不動産投資では、金融機関による融資を活用することで、少ない自己資金で不動産を所有できる。しかし、不動産投資ローンの金利相場は一般的な住宅ローンより高く、審査基準で重視される属性も異なるため、融資を受ける際には注意が必要だ。ここでは、不動産投資ローンの基礎的な知識と金利相場、融資が受けられる属性や審査基準、完済までの返済シミュレーションについて網羅的に解説する。

目次

  1. そもそも不動産投資ローンとは?
  2. 不動産投資ローン借入先ごとの特徴や金利相場
  3. 不動産投資ローンを利用するメリットとデメリット
  4. 不動産投資ローンの審査で見られる基準
  5. 不動産投資ローン借入の流れ
  6. 不動産投資ローンに関わるQ&A
  7. まとめ:不動産投資ローンを活用し投資家としての一歩を踏み出そう

そもそも不動産投資ローンとは?

不動産投資ローンとは。住宅ローンとの違い・金利相場と審査基準を解説
(画像=Daenin/stock.adobe.com)

不動産投資ローンには、住宅ローンとは異なる特徴がある。「どちらもローンであるなら、大した違いはないだろう」と考えるのは危険だ。しっかり事前知識を身につけ、業者と対等に交渉するようにしたい。

不動産投資ローンと住宅ローンとの違い

不動産投資ローンとは、投資用不動産の購入を目的として組むローンのことだ。一方、住宅ローンは、自宅不動産を購入するときのみ利用できる。

不動産投資ローンと住宅ローンの最も大きな違いは、返済原資が異なることだ。住宅ローンの返済原資は、一般的に給与収入だが、不動産投資ローンの返済原資は、物件を貸し出すことによる家賃収入だ。不動産投資には事業性があるため、物件の収益性が重要な審査項目となる。

また、返済原資の違いと関連して、金利や融資額にも違いがある。不動産投資ローンは、住宅ローンと比べて、金利が高めで融資額が大きい。不動産投資は事業として失敗する可能性があるため、銀行は貸し倒れリスクを恐れ、高めの金利を設定するのだ。

一方で、物件の収益性によっては、融資額が住宅ローンよりはるかに大きくなることもある。たとえば、住宅ローンの融資額は年収の5~7倍が一般的だが、不動産投資ローンでは年収の10倍を超えるローンを組むことも可能だ。

そのほかの違いとして、住宅ローンは個人名義で組むのに対し、不動産投資ローンは個人・法人どちらの名義でも組めるという点が挙げられる。不動産投資が軌道に乗ったら、不動産管理法人を設立し、法人名義で不動産投資ローンを組んで投資するのも1つの選択肢だ。

不動産投資に利用できるローンの種類

続いては、不動産投資で利用できるローンの種類を紹介する。一般的に不動産投資のためのローンとして利用されるのはアパートローンだが、そのほかにプロパーローンという選択肢もある。審査基準は厳しくなるものの、プロパーローンのほうがお得にローンを組めるケースもある。それぞれのローンの種類や特徴を知り、最適な選択をすることが大切だ。

不動産投資に利用できるローン1:アパートローン

アパートローンとは、金融機関が投資家のために用意した不動産投資ローンのパッケージ商品だ。アパートやマンション、テナントなどの賃貸物件を、第三者に貸し出すことを目的に購入・建築・リフォームする場合に組むことができる。

アパートローンという名称だが、アパートやマンションに限らず、戸建て賃貸物件や事務所・店舗用テナントなど、幅広い賃貸物件が対象となる。金融機関によって「不動産投資ローン」「マンションローン」など呼び方が異なることもある。

アパートローンの特徴は、パッケージ化されている点と、保証会社を利用する点だ。

パッケージ化されているため、金利や融資額などはある程度定められている。その分、審査にかかる時間も比較的短いという特徴がある(住宅ローンよりは長くかかることが多い)。

