特集「不動産業界トップランナーに聞く アフターコロナ時代の経営戦略」では、各社のトップにインタビューを実施。新型コロナウイルス感染症が収束した後の社会における不動産業界の展望や課題、この先の戦略について、各社の取り組みを紹介する。

今回は、企業のマーケティング支援やメディア事業を手掛ける、株式会社WonderSpace代表取締役社長の山本尚宏氏にお話を伺った。

(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

株式会社WonderSpace
山本尚宏
株式会社WonderSpace代表取締役社長
1982年 神奈川県生まれ。2006年東京大学理学部数学科中退。法律事務所オーセンス(現・Authense法律事務所)、オーセンスグループ株式会社(現・弁護士ドットコム株式会社)を経て、2012年に当時参議院議員で弁護士でもある丸山和也氏の秘書(国会議員秘書)を務める。2014年に不動産投資に特化したメディア「不動産投資の教科書」を運営する株式会社不動産投資の教科書を設立。2021年、 株式会社WonderSpaceが株式会社不動産投資の教科書を吸収合併。著書に『99%失敗しない、不動産投資のはじめ方』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
株式会社WonderSpace
2013年3月、株式会社猿として創業。株式会社2021年にWonderSpaceに社名変更。Webマーケティング事業を中心に結婚・資産形成・エンタメなど人々の人生に関わるメディアを運営。本社は東京都港区。運営メディアには、日本最大級のドラマ口コミメディア「TVログ」・働く女性応援メディア「PRIME」・不動産投資の情報メディア「不動産投資の教科書」がある。

目次

  1. マーケティングの力で日本の課題を解決するために起業
  2. 情報提供に加えて「セカンド・オピニオン」で投資家をサポート
  3. 不動産会社・投資家の双方がリテラシーを高めることが大切
  4. 不動産投資を情報面から支える存在になる

マーケティングの力で日本の課題を解決するために起業

――WonderSpaceの事業内容を教えてください。

WonderSpace代表取締役社長・山本尚宏氏(以下、社名・氏名略):WonderSpaceは2013年に創業し、今年で10期目を迎えました。現在は東京都港区にオフィスを構え、インターンを含めると76名のスタッフがいます。

私自身は法律事務所勤務を経て、当時参議院議員で弁護士の丸山和也先生の秘書を5年ほど務めさせていただきましたが、「マーケティングの力で日本をより良くしたい」との思いから起業しました。現在は自社で4つのメディアを運営しつつ、クライアント様のマーケティング支援も行っています。社会に貢献しながら我々も成長させていただき、少子化や人生100年時代といった、日本が抱える課題の解決につなげたいと考えております。秘書として国政に携わった経験から、特に少子化は重大な問題と考えており、その解決に貢献したいという思いがあります。

――どのようなメディアを運営していますか。

国内外のドラマ情報を網羅した「TVログ」や働く女性のためのサイト「PRIME」、本当に良い不動産会社だけを紹介する「不動産投資の教科書」などがあります。

「不動産投資の教科書」は、「不動産投資で失敗する人を一人でも減らすため、良質な不動産会社だけをお勧めしたい、業界を健全化したい」との思いから開設したメディアです。近年は人生100年時代や老後2,000万円問題、インフレなど、長寿に対するお金の不安が顕在化するようになりました。それを解消する手段として不動産投資は有効だと思いますが、投資家を取り巻く環境はクリアとはいえません。良い収益物件を紹介する会社もあれば、自社の売上や利益を優先する会社もあり、スルガ銀行やTATERUによる不正融資の事件も世間を騒がせました。

不動産投資は有効な資産運用方法ですが、物件は非常に高額なので、人生で最も高い買い物になる人がほとんどでしょう。そのため、自社の利益を優先しようとする会社から買うとダメージが大きく、最悪の場合自己破産につながるおそれもあります。そのような不動産投資で失敗する人をなくすためのメディアが「不動産投資の教科書」であり、不動産投資に関する情報提供のほか、良い不動産会社のご案内、不動産投資のセカンド・オピニオンサービスを提供しています。

情報提供に加えて「セカンド・オピニオン」で投資家をサポート

――良い不動産会社とそうでない不動産会社の違いは何でしょうか。

良い会社はお客様のことを考えており、そうでない会社は考えていません。これが主観的な違いです。顧客に寄り添った物件紹介はもちろんのこと、他社が提案した物件であってもアドバイスしたり、時には「買っても大丈夫です」と勧めたりする営業マンがいる会社は信頼できると思います。

▽質問に答える山本氏

株式会社wonderspace
(画像=株式会社WonderSpace)

