2年ぶりに「賃貸」が「売買」を逆転! 住宅価格の高騰でファミリーの動きが変化?

春の賃貸繁忙期を終えた4~6月期は、例年なら取引も落ち着くことが多いですが、今、賃貸住宅を取り巻く環境には変化が表れつつあります。そこで、仲介現場のリアルな声も交えながら、足元の業況や今後の見通しについて見ていきましょう。

目次

  1. 行動制限の緩和に伴い、賃貸の業況は全般的に回復傾向。特に首都圏で順調。
  2. 賃貸好調の背景に、外国人需要の回復や購入検討者の流入など
  3. 首都圏では、賃貸の業況DIがコロナ禍前の20年Ⅰ期以来2年ぶりに売買を上回る
  4. 賃貸の業況が売買を逆転した「3つの要因」
  5. 賃貸の業況は来期見通しも上向き。回復の流れを維持できるかに注目

行動制限の緩和に伴い、賃貸の業況は全般的に回復傾向。特に首都圏で順調。

今回も、不動産情報サービスのアットホームが公表している「地場の不動産仲介業における景況感調査」から最新2022年4~6月期の賃貸の業況を説明していきます。

景況感調査とは、地域に根差して不動産業に携わるアットホーム加盟店を対象に、居住用不動産市場の景気動向について四半期ごとにアンケートを実施しているものです。都道府県知事免許を持ち、5年を超えて仲介業に携わる店舗の経営層にインターネットで調査し、前年並みを50 とする「業況DI」で数値化しています。

DI=50を境に、それよりも上なら「良い」、下なら「悪い」を意味しており、不動産仲介現場のリアルな営業実感が反映される調査結果と言えるでしょう。

▽首都圏・近畿圏の業況判断指数(業況DI(前年同期比)の推移)

首都圏における2022年4~6月期の賃貸の業況判断指数(DI)は46.3(前期比+2.5ポイント)と3期連続で上昇し、前年同期比も+4.1ポイントとプラスを継続しました。

また、近畿圏では41.6(同+2.4ポイント)と2期ぶりに上昇し、前年同月比も+1.5ポイントとプラスに転じました。ワクチン接種が進み行動制限が緩和されたことから、特に首都圏では2021年Ⅲ期以降、順調に回復しています。

全国的に見ても、調査対象全14エリア中10エリアで前期比プラスとなっており、賃貸の業況は回復傾向にあると言えます。

賃貸好調の背景に、外国人需要の回復や購入検討者の流入など

4~6月期、賃貸の業況が好調だったエリアの不動産店からは、「コロナによる入国制限が緩和され外国人の仲介数が戻った(福岡県)」「留学生の入居希望が増えた(千葉県)」といった外国人需要の回復や「行動制限の緩和で部屋探しが活発になり、1~3月の繁忙期に決まらなかった物件が成約した(東京23区)」など、コロナ対策の制限緩和が業況の回復につながっているとの声が多く聞かれました。

また、売買物件の価格高騰に伴ってカップルやファミリーが賃貸に流入する動きもあり、「マンション販売価格の上昇に伴い、賃貸のファミリータイプが堅調になった(東京23区)」「購入検討者が賃貸に流れてきた(愛知県)」といった声も目立ちました。

首都圏では、賃貸の業況DIがコロナ禍前の20年Ⅰ期以来2年ぶりに売買を上回る

次に首都圏について、ここ数年の業況の動きをトピックスとともに振り返ってみましょう(下図)。

2020年Ⅱ期、初の緊急事態宣言の発出に伴い、業況は調査開始以来最低値を記録しましたが、いち早く回復したのは売買でした。

コロナ禍で在宅時間が長くなったため、より広い間取りや快適な設備を求めて賃貸から持ち家にシフトする層が増え、その需要は郊外部に広がりました。こうして2021年Ⅳ期までは、売買が賃貸を上回る状況が続いてきました。

しかし、2021年Ⅰ期頃から売買の業況が横ばい傾向で推移する間に、賃貸の業況は2021年Ⅳ期から3期連続で上昇し、2022年Ⅱ期(4~6月)はついに売買を逆転しました。

▽首都圏の賃貸・売買業況DIの推移

賃貸の業況が売買を逆転した「3つの要因」

4~6月期、賃貸の業況が売買を逆転した背景には主に3つの要因が考えられます。

まず1つめの要因は、転入人口の回復です。この時期、東京23区では転出超過から転入超過に転じ、それに伴い首都圏全体でも転入数が回復しています。

この転入超過を年齢別にみると、けん引したのは20~29才で、単身が多く賃貸がほとんどを占めると考えられます。23区の不動産店からも「これまで他県でリモートワークをしていた人が出社に戻ったので、都内で住まいを探しに来た」などの接客事例が聞かれました。

2つめの要因は、売買価格の高騰です。東京23区と埼玉県を例に、アットホームに公開された50~70㎡の貸マンションの家賃と中古売マンション価格の指数(2019年=100)を見ると、今年6月の中古売マンションの価格指数は120を超え、この3年間で20%超上昇していることがわかります。対して貸マンションの家賃指数は110に至っておらず、相対的に賃貸の割安感が鮮明です。

▽首都圏(東京23区・埼玉県)の貸マンション家賃・中古売マンション価格指数の推移

3つめの要因として、不動産購入に対する先行き不安が挙げられます。資材不足による供給減・価格高騰が続く中、インフレ・金利上昇予測といった不安も加わり、不動産店からは「生活すべてにおいて物価が上昇し、住宅購入に慎重になる消費者が多い」などマインドの低下を指摘する声が多数ありました。

賃貸の業況は来期見通しも上向き。回復の流れを維持できるかに注目

さて、冒頭で紹介した景況感調査では、来期(2022年7~9月)の賃貸の業況は引き続き上昇が見込まれています。見通し上昇の理由には、「ウィズコロナで企業も個人も動きを制限しなくなるから」「これまで我慢していた人が動き出すから」など、経済活動再開への期待が多く挙げられていました。業況回復の流れをしっかりと維持できるのか、私も注目しています。(次回は22年12月掲載予定)

磐前淳子(いわさきじゅんこ)
磐前淳子(いわさきじゅんこ)
アットホームラボ株式会社 データマーケティング部 部長。不動産情報サービスのアットホームに入社後、営業職・企画職などに従事。2019年5月、アットホームのAI開発・データ分析部門より独立発足したアットホームラボの設立に伴い、現職。不動産市場動向や業況の分析などを担当し、各種レポートの公表のほか、講演・執筆、メディア対応などを行う。最近の主な講演・執筆テーマに「コロナ禍がもたらした不動産市況の変化」「人気設備と入居者ニーズ」「どうなる2022年の不動産市場」など。