また、保証会社を利用することから、保証人は必要とされないケースが多い。一方、保証会社が定める基準を満たさないと、問答無用で審査に落ちてしまうことになるため、柔軟性には乏しいといえる。

不動産投資に利用できるローン2:プロパーローン

プロパーローン(事業ローン)とは、事業用の資金を借りるときに組むローンのことだ。ここでいう事業には、不動産投資事業も含まれる。開業資金や事業の運転資金など幅広い資金使途で借りられるが、不動産投資においては、賃貸物件を購入・建築・リフォームするための不動産投資ローンの一種といえる。

プロパーローンの大きな特徴は、オーダーメイド型である点と、保証会社を通さない点だ。

プロパーローンでは、金融機関が独自の基準で融資するかどうかを決定する。金利や融資額も一定ではなく、審査結果を踏まえて決まるのが一般的だ。そのため、アパートローンと比べて審査に時間がかかる傾向にある。

プロパーローンでは保証会社を通さないため、金融機関がリスクを負って融資することになる。そのため、金利はアパートローンより高く設定される可能性があり、また保証人や連帯保証人が必要となる。

一方で、保証会社の定める基準を満たさなくても、意志や熱意、信頼性、能力をアピールできれば、審査に通る可能性はある。また、保証会社に支払う保証料が必要なく、初期コストを抑えられるのもメリットだ。

不動産投資に利用できるローン2:住宅ローン(条件付き)

住宅と賃貸物件が一緒になった賃貸併用住宅なら、条件を満たせば住宅ローンを利用できる可能性がある。賃貸併用住宅とは、自分や家族の居住用スペースと、他人に貸し出す賃貸用スペースが一体となった物件のことだ。たとえば、1階を自宅として使い、2階を貸し出すといった形が考えられる。

住宅ローンは、不動産投資ローンと比べて金利が低く、返済期間も長期間に設定できるのがメリットだ。

ただし、住宅ローンを利用するには、床面積の50%以上が自宅用であるなど、いくつかの要件を満たさなければならない。また、入居者とトラブルになると逃げ場がないなどのデメリットもあるため、注意が必要だ。

不動産投資ローン借入先ごとの特徴や金利相場

不動産投資ローンを組むにあたり、借入先で悩む方は多いだろう。住宅ローン金利は1%を切ることもあるが、不動産投資ローンの金利相場は1~4%程度で、住宅ローンより高い傾向にある。ここからは、借入先ごとの不動産投資ローンの金利相場を紹介していく。

メガバンク(都市銀行)の特徴と金利相場

メガバンクとは、一般的に三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行を指す。りそな銀行をメガバンクに含めることもある。全国に支店を持つことから、自宅から離れた遠隔地の物件に投資する場合などもローンを組みやすいのがメリットだ。

メガバンクの金利相場は、1~2%といわれている。金利の低さがメリットだが、不動産投資ローンにはあまり力を入れていない傾向がある。また、審査基準が厳しく、資産状況などから相手にされないケースもある。

三菱UFJ銀行には、アパートローンなどのパッケージ商品は用意されていない。三井住友銀行とみずほ銀行には、パッケージ型のアパートローンが用意されている。りそな銀行には、「オーダーメイド型」「資産管理会社向け」「自宅と賃貸アパート一体」の3種類のアパート・マンションローンが用意されている。

地方銀行の特徴と金利相場

地方銀行とは、各都道府県に本店を置き、地方を中心に営業する銀行のことだ。不動産投資ローンに積極的かどうかは銀行によって大きく異なる。一般的に、地方銀行で不動産投資ローンを組めるのは、投資家自身がその都道府県に居住しており、物件も都道府県内にあるケースに限られる。

地方銀行の金利相場は1.5~4.5%程度だ。金利はメガバンクよりは高く、信用金庫・信用組合よりは低い傾向がある。また、審査基準はメガバンクよりは柔軟で、信用金庫・信用組合よりは厳しいといわれている。

