利益7億4,600万円同 82.1%増
当期純利益5億1,100万円同 37.2%減

2022年6月期 業績予想

売上高131億6,000万円前期比 2.8%増
営業利益10億円同 36.5%増
経常利益10億4,000万円同 39.3%増
当期純利益6億7,000万円同 31.1%増

*株主手帳9月号発売日時点

山名 徹社長
Profile◉山名 徹(やまな・とおる)社長
1984年生まれ、広島県出身。2007年やまみ入社。2012年、やまみホールディングス(現YMコーポレーション)代表取締役就任。やまみ常務取締役関西工場長、取締役副社長兼経営企画室長などを経て、2021年9月に父・山名清氏(現会長)に代わり、代表取締役社長に就任(現任)。