この記事は2022年3月25日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「新田ゼラチン[4977・東1]国内最大手のゼラチン・コラーゲンメーカー 食品、健康、医療分野に集中して市場拡大」を一部編集し、転載したものです。


新田ゼラチンは、ゼラチン製造販売で国内シェア6割を占める最大手ゼラチンメーカーだ。創業から100年以上ゼラチンの原料素材であるコラーゲンの研究開発を続け、時代のニーズにあった製品を提供している。2021年度から始まった新中期経営計画では、コラーゲン素材事業に注力し基盤強化及び高収益化を図る。

▽尾形浩一社長

新田ゼラチン【4977・東1】国内最大手のゼラチン・コラーゲンメーカー 食品、健康、医療分野に集中して市場拡大
(画像=株主手帳)

工業用ゼラチンから食品・医療用途へ

新田ゼラチンは、1918年に工業用ゼラチンである「にかわ」の製造販売で創業。もともとは創業者の新田長次郎氏が製革業を始め、ベルトの製造過程で産出される副産物である牛皮の一部を再利用するため、にかわ事業をスタートしたのが始まりだ。

製菓材料として多く使われているゼラチンだが、その用途は時代とともに変化し、同社の主要製品も大きな変遷を遂げている。創業当時はマッチや接着剤用の工業用ゼラチンが主だったが、マッチの衰退後はカメラの写真フィルム用などに用途開発がなされ、フィルム市場の拡大とともに成長した。

しかし、1990年代後半にはデジタルカメラが台頭し写真需要が衰退。2000年以降フィルム用途に代わる主力となったのが、コンビニ総菜に使われる食用ゼラチンや美容サプリメンント用のコラーゲンペプチドだ。

現在は、食品用途の「フードソリューション」、健康食品用・美容用コラーゲンペプチドやカプセル用ゼラチンの「ヘルスサポート」、医療用ゼラチン・コラーゲンの「バイオメディカル」の3つのコア領域がある。2021年3月期の連結売上高は305.5億円、営業利益は13.5億円。事業区分別売上高はフードソリューションが約38%、ヘルスサポートとバイオメディカルが合わせて約46%、写真用ゼラチンなどのスペシャリティーズが16%を占める。

「当社は牛骨や豚の皮、魚の鱗など天然由来の副産物から有用なタンパク質を提供するビジネスを創業以来続けています。最近はゼラチンを分解した機能性素材のコラーゲンペプチドや、ゼラチンでも従来の食品や薬用カプセル用以外に医療用など、用途が広がっています」(尾形浩一社長)

世界シェア5位のグローバルカンパニー

同社はゼラチン販売で、国内シェア約6割と圧倒的なシェアを占める。国内ゼラチンメーカーの中では、唯一国内に工場を持ち、原料処理から製造までの一貫生産により常に安定した品質を提供できることが強みだ。

また海外でも欧州大手メーカーに次いで世界5位のシェアを誇る。1975年に原料調達のためインドへ進出したのを皮切りに、海外事業を拡大。現在はインド、アメリカなど5カ国に製造・販売拠点を構える。直近のグループ全体の海外売上高比率は約50%。また海外従業員数約8割を占めるグローバル企業だ。

「ヨーロッパのメーカーは大量生産するためその分価格も安いですが、ゼラチンの種類は限られており選択肢が少ない。当社には、ゼラチンだけで約200種類あります。フィルムやコンビニ総菜用ゼラチンの研究開発で培った技術で、柔らかさ、色味など非常に細かいお客様の要望にも対応できます」(同氏)

世界のゼラチンの年間生産量は約40万トンと、20年程前から倍増している。今後も途上国の食生活の欧米化に従い需要拡大が見込まれ、市場成長率は約2%と堅調な増加が予想される。

また近年は、日本発の機能性素材であるコラーゲンペプチドの人気が北米、アジアで高まっている。グローバルでの市場規模は現在約6万トンだが、成長率約8%と今後の市場拡大が期待される。この市場拡大に対応して、同社は増産も検討しているという。