たとえば、次のような地方銀行で、パッケージ型の不動産投資ローンが提供されている。

▽地方銀行の不動産投資ローン(一例)

地方銀行商品名融資額(最大)返済期間(最長)
横浜銀行アパートローン3億35年
京都銀行京銀マンションローン1億30年
福岡銀行ふくぎんアパートローン30年
横浜銀行京都銀行福岡銀行の関連ページをもとに2022年6月調べ、筆者作成

信用金庫・信用組合の特徴と金利相場

信用金庫や信用組合は、地域の利益を優先する協同組織の金融機関で、個人や中小企業を主な取引先とすることに特徴がある。地域密着型で、管轄地域が決まっており、融資エリアも狭まる傾向がある。

信用金庫・信用組合の金利相場は2~3%だ。ただし、あすか信用組合のように金利年1.8%からの不動産投資ローンを提供しているところもあり、信用金庫・信用組合によって金利水準は異なる。

信用金庫・信用組合は、地方銀行より審査基準がゆるやかで借りやすい分、金利は高い傾向がある。

日本政策金融公庫の特徴と金利相場

日本政策金融公庫は、政府系の銀行で、女性や若年者、高齢者も利用しやすいという特徴がある。融資エリアは広く、基本的に日本全国どこでも可能である。

日本政策金融公庫の金利相場は1~2%だ。ただし、融資額に上限があり、融資期間も短いことから、大型の不動産投資には向かないことに注意したい。また、民間の金融機関と比べて審査基準が厳しく、融資のハードルは高い。とはいえ女性・若年者・高齢者であれば、選択肢の1つとして検討に値するだろう。

ノンバンクの特徴と金利相場

ノンバンクとは、預金業務を行わず、主に貸付を行う金融機関のことだ。代表的なノンバンクには、オリックス銀行、セゾンファンデックス、三井住友トラスト・ローン&ファイナンスなどがある。

ノンバンクの金利相場は3~4%だ。

ノンバンクは、金利は高い傾向があるものの、審査基準はゆるやかで借りやすいことが特徴だ。銀行で審査に落ちてしまっても、ノンバンクではローンを組める可能性がある。一方で、借りやすいからこそ、収益性に疑問の残る物件でも融資がおりてしまう可能性には注意しておきたい。

代表的なノンバンクの商品名と金利情報をいくつかピックアップしたので、参考にしてほしい。

▽ノンバンクの不動産投資ローン(一例)

ノンバンク商品名金利情報
オリックス銀行不動産投資ローン変動金利型:2.675~3.675%
3年固定特約型:2.3~3.3%
5年固定特約型:2.5~3.5%
セゾンファンデックスアパートローン変動金利:3.75~4.55%
三井住友トラスト・ローン&ファイナンスアパートローン変動金利型(団信なし):2.9~4.4%
変動金利型(団信あり):3.3~4.8%
オリックス銀行セゾンファンデックス三井住友トラスト・ローン&ファイナンスの関連ページをもとに2022年6月調べ、筆者作成

投資用物件を購入した不動産会社の提携金融機関

ここまで借入先ごとに特徴や金利相場を解説してきたが、実際のところ不動産投資では、不動産会社の提携金融機関で不動産投資ローンを組むことが一般的だ。

住宅ローンと比べて、金融機関は不動産投資ローンに積極的ではないケースも多い。そういった場所に飛び込みで相談に行くより、不動産会社の提携金融機関のほうが丁寧に対応してくれることが多く、安心感にもつながる。

不動産投資ローンを利用するメリットとデメリット

続いては、不動産投資ローンのメリットとデメリットについて解説していく。

不動産投資ローンを組むメリット

消費や投機目的のローンと、投資目的のローンは根本的に性格が異なる。「借入=悪」と決めつける人は、ショッピングやギャンブルなど、消費や投機を目的としたローンをイメージしていることがほとんどだ。