客観的な違いは、金融機関からの評価が高いことや、提携金融機関が多いことです。アライアンス先が多いということは、それだけ信用されているということです。「不動産投資の教科書」でも、その観点から掲載する不動産会社を厳選しています。

一方的に物件を勧める不動産会社や、金融機関との関係性が弱い不動産会社は、避けたほうがよいかもしれません。

――セカンド・オピニオンはどういったサービスでしょうか。

私と編集部に在籍する不動産投資経験者が相談者と面談し、疑問や質問にお答えするというものです。相談者は20~30代の会社員・公務員の方が多いのですが、中には50代の主婦や個人年金に不安を抱えるシニアの方もいます。「お勧めの物件・不動産会社を教えてほしい」という要望に応えたり、厳選した不動産会社のトップセールスマンをご案内したりします。検討中の物件について中立・公正な立場でアドバイスすることもあれば、複数物件の買い進め方や融資の受け方、金融機関の見極め方をレクチャーすることもあります。いわば、不動産投資の駆け込み寺のようなサービスです。4年前から始めましたが、コロナ禍以降はオンラインミーティングが定着したので、北は北海道から南は九州まで幅広いエリアからお問い合わせが急増し、毎月60人程度、多い月は100人を超えて対応することもありました。

不動産会社・投資家の双方がリテラシーを高めることが大切

――不動産投資が有効な資産運用方法として社会に根付くためには、不動産会社や投資家はどうなっていく必要があるでしょうか。

良い不動産会社は、投資家のビジョンを実現できる物件を勧めます。そのような姿勢でお客様に対応する会社が増えることを願っていますし、「不動産投資の教科書」の活動を通じて増やしたいと考えています。

しかし、企業の都合で物件を販売する会社があることも事実で、「襟を正せ」といってもすぐには聞かないでしょう。一方で、今は不動産投資をしっかり学んでから始める方が増えており、セカンド・オピニオンの場でも「そこまで勉強をしているのですね」と編集部が驚くことがあります。不動産会社と投資家がお互いに情報を開示し合い、両者が不動産投資に関するリテラシーを高めていけば、業界の健全化につながるはずです。

不動産会社は情報開示や相手に寄り添った提案を心がけ、投資家は情報を鵜呑みにせず、正しい知識と判断力を身につけるべきです。例えば年収1,500万~2,000万円の方が一棟アパートなどを購入する場合は、利回りだけで判断してはいけません。利回りは高いに越したことはありませんが、ローンは30~35年かけて返済するものなので、その間入居者が住み続けられる物件なのかどうかを判断することが大切です。いくら利回りが高くても、入居者がいなければ「絵に描いた餅」です。投資家は良い物件を見極める目を持たなければなりませんし、我々もそのお手伝いをしたいと考えています。

不動産投資を情報面から支える存在になる

――今後の目標をお聞かせください。

「マーケティングの力で日本を変える」という目的のもと、クライアント様をサポートしながら自社も成長し、「不動産投資の教科書」を含めた各メディアのユーザーを増やすのが最大の目標です。多くの方に適切な情報を届け、官民が一体になって日本の課題解決に資する仕事に関わっていきたいと思います。会社の売上・利益を伸ばした後は、チャレンジ精神のある若手を採用して新規事業を興し、彼らに事業責任者や子会社を任せるといったことにもトライする予定です。さまざまな領域で、社会に貢献する事業を増やしたいと考えています。

「不動産投資の教科書」については、セカンド・オピニオンのサービスの認知をさらに拡大したいと考えています。区分・一棟を問わず、市場には買ってよい物件もあれば、そうでない物件もありますが、その線引きは容易でありません。一見成功に見えても10年後、20年後にリスクが顕在化するケースもあります。そのようなタイミングで後悔しないように、経験・知識が豊富な第三者のアドバイスを利用していただきたいですね。我々は公式LINEの運用も得意なので、ゆくゆくは機械学習に基づいたセカンド・オピニオンも提供したいと思います。

――不動産投資は『ZUU online』の読者にとっても興味深いジャンルです。最後にメッセージをお願いします。

不動産投資は素晴らしい資産運用方法であり、人生100年時代におけるお金の不安を解消する可能性を秘めたソリューションですが、興味のある方はまずは学びを重ねることをおすすめします。良い不動産会社とそうではない不動産会社を見極める目も必要です。セカンド・オピニオンを有効活用し、不安なく投資を進めていただきたいと思います。不動産投資の教科書編集部がお役に立てることがあれば、ぜひお問い合わせください。