「東南アジアでは、美容のイメージのある魚のペプチドが非常に人気です。今後まだまだグローバルで拡大しますので、機能性研究データを持つ我々の強みが活かせます。世界では、このような利益率が高い付加価値製品で勝負していきたい」(同氏)

5つの注力市場で高収益化と基盤強化

2021年~2024年3月期の新中期経営計画は、将来の飛躍に向けた基盤強化の期間と位置付け、最終年度目標として連結売上高335億円、営業利益20億円を掲げる。

前中期経営計画では、利益率の低いケーシング事業や接着剤事業から撤退した。新中計ではコラーゲン素材事業に集中し、高収益化と基盤強化を図る。特に「業務用市場」「新しい食ニーズ」「海外でのコラーゲンペプチド市場」「直販事業」「バイオメディカル市場」の5つの注力市場で、2024年3月期の連結売上高の10%以上、連結営業利益の20%以上を目指す。

今後事業の柱となり得るのが「バイオメディカル」だ。現在は特許取得の医療用コラーゲン・ゼラチンの「beMatrix」を販売するほか、人工骨、人工皮膚に医療用コラーゲンが活用されている。2022年秋には、新研究棟「みらい館」が竣工予定。バイオメディカルの生産拠点の拡充と研究開発機能を集約し、競争力を高める。

「今までは研究段階でしたが、再生医療が注目されてきたこともあり実用化検討が進んでいます。商品化には時間がかかるが、売上規模としては今の約10倍に拡大したい」(同氏)

また健康志向で高まる新しい食ニーズに対応していくため、コラーゲンのたんぱく質の側面を活かす研究開発を進めている。

「特にフレイルといいますが、歩けなくなるなどの手前で予防してあげることが非常に大事です。それにはたんぱく質強化やコラーゲンペプチドの機能性が寄与できます」(同氏) 

2022年4月の東証再編に際し、新市場区分ではプライム市場を選択申請している。

「新田ゼラチンという会社を知らない一般の方にも、我々の良さを知っていただけるよう展開していきたいです」(同氏)

▽グミやコンビニデザートに食用ゼラチンが使われている

新田ゼラチン【4977・東1】国内最大手のゼラチン・コラーゲンメーカー 食品、健康、医療分野に集中して市場拡大
(画像=株主手帳)
新田ゼラチン【4977・東1】国内最大手のゼラチン・コラーゲンメーカー 食品、健康、医療分野に集中して市場拡大
(画像=株主手帳)

▽コラーゲン補給食品の「コラゲネイド」

新田ゼラチン【4977・東1】国内最大手のゼラチン・コラーゲンメーカー 食品、健康、医療分野に集中して市場拡大
(画像=株主手帳)

▽再生医療などで活用される「beMatrixコラーゲン」

新田ゼラチン【4977・東1】国内最大手のゼラチン・コラーゲンメーカー 食品、健康、医療分野に集中して市場拡大
(画像=株主手帳)

2021年3月期 連結業績

売上高305億5,000万円前期比 11.6%減
営業利益13億5,600万円同 19.8%減
経常利益13億6,400万円同 24.1%減
当期純利益7億4,200万円-

2022年3月期 連結業績予想

売上高295億円前期比 3.4%減
営業利益13億5,000万円同 0.5%減
経常利益13億5,000万円同 1.0%減
当期純利益9億円同 21.3%増

*株主手帳4月号発売日時点

尾形浩一
尾形 浩一(おがた こういち)
1957年生まれ。1981年東北大学理学部卒、カネボウ食品 (現クラシエフーズ)入社。2005年12月新田ゼラチン入社。2008年営業本部開発部長、2010年執行役員開発部長、2012年取締役、2013年取締役営業本部長、2015年代表取締役社長(現任)に就任。