多くの投資家や富裕層と呼ばれる人々は、投資効率を上げる優れた手法として、ローンを前向きにとらえる傾向がある。

不動産投資でも、ローンを組むことは、少ない元手で効率よく資産形成する効果的な手法といえる。投資では、レバレッジを意識することが大切だ。レバレッジとは「てこの原理」のことで、ここでは他人資本(外部資本)を活用して、自己資本のリターンを最大化することを指す。

不動産投資においても、ローンを組むことで、自己資金だけでは得られないリターンを得ることにつながる。投資で得た家賃収入からローンを返済できるのも合理的な仕組みだ。ローンによって手元のキャッシュに余裕が生まれれば、投資のチャンスを逃す機会損失のリスクも減らせる。

また、不動産投資ローンを組むことで、団体信用生命保険(団信)に加入できるというメリットもある。団信に加入すれば、返済者に万一のことがあった場合、保険金でローンの残債が支払われることになる。そのため、大切な家族にローン完済済みの収益物件を遺せることになる。継続的に入る家賃収入は、遺族の生活を支える糧となるだろう。

不動産投資ローンのデメリット

続いては、不動産投資ローンのデメリットとして、利息と抵当権について解説していく。

不動産投資ローンの金利は、住宅ローンより高い傾向があり、当然ながら利息の負担も大きくなる。投資効率が上がるというメリットと表裏一体ではあるが、利息がかかることについてはあらためて注意しておきたい。

ただし先に述べたとおり、利息がかかるからと不動産投資ローンを活用しないのは、投資効率の観点からはマイナスになる。大切なのは、トータルで負担する利息額をあらかじめ把握し、投資によって得られる収益とはかりにかけ、合理的な投資判断をすることだ。

相続でまとまった資金が手元に入るなどしてキャッシュに余裕が生まれたときは、手数料などを考慮した上で、繰り上げ返済を検討するのも1つだ。

不動産投資ローンを組むと、物件に抵当権が設定される。抵当権とは、返済が滞った場合に、金融機関が物件を差し押さえたり、競売にかけたりする権利のことだ。

抵当権は、お金を貸す側である金融機関のリスクを低減する制度であり、問題なく返済できればデメリットになることはないが、投資家としては抵当権のことを把握しておく必要がある。

不動産投資ローンの審査で見られる基準

不動産投資ローンの審査基準は、住宅ローンとは異なると説明した。続いては、不動産投資ローンの審査で重視されるポイントを、具体的に解説していく。

不動産投資ローンの審査基準1:申込者本人の属性と信用

・本人の年収

不動産投資ローンの返済原資は家賃収入だが、投資家本人の年収も審査では当然加味される。一般的に、不動産投資ローンを組むなら、年収500万円以上が基準となる。年収700万円以上あれば、さらに借入先の選択肢が広がる。ただし、メガバンクを検討するなら、年収1,000万円が最低ラインだと考えておいたほうがいい。

とはいえ、年収がすべてというわけではない。年収500万未満でも資産状況や物件の収益性が考慮されてローンを組めることもある。また、年収1,000万円以上でも、信用情報によっては審査に落ちてしまうケースもある。

また年収が高くても、残業代やボーナスの割合が多いなどの理由で「収入に安定性がない」と判断されると、審査で不利に働くケースもある。

・勤務先

住宅ローンと同じく、勤務先や勤続年数も審査対象となる。上場企業の正社員や公務員で、勤続年数が長いほど、審査では有利に働く。医師や弁護士など社会的地位の高い業種も審査では有利となる。

一方、中小企業に勤めている場合や、派遣社員である場合、勤続年数が3年に満たない場合などは、年収要件を満たしていても審査に落ちてしまうリスクがある。また、個人事業主やフリーランスは収入が不安定とみなされることから、サラリーマンや公務員と比べると不利になる傾向がある。

・本人の信用情報

不動産投資ローンの審査では、信用情報も重要となる。信用情報とは、クレジットカードや割賦販売、ローン契約に関する取引事実を記録した個人情報のことだ。JICCやCICなどの信用情報機関が保管しており、主にローン審査などで金融機関が参照するが、自分で申請して閲覧することもできる。

カードローンなど多くのローンを利用している場合、資金繰りに困っていると判断され、審査では不利に働く可能性が高い。また、クレジットカードの支払い遅延などのトラブルにも注意が必要だ。

・ほかの所有物件の経営状況

すでに不動産投資をしている場合、ほかの所有物件の経営状況から、経営者としての資質を審査される。赤字経営に陥っている物件や返済が滞っている物件、入居率が極端に低い物件があると、審査に落ちてしまうリスクがある。

不動産投資ローンの審査基準2:購入予定物件の状況

・購入予定物件の資産価値

不動産投資ローンでは、物件の資産価値や収益性も重要な審査項目となる。

都心の駅近物件など、資産価値が落ちにくいと判断される物件のほうが審査では有利だ。物件の構造も資産価値に影響する。木造よりも、重量鉄骨造など耐用年数の長い物件のほうが、資産価値が落ちにくいと判断される。また、中古より新築のほうが担保価値は高くなる。さらに、災害リスクが少ない地域に物件があるかどうかも重要だ。

・購入予定物件の収益性

不動産投資ローンの返済原資は家賃収入なので、物件の収益性も重視されるポイントだ。需要の高い人気エリアにある物件や、利用者の多いターミナル駅に近い物件などは、入居者が途切れにくいと考えられることから、審査では有利に働く可能性が高い。

また、周辺の開発状況や、学校や病院といった施設の有無、人口の増減率などを考慮して収益性を判断するケースもある。

不動産投資ローンの審査基準3:ローン審査を通過するための心得

これから不動産を購入し、不動産投資ローンの融資を受ける場合に備え、ローン審査を通過するために気をつけておくべき点を紹介する。

・資産価値や収益性が高い物件を選ぶ

不動産投資ローンでは、物件の資産価値や収益性が審査の結果を大きく左右する。また、資産価値や収益性は、審査に通ったあとの不動産経営の成否にもつながる。物件周辺の開発状況や賃貸需要の動向、人口動態などを入念に調査し、物件の資産価値や収益性をさまざまな角度から判断することが重要だ。

・本人の属性を安定させ、健康にも留意する

頻繁に転職しない、昇進・昇給で年収を安定させるなど、自分自身の属性にこだわることも大切だ。クレジットカードの支払い遅延など、信用情報に傷がつくような金銭トラブルにも注意したい。

また先述のとおり、不動産投資ローンを組むときは、団信に加入することが一般的だ。持病があると団信に加入できなくなる場合があるため、健康状態にも留意しておきたい。

・頭金となる自己資金を貯めておく

年収や属性に不安があっても、自己資金が多ければ、不動産投資ローンを組める可能性は高まる。不動産投資を始めるなら、頭金となる自己資金を貯めておくことも大切だ。

ただし、自己資金を貯めることにこだわりすぎると、投資のチャンスを逃してしまうことにもなりかねない。計画的に貯蓄しつつ、並行して情報収集を行い、チャンスがあれば投資に踏み切る勇気も大切だ。

・不動産会社紹介の金融機関を利用する

不動産投資ローンを組むときは、自分で借入先を探すより、不動産会社の提携金融機関を利用することも検討したい。不動産会社に属性を伝えておけば、属性に合う投資用物件を中心に紹介してもらうこともできる。そうすれば、審査にも通りやすくなり、物件検討から投資までスムーズに進めるだろう。

不動産投資ローン借入の流れ

審査であわてないために、不動産投資ローンを組むまでの流れを知っておくことも大切だ。続いては、不動産投資ローンを組むまでの具体的な流れを3つのステップに分けて解説する。

事前審査(仮審査)

まず、借入を希望する金融機関に事前審査を申し込む。事前審査では、自分の属性や物件の詳細がわかる資料を提出する。本審査の前に実施される簡易的な審査とはいえ、融資の可否が決まる重要なステップだ。

不動産投資の一般的な流れとして、この事前審査に通過した時点で不動産売買契約を結び、手付金を支払うことが多い。ローンが受けられなかった場合は契約を解除する特約を付けることが一般的だ。特約の有無を含め、契約内容は十分に確認する必要がある。

本審査~融資決定

事前審査を通過すると、本審査が実施される。事前審査に通っても、本審査に落ちると融資を受けられないため注意が必要だ。

本審査では、金融機関との面談も行われることが多い。面談では、不動産投資の目的や、物件情報の把握状況、返済計画などについて質問される。信頼性や経営者としての適性が見られる場でもあるため、しっかり準備して臨むようにしたい。

審査機関は金融機関によって異なるが、早くても一週間、長ければ数ヵ月かかることもある。1ヵ月程度の余裕を見て、早めに審査に申し込むことが大切だ。

この本審査に通過すれば、融資が決定する。

契約~借入

融資が決定したら、金融機関との間で金銭消費貸借契約を結ぶ。ここでも、契約内容を十分に確認する必要がある。融資がおりたら、残金の支払いによって決済を完了し、その後登記手続きを行う。司法書士に依頼する場合は司法書士報酬が発生するため、あらかじめ必要な金額を用意しておくようにしたい。

不動産投資ローンに関わるQ&A

Q. 不動産投資ローンで頭金は必要なのか?

A. 頭金なしで不動産投資ローンを組むことも可能だが、一般的には物件価格の2~3割の頭金を用意することが望ましい。頭金を用意することで、ローン審査に通りやすくなるというメリットもある。

また、不動産投資では、手付金のほかに登記費用などの諸経費が発生する。さらに、空室リスクなど、投資のリスクも存在する。そのため、不動産投資を始める際には、ローンを避けるための貯金に時間をかけすぎるべきではないが、一定の資金を貯めておくこともまた大切だ。

Q. 不動産投資で住宅ローンは使えるのか?

A. 投資用と居住用では目的が異なることから、住宅ローンを不動産投資に使うことはできない。住宅ローンは、自宅不動産を購入するときのみ利用できる。

ただし、住宅と賃貸物件が一体となった賃貸併用住宅なら、床面積の50%以上が自宅用であるなどの要件を満たせば、住宅ローンを利用できる可能性がある。

Q. 住宅ローンで投資用不動産を購入するとペナルティがあるのか?

A. 投資用不動産の購入に住宅ローンを利用することはできない。万一発覚した場合は契約違反となり、調査が入ったり一括返済を求められたりするリスクがある。投資目的の場合は、金融機関にきちんとその旨を伝え、不動産投資ローンを活用することが大切だ。

Q. 不動産投資ローンと住宅ローンはどちらを先に組むべき?

A. 先に不動産投資ローンを組むことで、給与収入に加えて不動産投資の利益も年収に加味され、住宅ローンの審査が有利になる可能性がある。また、不動産投資ローンのほうがより厳しい審査基準を設けているため、住宅ローンよりも先に不動産投資ローンを組むことで、不動産投資の選択肢が狭まらないというメリットもある。

まとめ:不動産投資ローンを活用し投資家としての一歩を踏み出そう

不動産投資は、手元資金が少なくても、収益を生み出す物件を継続的に保有できる優れた投資手法だ。給与に家賃収入が加わることで、生活が安定し、貯蓄スピードも上がるだろう。

不動産投資ローンの活用は、レバレッジをきかせて効率よく資産を築くことにつながる。住宅ローンとの違いを理解した上で、積極的に活用するようにしたい。

不動産投資に興味があるなら、情報を収集するとともに、投資チャンスを逃さず一歩を踏み出すことが大切だ。